ミナムが、北へ出立するとミニョが聞かされたのは、テギョンとの婚儀を終えてから半年余り後の事で、ジェルミも同行して国事の一切を取り仕切るとジェヒョンに告げられていた。
『なんで!?オッパ!?』
『国威は、ふたりも要らぬのだ』
ジェヒョンの言葉にきょとんとしているのは、ミニョひとりでテギョンもミナムもジェルミに連なり居並んだ数人の臣下さえ一切が黙していた。
『国、威とは!?』
そのままだろうと思ってもミニョの口から疑問は飛び出した。
『ふ、たり!?』
横に並ぶテギョンを見上げたミニョは、さぁーっと青褪め強張る頬を抑えた。
『なっ、何故ですかっ!むしろ、私っ!』
『ファン・テギョンに国は無い。それは、お前も知っておろう』
『でっ、ですからっ王位を継ぐならオッパであって、テギョンssiには全く関わりの無い事ですっ!』
『王位を継ぐに変わりは無い』
『そっ、どっ、どういうことですっ』
その場にて、何も知らないのはミニョひとりだった。
婚儀をしてからこちらミニョのひとり遊びは、制限をされて来た。
そして、それは、同時に国の内外の情勢を知る機会を失っている。
『なっ、に・・・』
何が起こっている。
安穏とした日々の中ただ過ごしていても突発的な出来事は起こり得る。
しかし、それは、あまりにミニョの中に虚をもたらしていた。
『カン・シヌが、戴冠したことは知っておろう』
頷く首に力は無い。
ただ、重力に落とされたそれは、項垂れ続けている。
『あれの今の勢いは、周辺の国々にとって脅威なのだ』
『シヌオッパが戦争でも始めるというのですかっ!収めたでしょう』
前へ出ようとするミニョの腕をテギョンが掴んでいた。
抑えられ、一歩を引いたミニョは、テギョンを睨み、ジェヒョンの言葉を待つに留まった。
『カン将軍が死んだ』
『え!?』
『3日前のことだ・・・シヌには既に知らせたが、返事は無い』
『ど・・・』
再び前へ出ようとしたミニョの腕を引いたテギョンの首が振られ、ミニョのきつい視線に絞り出すような声が答えた。
『シヌは、カン・シヌは・・・ひとつ・・・うらみを持っている・・・んだ』
『えっ!?』
『だが・・・これは、カン(憾)であって、ハン(恨)ではない』
真顔でミニョを見下ろしたテギョンの言葉をジェヒョンが継いだ。
『テギョンとシヌが、この城にやって来た経緯をお前は知らぬだろう・・・』
流れる視線の先でジェヒョンは、ミニョを真っ直ぐ見つめていた。
シヌはともかくテギョンの経緯は、ミニョの中に既にひとつの答えがある。
それは、良くも悪くも自分がここにいるからに他ならず、この城には、あの絵もある。
だが、それは、あくまでふたりの運命。
その運命に周囲が巻き込まれている等とそんな事は、ミニョの頭にはこれっぽっちも存在しない。
しかし、テギョンは違う。
噛み締める唇の下の乾く喉を抑え、苦しそうに俯いているのだった。
←ポチッとね❧(-^□^-)
一押し宜しくね❧
一押し宜しくね❧