「はい・・・でも、今回は、いらっしゃらない予定では」
(ああ、そのつもりだったんだが、どうしても来ると聞かなくてね)
「困った人ですね・・・幾つになりましたっけ」
(さて・・・幾つだったか)
流れる音にも耳を寄せたユンギは、ステージと携帯とどちらにも笑っていた。
(テギョン達とも暫く振りだからね、とはいえ会いたい人は、違うみたいだけど)
「俺は、あまり会いたくないです」
(そうかね、贈り物が届いたと喜んでいたが)
「断ったのは、彼女ですよ」
(政略結婚だと思っていたからだろう・・・君という人を知らなかっただけだ)
「結局は、政略に違いは無いんですけどね」
(そう言うな、君の母上も気にっいってくれてるそうじゃないか)
「魅力的ですからね」
(ふ、そんなものどうでも良いと思っているだろう)
「まぁ、そうです・・・当初から母にとって本命でしたし、決まり事ですよ」
(それでも、君を尊重していた)
「感謝してますよ・・・タイミングも良かった」
(で、どうするんだい!?結婚しても離れ離れの花嫁かな)
「それは、仕方が無いですね!仕事を取り上げるつもりも無いので」
(ふ、理解のある旦那様だね)
「若いだけです」
切れた電話を暫く見つめたユンギは、ステージに戻っていった。
★★★★★☆☆☆★★★★★★★★★★☆☆☆★★★★★★★★★★☆☆☆★★★★★
「何か言いたいことがありそうだな・・・」
運転するテギョンの横顔をジーットリ眺めているミニョは、首を振っていた。
「言いたいことが無いなら前を向け」
また首を振ったミニョは、シートベルトを掴んで首を傾げている。
「えっ!?きゃわっん」
ガクンと派手に歩道に寄せられた車にミニョの体が跳ねた。
「ったー・・・ッパ!っぶな・・・・・・」
ちゃっちゃとシートベルトを外したテギョンは、ミニョの上に覆い被さっている。
「えっ!?わっ・・・近っ」
胸を押そうとした手を握りこまれ、シートも倒されたミニョは、瞳をパチクリさせた。
「ったく、お前の言いたいことは解るが、大した事無いとどのくらい言えば気が済むんだ!?」
呆れ顔で前髪を掻き揚げるテギョンは、ニヤリと笑っている。
「別に言ってくれなくても良いですよぉ」
ぷくぷく膨れるミニョは、ツンと横を向き、フッと笑ったテギョンが顎を引き寄せた。
「コ・ミニョ悔しいのは判るが俺に当たるな!」
膨れた頬を潰してまた笑うテギョンは、ハンドルに手を掛け直しサイドブレーキを落としている。
「なっな悔しい訳じゃ!」
「悔しいんだろう!お前じゃなくてリンが気が付いて!それに俺がリハを途中で辞めた事も」
「う・・・」
シートベルトを握り締めて再び動き出した車のフロントガラスを見ていたミニョは、膨らませた頬で俯いた。
「まぁ、仕方無い・・・俺も自分で休養が必要だと思っているけど今日は、どうしてもあいつらの演奏を聴く必要があったんだ!練習室で聴くのとは訳が違うからな!お前の心配はそれ程していなかったが、でも、お前も久しぶりの大舞台だ・・・」
「オッパ・・・」
「十分だった・・・練習を一生懸命やっていたのは知っていたけど・・・あいつの・・・リンの声であれだけ歌えれば十分だ・・・・・・天使の声を思い出したよ・・・」
病院の駐車場に滑り込んだ車を止めたテギョンは、エンジンを切りながらミニョを見つめている。
「お前がくれた天使は、俺に幸せをくれるんだ!俺に無い物を持っているからな!それは、お前も同じだ!俺は、仕事を完璧にしたいけど心配してくれるリンやお前の言う事は素直に聞きたいとそう思ってるぞ!コンサートが終わるまであと数日、きっとお前もリンの事もあって、気が気じゃないだろうけどあと数日、我慢してくれ」
「オッパ・・・」
ドアに手を掛けたまま振り向いていたミニョは、テギョンを見つめ返した。
「チッ!ったく、終われば休むと言っているのに俺の言う事は聞かないよなお前達」
車から降りたテギョンは、照れ隠しか悪態をつきながらミニョが降りるのを待っていたのだった。
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