夕焼けの最後の一欠けらが闇に呑み込まれた頃、シヌは、玄関を出て、車に向かっていた。
宿舎までの僅かな距離、敷地内にお互いの肩を抱いて崩れる様に帰って来た三人が、笑い、はしゃぎ、シヌを見つけていた。
『あー、シーヌーひょんれすっ!』
ミナムの肩を掴み直し、ジェルミの頭を掠めたミニョの手が、シヌに向けられ、怪訝な顔で見返したシヌは、飲んで来たのかと聞いていた。
『ん・・・ああ、ちょっとね・・・舐めた程度だけど、弱いの知ってるだろう』
ヘロヘロのミニョを真ん中にジェルミもかなり足元が覚束ずによろけ、ミナムだけが冷静だ。
『ジェルミまで、それか!?』
『らーいじょーぶ!個室だからばれてないってー』
『そういう問題じゃないだろう・・・』
眠そうに眼を瞬いているミニョは、ミナムに支えられ、その肩でコトンと目を閉じてしまった。
『あっ、おいっ、ミニョ!こんなところで寝るなよっ!ったく、もう少しなんだからっ』
仕方ないなと呟きつつ、ミニョを背中に背負ったミナムは、鍵を開けて車に向かうシヌを見ていた。
『出かけるの!?』
『ああ』
『そっか、あんまり遅くならないでね』
ミナムの懸念を悟りつつ、車に向かう足を止める事の無いシヌは、手だけを振り、ご機嫌で手を振ったジェルミもミナムに寄りかかっていた。
『ミーナーマー俺もう飲めない・・・早く帰ろう・・・』
『パボッ!もう家だっ!ったく、なーんでお前までそんなに酔っぱらってんだよ・・・』
ジェルミの酒量からしたら酔うほどの量だったかと目細めて考えているミナムは、後ろで遠ざかって行くエンジン音を聞きながら玄関を通り抜けた。
座り込んだジェルミを置き去りにリビングでミニョをソファに下ろし、水を汲んで再び玄関に向かう。
『ほらっ!とりあえず水飲めっ!ったく、食ってばっかりだったから気にして無かったけどなーんでそ
んなに飲んだんだよっ』
いつものジェルミならそれでも酒量は弁えている。
飲める方だから泥酔するほどではない。
俺とミニョの会話か。
そんなことを思ったミナムは、聞かれて困る事じゃないからジェルミも居る席で話をしたのだ。
『あーあ、ったく、運ぶの大変じゃねーか』
そう言いつつもジェルミを背負ったミナムは、リビングに戻って来て、ミニョを抱き上げていたテギョンと鉢合わせたのだった。
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