「どうしますかっ!!」
「大至急曲順を入れ替えろっ!!ミニョssiのパートを後に回せっ!」
「テギョンは!?」
「テギョンもだっ!ゲストに何とかして貰うしかないっ!」
ステージ裏で顔を引き攣らせて慌ただしく走り回るスタッフ達の間を歩いていたリンは、腕を組みモニターを見ながら足踏みしている舞台監督を見つけて駆け寄っていた。
「何かあったのー!?」
「あ、ぁあ、リン君・・・ちょっと、ね・・・ミニョssiィが・・・」
「オンマどうかしたのー!?」
「監督っユンギssiがシヌと何とか出来るそうですっ!」
「判った!テギョンに指示を飛ばせっ!」
ドタバタする舞台裏で、右往左往するスタッフは、緊急対処を余儀なくされている。
「ダメっ・・・出ますっ・・・」
「MC延ばせるかっ」
「シヌがもう少し延ばすそうです」
焦りの中で飛び交う怒号をミニョが一喝した。
「ミ・・・」
「コ・ミニョ・・・」
「出ますっ!泣いてませんっ!大丈夫ですっ!すみませんでしたっ」
凛と立った背中で、頭こそ垂れないが、ジョンアに素早く化粧を直されたミニョは、パートナーとステージに飛び出している。
「すっげー」
「怖ぇー・・・コ・ミニョ根性あるなぁ」
若いスタッフの囁きを聞きながらリンがジョンアに駆け寄った。
「ヒョーン、オンマどうしたのー!?」
裾を引っ張られリンを抱き上げたジョンアは、ステージを指差している。
「ちょっとね、派手に泣いちゃったのよ・・・ほら、テギョンssiの曲、良く聞きなさい」
ステージに顔を向け、耳を澄ませたリンは、ジョンアの首に腕を廻した。
「いつものアッパの曲だよー、どうしてー!?」
「テギョンが最もテギョンらしい曲だからだね」
「ハラボジー」
「誰かにとっては、いつもの別れでも誰かにとっては、永遠の別れになることがある」
「どういうことー!?」
「お前は、ファランの事をテギョンからどう聞いている!?」
「ハルモニは、ハルモニだよー・・・一緒に暮らしたことはあんまりないって言ってたけど・・・」
「テギョンとミニョは、両親から続く縁で結ばれているからね・・・出会ってから結婚するまで色々あったんだ・・・君が生まれて、こうして親子でステージに立つ機会を与えられてテギョンも色々考えたんだろう・・・あれは、どこにでもある物語りで、ふたりにしか判らない楽曲なんだよ」
「そう、だから、私達には、素敵な曲に聞こえても、ふたりの間では、もっと心の深い場所を刺激する様な曲なのよ・・・きっと・・・」
ジョンアがリンの胸に手を当てている。
「だから、泣いちゃったんだ・・・ミニョssi」
ギターを手にやって来たユンギも息を切らしながらジョンアの肩に手を置いた。
「きっと、お前には、後で話してくれるだろう・・・ほら、転調した・・・」
ギョンセの腕に収まったリンは、ステージのその中央で、スポットライトを浴びながらギターを奏でるテギョンと泣き顔などどこにあったのかという程笑顔で、パートナーに支えられて追いかける光の中でダンスを披露しているミニョを真剣な顔で見つめていたのだった。
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