悶々とした朝は、まだ暗く、ベッドの中で、ひたすら天井とにらめっこをして過ごしたテギョンは、シャワー後の濡れ髪を拭きながらかれこれ数分ドアの前で佇んでいた。
向かいの部屋のドアが開いた事は、知っている。
ミナムの日課だろうと出て行った時間に時計を眺め、なら、ミニョは、まだ部屋にいると思い、起こしに行こうと考えて、気が付いていた。
『理由が無い』
早朝に起こす理由を一向に思いつかないでいた。
一緒に眠るつもりでいたテギョンに自分の部屋に正確にはミナムの部屋だが戻ると言ったミニョ。
それは、年頃の男女の行動としては、とても正しいもので、下心なんてコレぽっちも持ってないとどんなにテギョンが言い張ったところで、ミニョはともかくミナムの同意は得られない。
ミナムに嫌われる事は、そのままミニョとの交際に影を落し兼ねず、なにより、A.N.Jellのメンバーであって、今となっては、テギョンと人気を二分しているミナムは、公私を綺麗に分けて出て行くと言い出し兼ねない。
どうでも良い打算的考えは次々浮かんでくるのに肝心なミニョとの今が一向に思い浮かばないテギョンは、頭を抱えて振り返った。
『チッ!何をやってるんだ俺は・・・』
理由など話があるで済む事だと思う。
しかし、その話の内容も特に思い浮かばないのだ。
今日で世界が終わる訳でもあるまいにまるでその瞬間に立たされているかと思える程に深刻な顔をしていた。
『ああああー、もう!何なんだっ!俺はっ!』
自暴自棄(ヤケクソ)な叫びが、開かれた窓の外まで響き、丁度、部屋の窓を開けたジェルミが、叫び返す声が届いた。
『なっ、なっんだよー、ヒョーン!何かあったのー』
近隣との距離がある建屋だが、近所迷惑と言われかねない大声に流石に怯んだテギョンは、慌てて窓際に駆け寄り、ジェルミに謝っていたのだった。
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