一方、並べられた写真を前に増々固くなったミニョは、アン社長が取り出しては並べる資料の数々に息を呑んで怯んでいた。
写真だけでなく、雑誌のインタビュー記事、CD、テレビ出演した録画映像。
何を言われるんだろう。
怒られるのだろうか。
騙していたのは事実だ。
テギョンが、ミニョを伴ってアン社長にした謝罪と説明、説得をしたその後は。
コンサート後の出来事が、走馬燈の様にめぐる頭の中で、引き攣らせた笑顔を浮かべてアン社長を恐る恐る見たミニョは、素っ頓狂な声を出していた。
『だから、そんなに緊張しなくても・・・』
『ふっぇひ・・・は・・・はっ・・・は、は、はひっ・・・』
笑われて、でも、緊張は解けなくて、膝に置いた手を握っているミニョは、再びやって来た女性に助けを求める顔を向けた。
が、女性の口からは、テギョンとミナムがたった今言い争いをしていると社長に報告がなされた。
『ったく、あいつら、またか・・・』
『テギョンが、一方的に怒っているみたいです・・・ミナムが何かを黙っていたとか・・・』
『ああー、いい、いい、放っておけ!お互い顔だけは守って喧嘩してるんだから放っておいて良い!今日は、記者もいないだろう・・・』
『ええ、ミニョssiがいらっしゃると伺ってましたので午前中に追い出しました』
お茶とケーキをミニョの前だけに置いた女性は、カップを見遣ったアン社長の手元から空のカップを回収して部屋を出て行った。
『さ、て・・・ケーキでも食べながら、わたしの話を聞いても貰おうかな』
ミニョにケーキを勧めるアン社長は、ポンとひとつ手を打って、両手を広げた。
『好きだろう、そこのケーキ、甘いものに目が無いのはミナムも同じだからな』
数時間は、並ばないと買えないといわれる限定ケーキが、ミニョの前に並べられていた。
初めて食べさせてくれたのはジェルミだったが、滅多に買えないんだと教えられ味わって食べた。
それが、今、目の前に五つも並べられている。
全部食べて良いというアン社長にミニョの釘付けになった目は、徐々に緊張を何処かへ押しやってしまった。
『ぜっ、全部・・・』
『ああ、食べて良いよ。食べながら聞いてくれれば好いから』
ほらと差し出されたお皿とフォークを受け取ったミニョは、アン社長を上目で見つめながらケーキを突き、一口掬って口に入れた。
芳醇な香りとあっさり深く甘い味が口の中に拡がり、ぽわんとしたミニョは、二口三口と味わって、やがて夢中で食べ始め、クスリと笑ったアン社長は、ミニョとソヨンが視察に行った経緯からソヨンに依頼していた内容をミニョに説明し始めたのだった。