『なっ・・・』
ストンと落ちた剣は、ミナムの髪を掠めパラパラと数本を切り落として地面に突き刺さっていた。
青褪め固まるミナムは、ゆっくり股の間に視線を向けた次の瞬間、後ろに飛び退くとシヌに向かって叫んでいた。
『なっ、な、な、何をするんだよー!!!シヌヒョン!!!』
打ち合った剣を鞘に収め、背筋を伸ばしたシヌは、無表情だ。
『何とか言えー!俺を殺す気かっ!』
『すまない逆に飛ぶ予定だったんだが・・・』
淡々と計算違いだとミナムに背を向けたシヌは、空を見上げていた。
『ふっ、ふざけんなー俺の髪っ・・・』
さらりと謝罪をするシヌに前髪を引っ張って見せつけるミナムは、きゃんきゃん喚き続けたが、シヌの視線は、テギョンに隙を作り、あんぐり口を開けてミナムを見ているミニョに移っていた。
『姫、今日もお美しいですな』
『えっ!?ああ、おはようございます。シヌ先生』
間の抜けた返事をしたミニョは、たくし上げていたドレスを下ろし、ゆっくり前を見た。
『おはようという時間でもありませんね』
太陽は、限りなく真上を昇り、燦々と降り注ぐ陽射しを眩しそうに見つめるシヌは、ミナムの前に歩み寄り抜き取った剣をテギョンに渡した。
『隙を作ったのは姫ですが、動じたのは貴方ですよテギョン様』
『ふ・・・ん・・・あの女には勝った』
『対したのですか!?』
『ああ、その女が先に剣を抜いたからな』
『なっ!違いますっ!貴方が先っ!!!!』
鞘に収めた剣をミニョに突きつけたテギョンは、ぎょっとその先端を見ているミニョに不敵な笑みを向け、得意気に顎をあげた。
『それをここで晒すか!?』
ミナムとシヌも居る前で、ミニョに事の成り行きを説明できるのか出来まいと勝ち誇った目が言っていた。
グッと言葉を詰まらせたミニョは、悔しそうにドレスを掴み、そんなふたりを見ていたシヌが、テギョンの剣に鞘を重ねて下に下ろさせた。
『何をしたのですかテギョン様・・・まぁ、大方の想像はつきますが・・・』
『ああいう女だと思わなかったんだ・・・お前、教育しすぎだろう』
膨れたミニョに背を向けたテギョンは、シヌの後を着いて丸太に腰を下ろすとぷっくり膨れてミナムに声を掛けられ更に膨れたミニョがズンズン去っていくのを見送っていた。
ミニョを更に怒らせ慌てたミナムも追いかけて行ってしまった。
『ああ見えても一国の姫ですからね・・・何かあった時に守れない身なら死を選んだ方が良い』
『相変わらず冷めてるな・・・姫なら守り手もそこそこ居るだろうに』
『貴方にもそうお教えしましたよ』
『ああ、だから、俺は、ひとりで来た』
『ジェヒョン様とお会いになったんですね』
『ああ、お前も交えて明日話をしようと』
『そうですか』
『叔父上は!?』
『お会いになるならご案内します』
『良くないのか!?』
シヌの無表情からは何も読み取れない。
どんなに目を凝らしてもどんなに感覚を張りつめても崩れる事の無いシヌの感情を慮るのは、難しいと子供の頃からテギョンは知っていて、聞いた事に素直に答えてくれない事も知っている。
だから、立ち上がったシヌが、歩き出した後ろを黙って付いて行くのだった。
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