ベッドの前でテギョンの差し出したタオルを受け取ろうかどうしようか迷っているミニョは、聞こえた舌打ちに顔をあげようとした瞬間、転がっていた。
『へっ!?』
訳が判らずパチクリされる目の前にテギョンの顔がある。
『ヒョ・・・』
まともに目を合わせ、落ちて来た髪に目を閉じ唇を塞がれていた。
『ぁ・・・』
重たいと思っても、それは、心地よい重さでしかない。
うっとり、閉じられた瞳は、ただ、キスを受け入れ、背中に回った指が、躊躇いがちにシャツに皺を寄せた。
『楽しかったか!?』
離れ様、啄ばむキスを繰り返し、起き上ったテギョンが、ミニョの腕を引いた。
『はい・・・』
返事をしながらも何が楽しかったのかミニョの頭は高速回転している。
テギョンを置き去りにしてミナムとジェルミと出掛けた事。
それとも視察旅行の事。
どちらも楽しかったと結論付けたミニョは、もう一度返事をしながら頷いた。
『ヒョンも楽しめます!オンニの準備は、完璧ですっ!ご飯もお部屋も問題なかったですっ!』
『あ!?』
『オンニのお家に泊まったのですけどね。専属のコックさんもいらっしゃって!あ、有名なホテルから引き抜いて来られた方だそうですっ!だから、料理もお部屋も全く問題ないですっ!ヒョンでも食べられるものばかりでした!一流の方ですっ!問題なしっ!』
身を乗り出してテギョンに早口で捲くし立て、乗り出した身を正し、正面に向かって両手の親指を立てていた。
横目で見ていたテギョンは、逡巡した身を正して呆れ顔だ。
『ふっふーん、ご飯も美味しかったし、早くまた食べたいなぁ』
モッタ夫人の手料理を次々数えあげ、あれがどうのこれがどうのとミニョは繰り返し、テギョンのじっとりした視線など見えてもいない。
曖昧な相槌を打っていたテギョンも話の隙を伺いつつ写真集の撮影を考え始め、意外としっかり仕事をしてきたんだなと感心していたが、しかし、あっと、口を開けたミニョが、テギョンを見つめ、膝に乗ったタオルを目にした途端、ドアに向かって駆け出し、呆気にとられたテギョンは、ドアを開けて半分廊下に出たミニョを呼び止めた。
『ヒョンニム!お風呂に入って寝ますっ!お休みなさいっ!』
『はっ!?』
きっちり90度に曲がった腰を忙しく正したミニョがバタンと閉めた扉にカクカク首を曲げていたテギョンだった。
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