『いつから・・・』
横たわる初老の痩せ細った男性を見つめたテギョンは、後ろで侍女から水差しを受け取ったシヌに訊ねた。
『一年ほどになります』
『い・・・ち・・・ね・・・』
シヌが、水差しを男性の口に含ませるのを見つめ、膝を折って布団の上の手を握っていた。
『カン将軍、テギョンです・・・ファン・テギョン・・・貴方を捜し・・・てここまで、来たの・・・に・・・』
弱弱しくそれでもテギョンが握る手を握り返そうとするカン将軍は、顔を横に倒し、薄っすらと涙を浮かべ笑おうとする顔に皺が刻まれていった。
『俺が、こうしていられるのは、貴方のお蔭です。あなたが居たから俺は・・・俺は・・・』
蹲るテギョンの目にも涙が浮かぶ、大粒の一滴の涙は、零れる事無く眦に止まっていた。
『テギョン様申し訳ありませんが父が疲れてしまいます。お話は、それくらいで』
表情が崩れないのは、何故なのか、一年もこの姿を見ていたら、諦めもつくものなのか、それともそもそも父親に対して思うところも無いのか、カン・シヌという男は、ただ、淡々と状況説明だけをして、テギョンを別室へ誘った。
★★★★★☆☆☆★★★★★
『オッパ~だめっ、駄目ですってばー・・・』
ずるずる腰が落ちるミニョの手を離さず引き摺って歩くミナムは、どろどろに汚れたミニョのドレスを一瞬だけ気に掛けたが、握り直した手を離すつもりは無いと一歩一歩洞窟に近づいていた。
『お、俺だって怖いんだ・・・けど・・・』
けど、聞こえた声を確かめたい好奇心は、それが、覚えのある声だからだ。
そんな筈は、無い。
だって、だって、ここに居る。
同じ声。
似た声。
そんな筈は無い。
俺が間違える筈が無い。
ミナムに聞こえた声は、間違いなく幼少期のミニョの声だった。
手を繋いでいる。
こうやって喋っている。
なのにどうして。
『歌っ・・・てる・・・』
『えっ!?』
『ほっ、ほらっ!お前も聞いてみろよっ!歌が聞こえる』
腕を引っ張ってまるで盾にする様に前に押し出したミナムは、怯えるミニョの背中に覆い被さった。
『なっ、なっ、聞こえるだろう!?』
怯えながら顔を傾け、それでも耳を澄ますミニョは、目を見開くとミナムを振り仰いでいる。
『なっ、なっ、まっ、間違いじゃないだろう!?』
遠くから洞窟内部に響く声が聞こえていた。
メロディになっているその声は、楽しそうで、合間に笑い声も聞こえる。
『こっ、子供の声ですよね・・・ずっと小さい・・・』
小さい子供の声が、ミナムにはミニョの声に聞こえるのだ。
何でと不思議な顔をするミニョのそれとミナムの思っている事は違う。
しかし、顔を見合わせたふたりは、それぞれに先に進んで見ようと決めていた。
『いっ、行ってみます!?』
『たっ、確かめなきゃだろ・・・こ、ここは一応さっ祭事以外立ち入り禁止だぞ・・・』
おどおどするミナムの前でスッと立ち上がったミニョは、小枝を拾って、胸元から石を取り出した。
なんでそんな場所にとミナムが、怪訝な顔をしている間に火を点けたミニョは、入り口に飾られていた燭台を外し、オッパとミナムに手を伸ばしたのだった。
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