『酷いことをするのは我なれば・・・』
『おっ、前・・・』
『お別れ・・・です・・・』
口付けは、深く、しっとりと美酒を味わうが如く重ねられた。
零れる水滴もまた一入(ひとしお)に包まれた頬に両手の上にテギョンの手も重なった瞬間、離れたミニョの目が驚きに開かれた。
『あっ!?あれっ!?』
テギョンを跨ぐ姿に驚いた顔に朱が走り、浮いた腰に絡んだ脚によって動きを封じられた。
『チッ!大人しくしてろっ』
『っちょ、あっ・・・は・・・んっ』
白い歯がミニョの膨らみの先端を捉え、甘く噛みつかれたそこがツンと主張を現した。
『やぁっ・・・だっ・・・』
『今更だ・・・お前が俺を誘ったんだから』
『ぁっん・・・主様・・・が・・・』
膨らみに添えた手を尖った舌が這いずり、ミニョの指先を開かせた。
『お前・・・どっちだ!?』
『どっ・・・ちとは!?』
『ミニョなのか・・・ミナムの中にいるミニョか・・・』
『ぅん・・・ぁ私は、私・・・です・・・』
『俺は・・・時折解らなくなる・・・あいつの意識が俺を支配して・・・俺がお前を求めるのはただ、操られているだけなのかと思・・・うことがある』
それは、とても悲しい告白で、動きを止めたミニョのテギョンを覗き込んだ顔が感化を止めた。
『俺の意志とは関係なくお前を求め、お前もまた・・・』
パサリと胸に落ちた髪に指先を伸ばしたテギョンは、ミニョの握られる拳を見つけ、掻き揚げたテギョンの前に涙を溜め、顔を歪めたミニョがいた。
『なっ・・・』
『辞めてっ!!!!』
息を呑もうとしたテギョンの顔が歪んでいた。
握った拳の下でテギョンの肌を痛めるミニョがいる。
『っミ・・・・・・』
『辞っめてっ・・・くっださっ・・・い・・・そ、れは、そ・・・れだけは・・・』
何。
何を。
何がミニョの気を逸らしたのか。
震えた声が、テギョンを黙らせていた。
『そっ・・・れは・・・言ってはなりません・・・』
泣きじゃくり震える声で訴えるミニョがテギョンに覆い被さり、その胸を濡らしている。
『そ・・・れを・・・あなたが言ってはなら・・・ない』
何を。
ミナムという片割れの中にいるコ・ミニョという女の存在。
テギョンと同様にミニョの中に在るべきそれは、今までの数度の出会いの中で欠片も存在を見とめられなかった事か。
泣きじゃくるミニョの頬に手を添えたテギョンは、その顔を上向かせ、腫らした目を覗き込んだ。
『ミ、ニョ・・・泣・・・くな・・・お前の涙は、別れを思い出す・・・』
『テギョ・・・』
『振り向けなかったんだ・・・お前を抱きしめてしまいそうで・・・お前を・・・・・・子供を殺してしまいそうで・・・』
『テ・・・』
噛みつく様にテギョンの唇がミニョのそれを覆った。
深く深く蹂躙するそれは、息を全て奪い、頬を撫でていた手が、背中を腰を滑り脚を引き寄せる。
『ぇあぇ・・・っっひっぃやぁああああああああああああ』
躊躇いも無くミニョの中へ突き進んだテギョンは、痛みに震えた体を支え、より一層傷めた表情でミニョを抱きしめていたのだった。
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