夕方、合流したスタッフ共々ガーデンパーティ形式の夕食を終えた一行は、明日からの打ち合わせを始めた者、ヴィラに戻って行った者、散策に出掛ける者とそれぞれの夜を過ごし始めていた。
A.N.Jellは、その生活振りも撮影対象となる為、割り当てられた部屋はソヨンの母屋で、外観は、普通の家であっても一部屋一部屋に誂えられた調度品は、誰もの目を引き、その豪華さにそれぞれの部屋を探索していた。
『すっげーなー・・・俺達のイメージに合わせて部屋ん中作ってあるんだなぁ』
『わざわざ入れたのかこれ!?』
2台が向かい合わせで並ぶグランドピアノを撫でていたシヌは、その蓋を開け音を出していた。
『五つ星ホテル並みだよー、それもスイートルームって感じ・・・』
一目で高級品と判るソファや机にベッドと箪笥のデザインにしてもウィンドウショッピング程度ではあまり見かけない物が置かれていた。
『写真のコンセプトってどうなってんの!?』
『未来だろう!?』
『未知との遭遇じゃねーの!?』
『新しい出発だ』
適当な物言いを笑いあっていた3人の前にスーツケースを引いたテギョンがやって来た。
『お前達、俺の部屋で何をしているんだ!?』
『あー、ヒョンの部屋が一番落ち着くというかさぁ・・・』
ミナムが、ベッドに近づくテギョンを避けながら返事をした。
『俺の部屋、宇宙船みたいなんだ』
『俺のは、おもちゃ箱』
『俺は、ここと似てるけど、もう少しごちゃごちゃしてるな・・・男っぽいというか』
感想を口にした3人は、テギョンの部屋が一番シンプルだと頷きあった。
『ヒョンのとこだけ何も無いっていうかさぁ、ミニョの部屋も超お姫様ルームだったぜ』
『そうそう、シルクの天蓋付きベッドだもんなぁ』
『すっごく広くてふっかふかベッドだったよね』
『ああ、3人寝ても広かったな』
『バスルームも全部についてる・・・けど、ここは格別だよな』
テギョンに与えられた部屋は、広めのバルコニーもあり、バスルームは、そこへ直結する作りになっていて景色を楽しみながら解放的にもなれそうで広さも他の部屋とは異なっていた。
『ミニョが事前調査したからだろう・・・こんな仕事出来ないと思っていたけど結構役に立ったな』
荷物の整理を始めたテギョンは、不本意だったと不満げに呟いていた。
それに同意したミナムも同調したシヌと笑いあい、ジェルミだけが否定をした。
『なーに言ってんだよ!ミニョは頑張り屋さんなのー!出来ない訳ないじゃん!家のことだってミニョがいてくれるから俺達大助かりだろう!掃除もしなくてよくなったしー』
『前だって業者がやってたじゃん』
『洗濯物くらい自分で取りに行けよ』
『・・・・・・お前等、ミニョにそんなことまでさせてるのか!?』
一際低い声を発したテギョンは、苦笑いの3人を一回り見回して舌打ちをしていた。
いつも忙しいと宿舎の中を走り回っているミニョの行動に3人が関わっている事は知っていたが細かいことまで把握出来ている訳が無い。
今は特定の仕事をしていないミニョにとって頼られる人がいる事は、時間を潰すにも有難いだろうと思っていたテギョンは、大仰に溜息を吐いてスーツケースの蓋を閉めた。
『ったく・・・お前等ミニョを完全に家政婦扱いだなっ』
『いいんだっ頭使うより体使えって言うだろう』
『そうだよ何か悩んでるみたいだし・・・考えるより体使ってた方が良いよ』
ジェルミの一言に奇妙な間が生まれた。
座っているジェルミはそれに気付かず話を続けていたが、ミナムと俯いたテギョンがそれぞれ顔を逸らし、ふたりを見ていたシヌが首を傾げながらドアの方を見るとミニョが顔を覗かせていたのだった。