『いったい何者なんだ・・・』
ドアに両手を掛け車に乗り込もうとしたシヌの呟きは、しっかりミナムの耳に届いていた。
後部シートへ座りながら走り去る黒塗りの車を見送り、前を向こうとしたシヌは、顔を近づけていたミナムに割り方驚いていた。
『知りたい!?』
『な・・・』
『俺、知りたいっ!』
最初に乗り込んでいたジェルミが、運転手に挨拶をしながら大きな声をあげた。
『後ろは、大丈夫ですかね』
流暢な韓国語で、話しかけてきた運転手に3人共に驚いて話は中断され、シヌがテギョンを確認してお願いしますと伝えていた。
『ね、ね、おじいちゃん、韓国語上手だね』
『英語でも構わないんですよ。イギリスにも住んでいたことがありますからね』
ゆっくりとアクセルが踏みこまれた運転席へジェルミが顔を寄せた。
『そうなのー、イタリアの人じゃないんだー』
『ええ、生まれはイギリスですよ。あなたも、そうでしょう』
『はは、そう!俺、イギリス生まれなんだよねー』
朗らかに英語で話を始めたジェルミに忍び笑いを零しながら会話に入るつもりの無いミナムとシヌは、顔を見合わせていた。
『チェ・ソヨンに興味あり!?』
『興味というのか・・・ミニョを助けてくれた人だって事は知ってるけど、シスター崩れなんだろう・・・お前もそう言っていたじゃないか・・・小さい頃からの知り合いだろう』
『まぁね』
『おかしなことがあるなと思っただけだ・・・今回の仕事もそうだけど、前の・・・ジャケットの撮影の時からな』
考え込むシヌの横でミナムは、前を向いてバッグからお菓子を取り出した。
『ヒョンを応援したいみたいだけどね』
『何!?』
水とお菓子を取り出したミナムは、袋を開けシヌの前にも差し出したが、首を振られた。
『ヒョンさぁ、いつの間に国際ライセンスなんて獲ったの!?』
ミナムの時間を問わない悪食に呆れ顔のシヌは、自然手が額に伸びた。
『事務所から言われて獲ったんだよ・・・撮影に必要だから獲って来いって』
『1か月も滞在するなんて生活するのと変わんないもんね』
『どういう意味だよ』
『ヒョンが運転出来ると俺達とっても助かるかも!』
『そうそう、テギョンヒョンに頼みづらいこともヒョンになら出来るかも』
こちらの会話に戻って来たジェルミもミナムの菓子に手を伸ばした。
『都合よく使われてはやらないから安心してろ』
ジェルミにも呆れ顔をしたシヌは、後ろに顔を向けていたのだった。
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