朝食を終えて部屋に戻っていったシヌと入れ替わりにジェルミが、リビングにやって来た頃、テギョンも階下へ降りて来ていた。
しかし、その顔は、不機嫌極まりなく、ミニョと並ぶジェルミを見るやいなや睨みつけて怯えさせた。
『なっ、なんだよーヒョン・・・俺、何もしてないよー』
ミニョに隠れる様にジュースを持って固まっている。
『チッ!お前じゃないっ!ミナムだっ!』
『ミナムオッパなら、さっき、上・・・』
部屋に戻ったと伝えようとするミニョの前で勢いよくダイニングの椅子を引いたテギョンは、ドカンと座って腕を組みミニョをも睨みつけた。
『大体なぁ!あいつの教育は成ってないんだっ!嘘つき妖精を恋人にしてる奴なんかっ信用できるかっ!』
唐突な辻褄の合わない話に何があったのかと顔を見合わせるミニョとジェルミの前でテギョンは、箸を持ち上げていた。
飯を出せと言わんばかりに並んだ皿の上で迷い箸を見せつける。
『えっ・・・ヒョ・・・ンニム・・・食べるのですか!?』
それは、当然と言えば当然の疑問。
ミニョだけでなくジェルミもきょとんとテギョンを見つめた。
『あん!?俺は、飯を食っちゃぁイケないのか!?』
『あっ!?いっ、いえ・・・そういう訳ではっ・・・そうではなくて・・・』
『ヒョン・・・ミニョに言われなきゃいっつも朝食食べないじゃん・・・嫌々食べてる癖に・・・』
『ふんっ、こいつが無理やり食わせ様とするから俺も食わないと気が済まなくなってきただけだっ』
ミニョがこの宿舎に戻ってきてから、朝のダイニングは、必要以上に賑やかだ。
コ・ミナムが、ミニョと入れ替わり、正式にA.N.Jellのメンバーになった頃、冷蔵庫に何も無い事を嘆いては、24時間営業のスーパーに出かけて、大量に食材を買ってきて朝食を作り、ひとりで食べていた。
男の料理だからと豪快に大量に作っては、夕飯や夜食もそれで済ませ、面倒くさいからと外食や出来合いの物を買って帰って来ていたシヌやジェルミも相伴に預かり、テギョンは、スキャンダルの影響と顔を合わせる気まずさからか相変わらず外食ばかりだったが、如何せんミナムという男は、料理はするが洗い物が適当で、モデルルームの様に整理整頓され飾られていただけのダイニングは、いつの間にか生活感一杯になってゆき、潔癖症のテギョンは、冷蔵庫に近づく度に背筋を震わせ、シヌやジェルミも洗い物が溜まっている光景を何度も目にしては、そのうち料理をしているミナムを手伝いながら洗い物をするのが習慣になっていた。
戻ってきたミニョに毎日食べたいものをリクエストするミナム。
ふたりで買い物に出かけ、専らミニョが作るご飯を食べ、シヌやジェルミも習慣から朝食をここで摂る事が多い。
始めの一週間こそ、朝は食べないと言い張っていたテギョンもミニョが用意する食事に文句を言いながらリビングに降りて来る回数は増えていた。
『チッ!コ・ミナムめっ!女を引っ張りこむ暇があるなら歌の練習でもしろっ!』
スープボウルを受け取ったテギョンにやっぱりミナムとの間で何かがあったのだと顔を見合わせていたミニョとジェルミだった。
にほんブログ村