季節は、何事も無く過ぎて行く、上へ下への気持ちの浮き沈みなど、ただそこに横たわる身には、どうでも良い事で、結婚しますと報告に来たミニョは、美しく着飾り、終ぞ魅せなかった姿だった。
そういえばと頭を過ぎるのは、そんな事を伝えに来たのは初めてではないかという事だ。
『・・・・・・可笑しなものだ・・・ファン・テギョンの妻になるのだぞ・・・』
テギョンとミニョとどこかで感応は残っている。
だからこそ、記憶を持った青年や少年がここへ現れる。
そういえば。
ふたつめの疑問は、ミニョの名を持つ少女の事だ。
女の形をしてやってくるミニョは、その時代、テギョンと出会った後に来る。
記憶を持っている事も少ない。
それを呼び起こしているのは自分。
ハタと何かに揺さぶられる様に身を起こしたテギョンが、隠し所(※生殖器官)を抑えた。
『チッ・・・あいつ・・・今っ・・・』
感応の為せる技に捕まった身が捩られ笑みを浮かべていた。
★★★★★☆☆☆★★★★★
『いっい加減・・・観念したらどうだ!?』
南へ向いた塔の上階を風が渡っていく。
耳を擽るその風に髪を揺らされ、鬱陶しそうに瞼に落ちるそれを払ったテギョンは、敷き布を引いていた。
『嫌っ!』
『いや、いや、と言ってもな・・・お前が望んだんだぞ・・・』
『なっ、わたしのせいにするのですかっ!』
『お前のせいじゃなければ誰のせいだよ・・・』
『わたしのお蔭と言ってくださいっ!』
『・・・じゃぁ・・・・・・俺のお蔭だ・・・』
ククッと笑った気配にギョロンと流れた瞳が隠し所の打ち出しを映して泳いでいた。
胸に宛てた薄布は、少しづつ後ろに引かれ、それを引っ張り返すというそんな興(きょう)がもう何十分も繰り返されている。
『別に初めてじゃぁあるまいに・・・』
『はっ、初めてですっ』
『お前の頭の中にそれの記憶もあっただろう!?』
『そっ、それとこれとは別問題でしょう!』
『喜んでた癖にっ・・・』
露わになっている背中を一筋、指がふわりふわりと伝っていた。
そんな事をすればどうなると解りきった指先は、腰の窪みに落ちる寸前で引っ込められる。
案の定、空ぶった掌が褥(しとね=ふとん)を叩き、戻された指先が腰に触れて肩が、抜けた。
『えっ・・・あ・・・』
『ふ、お前の負けだ・・・』
バランスを崩す細い肩を掴んで振り向かせたテギョンの大きな手がミニョの髪を掻きあげる。
頬を滑り、耳朶を摘み、後頭部を支えた手のひらを引き寄せていた。
『んっ・・・』
柔らかく重なる唇の離れた一瞬に大きく揺れた乳房を包み込んだ掌が痣を覆っていた。
『ぁ・・・』
『何度見ても・・・』
口付けが落ちるのは、十字の切り傷の上。
横に払おうとした剣を止めたのは、テギョンの朱に染まった手だ。
ひとつめは、そうして肌を傷つけた。
そして、ふたつめが、真っ直ぐ胸に落とされた。
深く、深く。
組み敷いたミニョに覆い被さるテギョンの唇は、そこを抉る。
花の痕を抉る。
『舞った血の痕だ・・・』
『ええ・・・でも・・・あなたにも・・・』
肩に残る布を落としたミニョの手もテギョンの胸に触れていた。
引き締まった体躯のその下で、音を奏でる臓器が、鐘を打つ。
唇を寄せ、顔を寄せ、耳を寄せたミニョの髪を撫でながらテギョンは、微笑んだ。
『初めての時を覚えているのか!?』
『初めて!?』
『ああ、お前を初めて抱いた夜の事だ・・・』
遠く、空を見上げた瞳が、睫毛を映し、月を映して、上向いていた。
その中心の黒を見つめながら、引き込まれた湖の底の様だとそう思っていたミニョだった。
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