『じゃぁねミニョ!俺、今日はジョリーと取材なんだ!美味しいもの貰ってくるからねー』
『いってらっしゃーい』
『チッ!取材!?犬と一緒にか!?貰えるものなんてどうせドッグフードだぞ・・・』
食事を終えたジェルミを玄関へ送り、いそいそ戻って来たミニョをテギョンの一声が迎え、流し目を返した頬がぷっくり膨れていった。
グチャグチャとボウルの中身をかき混ぜていたテギョンは、スプーンの先にちょっと乗せた一口をもの凄い時間を掛けて食べていて、いい加減目の刺激で満腹中枢は十分満足しきったのではないかと思えるほどだ。
『ヒョンニム・・・まだ食べるのですかぁ!?』
『あ!?何だその言いかたっ!?お前は俺に飯を食って欲しくないのか!?』
『そうではなくて・・・なんか嫌々食べてるから・・・』
『嫌々食ってるのはいつもの事だろう!俺の食い方に文句でもあるのか!?』
『いやっだからっそうではなく・・・』
テギョンがボウルに差し込んだスプーンと食器が派手な音を立てた。
ふんぞり返って椅子に座っていたテギョンの眉間が寄って前屈みになると同時にミニョも曲がった唇でダイニングを覗きながら腕を伸ばした。
『空っぽ・・・ですよ・・・』
口に運んだ最後の一掬いも既に無いスプーンを見たテギョンは、ボウルをひっくり返して覗き見る
ミニョに鋭い視線を向けた。
『もっと召し上がりますかぁ』
『チッ!お前の飯が美味すぎるのが悪いっ!』
『はぇいっ!?』
鍋の蓋をとったミニョは、自分のスープをボウルによそってからテギョンの器に指を引っ掛けたが、それを倒して慌て掴んだ体を固まらせた。
『お前の飯が美味すぎるからここがいつも五月蠅いんだよっ!俺はなぁもっと静かに飯を食いたいんだっ』
『は、ぁ・・・・・・・・・』
理不尽な言葉を続けるテギョンにそれとこれと何の関係があるのだときょとんとするミニョは、その言葉をぶつぶつ反復した。
やがてその顔は、徐々に締まりが無くなってニヘラヘラと緩み、キッと目に力を入れたテギョンの前でスッと背筋が伸びた。
『もっと食べられるんですねっ!ヒョンニムっ!褒めて頂いてありがとうございますっ!』
何がどう受け止められたのか、つまりミニョが戻ってきてからテギョンの朝食は、少し早めのブランチで、それは、A.N.Jellとして皆と仕事に行くにも関わらず故意に時間をずらしてる結果だ。
敬礼をしたミニョは上機嫌で自分の食事を並べ終えると喜々としてテギョンの横に座った。
『ふっふっふっー、ふたりきりが良いならそう仰ってくださればぁ』
『あ!?おっ前、飲み過ぎで頭、沸いてるだろう!?誰もそんなことを言ってないっ!』
『今、言ったじゃないですかぁ!』
『今じゃないっ!昨日だっ昨日っ!ふたりきりになりたかったのは昨夜なんだっ!』
『えっ!?』
テギョンの器におかずを所狭しと盛り付けていたミニョの箸が止まった。
再びグチャグチャかき混ぜ始めたテギョンは、空港での出来事を蒸し返し、近寄ってきたミニョの体が徐々に背を向けて離れていくのを横目に眺めていたのだった。
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