『シヌは・・・』
戻って来たジェルミを前にジェヒョン王は、溜息を吐いていた。
『行かれるでしょう・・・あの方は、ここで終えるつもりは無いと仰っていました』
『貴族の法(さだめ)か・・・』
『さぁ、そこまでは、そういったモノを持ち合わせて居られるのか、計れぬお人です』
『そ、うだな・・・カン将軍の具合は・・・』
『相変わらずと聞いております』
『ファン・テギョンか・・・ファン家の再興は、祖先依りの夢だと誰もが笑ったが・・・そうか、叶えるか』
『王よ・・・私には、良く判りませんが・・・南の戦地と関連が・・・』
『ああ、皆を此処から出さねばならなくなるだろう・・・・・・・・・私は、残る身だ・・・』
下がって良いとの言葉でジェルミは、それ以上言葉を紡げない。
些かも状況の把握が出来ているとは言い難い宰官の憂いは、王の胸の内を読む為の眠れぬ夜を過ごすだけだった。
★★★★★☆☆☆★★★★★
『こ・・・ども!?』
『ばっ、バカっ、いっ、居る訳ないだろっ!!!』
『そっ、そんな事言ったってオッパが、聞こえるってっ!!』
『おっ、お前も聞こえたからきっ来たんだろうっ!』
互いに進む理由を擦り付け合い寄り添った体を更に寄り添わせて、怖い怖いと墓地を進むミナムとミニョは、壁に掛けられた肖像画の一枚一枚に苦笑いを浮かべ、まるで嘲笑っている様な絵に精一杯の挨拶をしながら進んでいた。
『あっ、あそこっ!!』
突然、前を指差して大きな声を出したミニョに後ろを振り返って壁の絵と目が合っていたミナムが、物凄い勢いで飛び上がった。
『なっ、何だよー』
『扉があります』
それまでの怯えた雰囲気はどこへやら、スッと背筋を伸ばしたミニョは、正面の彩られた扉を驚きに満ち溢れた目で見つめた。
その周り、天井の両側に高窓が備えられ、明かりとりの窓から陽の光が差し込んでいるそこは、今まで歩いて来た真っ暗な通路とは一線を隠している。
『えっ!?ここって、こんな綺麗な場所だったのです・・・かぁ・・・』
ほけーと周りを見回すミニョは、扉の前に拡がる芝生に向かって走り、今度は、ミナムが引きずられていた。
『うわー、綺麗ー!森の中みたーい』
明かりとりから差し込む光は、ぽっかり開けた空間を丸く切り取り、植物も生え、壁に沿って水が流れていた。
『わわわわ、小川もあるんですねー・・・これのおかげで草が生えてるのかぁ!?』
興味津々顔のミニョは、すっかり明るい声ではしゃぎ、上に下にその空間を観察していたミナムは、
ミニョが最初に見つけた扉の前に立っていた。
『なっ、なぁ・・・声・・・止まった・・・ぞ』
『へっ!?』
ぴっとり扉に耳を付けたミナムは、まだ怯えた表情でミニョを見つめていたのだった。
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