ヒジュンのギターソロが続く中、ジェルミが、再びドラムを叩き始めていた。
「ミニョ・・・」
「オッパ!」
息の切れるミニョを抱きしめたテギョンは、その髪に口付けている。
「とりあえず、おめでとう」
「勘も悪くなかったな」
ミナムが出した手に手を合わせて叩いたミニョもにっこり笑った。
「えへ、頑張りましたよ―」
「スパルタ教師がいたしな」
「チッ!こんなの序の口だ!まだ一曲歌っただけじゃないか・・・」
離れるミニョに舌打ちをするテギョンは、反対側のステージ袖を見て目を細めている。
「もーオッパ!たまには素直に褒めてくださいよー!わたしだって拗ねちゃうんですからねー」
「あぁ!?」
「拗ねたら何をするかわからないんですよー」
ニンマリ笑うミニョを見下ろしたテギョンは、反対側でちょこまか忙しそうに動いているリンを見た。
「出来ない事を言うなっ!俺達のステージがどれだけ大事か知ってるお前がそんな事をするものかっ!それより・・・リっ!?」
言いかけたテギョンの前で、ヒジュンの後ろのスクリーンが、大きく波を打っている。
「映像なんて予定にあったか!?」
テギョンの質問にシヌが笑って答えた。
「まぁ、見てろ・・・もうすぐ面白いものが見れる」
知ってる素振りのシヌに上を見たテギョンは、前に出て腰に腕を回したミニョの肩を抱いている。
「ふふ、後ろで撮影をしてるんですよー」
「は!?」
「控室で、子供達だけの発表会」
「はぁ!?」
「ソンベの為に映像作ってたんだけど、音が聞こえる訳じゃなし、触りだけなら、丁度、曲に調和して良いってさ」
「ふーん・・・遊ぶ子供の画(え)か!?」
「ふふ、アボニムが、遊んでくれるので孫に囲まれるハラボジの演出です」
「は!?」
「ソンベの『別れ歌』だよな・・・息子さんに宛てた・・・」
「ああ、何人もの孫に囲まれて遊ぶのが夢だったそうだが・・・ユソンだけだからな・・・老人には、老人の夢があるって仰ってな・・・・・・本当は、ユソンの下にもう一人・・・男の子がいる予定だったらしいぞ・・・」
スクリーンには、リビングの様に装飾された控室でドラムを叩くユソンが、ジェルミとリンクして腕を振り上げた。
「ソンベがリンを可愛がってる理由がそれだ」
淡々と話すシヌもスクリーンを見上げている。
「丁度、年齢も同じ・・・事故がなければ、リンと同級生だったそうだ」
テギョンと並んで見上げたミニョの首が傾いて何度も瞬きを始めた。
「ジュノとユソンで演るつもりだったんだけど・・・」
「(ぇあー)!!!」
声になりきれない掠れた音を慌てて抑えたミニョは、不敵に笑うシヌを振り返って凝視している。
「ついさっき、リンと交代したらしい」
「オオオオオシヌオッパ!何っ!」
「アボジ・・・」
「おっ、ユンギssiじゃん!?」
少しよれたジャケットを着たギョンセがリンを腕に抱いてユソンの叩くドラムの前に座った。
「はは、ユンギssiってば、ヒョンみたいだな・・・でも、その髪型のアップは似合わねぇ」
ミナムの酷評にスクリーンを見たミニョは、ギターを構えたユンギの背中を見上げている。
「家族団欒ってやつだな・・・」
ジェルミのドラムが止み、ヒジュンのギターも止まった。
「転調するぞ」
シヌの一声に合わせて、スクリーンのユンギとユソンが楽器を構えた瞬間、ドアが閉まり、ステージに煌びやかな何色ものスポットライトが落ちている。
「わぁっ!」
華やかに雪の様にも花びらの様にも見える小さなライトが黒くなったスクリーンの前を落ち、スローテンポのバラードが始まった。
「わぁ・・・ソンベの歌・・・初めて聞きます・・・」
本番まで誰とも練習をしないと言ったヒジュンの曲にうっとりしているミニョの横で、舌打ちをしたテギョンは、出番に合わせてスタッフと目配せを交わしていたのだった。
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