それから数日後の撮影は、大掛かりな移動を伴って予定外の場所となり、撮影クルーに囲まれたソヨンが、質問攻めにあっていた。
『もうすぐ撮影も終わるし、労いだと思って頂戴!たまたま伝手があっただけなんだから・・・』
困り顔のソヨンの横でスハが薄ら笑い、肘で突かれた腹を痛々しそうに抑えた。
『ね、ミニョ、貴女も入りなさい』
『へっ!?』
『あそこに立ってよ!』
ソヨンの指差す方向に顔を向けたミニョは、フルフル首を振り、けれど押される背中に階段に座らされていた。
『オッ、オンニー!?』
『うっぅーん、イッマイチだなぁ・・・・・・ちょっーとーミーナーム!ここに来なさーい!』
呼ばれたミナムは、いそいそミニョの隣に座り込むとソヨンに言われるままその頭を胸に抱えた。
『うーん、良いわ!双子の魅力満開ね!』
『そうかー!?こんなんで良ければ幾らでも撮られてやるぜー!』
『どっかの誰かさんより絵になるから良いのよ』
『へぇー、そのどっかの誰かさんめちゃくちゃ睨んでるんだけどー』
『そう!?でも、次は、彼の番よ・・・それにこーんなカチコチ隣に立たせたら、絵にならないからミナムで丁度良いの』
『それ、本人に言った方が良いんじゃん。俺、このまま睨み殺されそうだぜ』
『そんな玉じゃないでしょう!売られた喧嘩は買うのが性分な癖に』
『ヌナが売る喧嘩なら幾らでも買ってやるっぜっ!』
『えっ、わっ、きゃー、オッパ、ダメーっ!!!!!!』
ミナムのポージングにあたふた付き合わされていたミニョが、宙に浮かされて悲鳴をあげた。
慌てて手近なシャツにしがみ付き、ニンマリ笑っているミナムの前で連写音を響かせるソヨンのその後ろで、ジェルミとスタッフがあんぐり口を開け、無表情なシヌと眉間に皺を寄せたテギョンがその光景を見ていた。
『ミニョそのままこっち向きなさい』
ミナムの肩に顔を埋めていたミニョは、むっつり膨れたままこちらを向き、けれどソヨンの動きに合わせて移動を始めたミナムに笑顔を向けた。
『オッパ、凄いですっ!くるくる回ってくださいっ!』
『はぁ!?おっ前そこは、重たくないですかと聞くところだろう!可愛くねぇなぁ』
『だって、オッパに抱っこしてもらうの子供の時以来です!近所のお家覗いた時以来ですもんっ!』
『ああ、あの時は、抱っこというか後ろから持ち上げただけだもんなぁ、でも持ち上がんなくて、結局ふたりで転んだぜ・・・犬も見えなかったし・・・』
『院長様に怒られましたねぇ、ふたりで』
『そうさ、俺は、逃げる気だったのにお前が手を離さなかったから逃げっられなかったんだっ』
ミニョを持ち上げ直したミナムは、スタスタとテギョンの前に立っていた。
『一度掴んだものを離さないって強情なところがある癖にこいつがそれをしないのは、優しさのせいだ。それと知らない感情に戸惑ってる。ヒョンはさ、守りたかったんだろうけど、守り方を間違えた。泣かせた事実は、事実で、俺は、それを未(ま)だ許せないし、あの女の事もあるからとことん邪魔してやるっ!』
差し出したミニョの体をミナムがテギョンに押し付けた。
違える腕に抱きあげられるミニョは、ミナムの首に腕を残したままテギョンを見つめた。
『チッ、回りくどいっ!こいつが俺を好きなんだからお前が口出す事じゃないだろう』
『ふん、それでも俺は、オッパだもんねっ!ミニョが決められないと決めつけるなら俺に聞くのが筋ってもんだ!自分だって解ってるから俺を爺さんに会わせたんだろっ!』
ググッと黙りこくったテギョンからシヌへ視線を移したミナムは、ミニョから腕を引いてごめんと謝った。
『何の事だっ』
『ヒョンは、知らなくて良いよ。俺達の悔しさは、これからたっぷり返して貰うから』
きょとんとするジェルミの横で顔を隠して笑うシヌをソヨンが振り返り、テギョンを撮影対象として呼んでいたのだった。
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