声にならない唇の動きを上目で見たミニョが、テギョンの前で小首を傾げていた。
『私だってヒョンと一緒にいたいんですっ!だから、お仕事引き受けたのっですっ・・・っからぁ・・・』
それにちょっとした期待もあったと続けて俯いたミニョの頭が、テギョンの胸を押していた。
『ヒョンとちゃんとお話ししたかったし・・・オッパは、ファランssiの事覚えてて嫌いだって言・・・』
『ぁ!?なんだそれ・・・許さないとか言われたのか!?あいつの考えなんてどうでも良いぞ』
『もー!ヒョンニムもっ私の話を聞いてくださっいっ!』
も、という助詞にひっかかった顔で体制を崩したテギョンをミニョが押し倒していた。
『オッパもヒョンもオンニもですっ全然聞いてくれないのですからー』
怒り心頭という顔で膨れるミニョを支えて見上げたテギョンが押し黙った。
『ヒョンとずーっと一緒に居たいのですっ!でも、そんなのいつどうなるか判らないってオッパは言う
し!オンニだって、離れてても幸せだとか言うし・・・ファランssiには・・・まだ、その・・・』
どこかに蟠りも残っていて、もう会わないと思って出掛けて行ったあの時とは、少しだけ状況も変
わっていた。
会うこともないだろうと考えていたから思い切った事を言った。
可哀想な人だと、テギョンが離れて行く事を悩んでのだろうその顔は、憔悴してミニョの胸を締め付け、懇願に答えたのは、それがテギョンにとって何より、啼くほど母を求めていたその人に出来る最後の仕事だと思っていたのだ。
『オモニなんかどうでも・・・』
『ヒョンは、もう少しファランssiに感謝すべきですっ!オモニと呼べる人がいるだけでっどれほどっ』
どれほど、たったそれだけがどれだけ心の拠り所になるのか、声を詰まらせたミニョの胸には、ミナムの思いをどう考えるのかと訴えたマ・室長の顔が浮かんでいた。
あの時、それを振り払ってローマに行っていたら、あの時、ほんの些細な偶然で、A.N.Jellと遭遇しなければ、あの時、目尻に溜った涙を落したミニョをテギョンがぎょっとして凝視した。
『な・・・何で泣くっ・・・ん・・・だ・・・よ!?』
『知っ知りませっ!ヒョン・・・なんか・・・ヒョンニムッ・・・なんかっ!』
顔を隠す様に崩れたミニョを抱きしめたテギョンは、天井を見つめた。
『・・・俺は・・・まだお前に何もしてやっていないだろう・・・』
『良いんですっ!私が泣きたいから泣いてるだけですっ!』
噛み合わない会話にまた黙ってしまったテギョンは、ミニョが泣き止むまでずっとそうしていたのだった。