温室から続く裏道を歩いていたテギョンは、キッチンの戸の手前で、ミニョの腕を引くと木立を背にしてその場に立たせ、顔を覗き込んでいた。
黙ったままミニョを囲って木に手を付くテギョンは、やがて、目を泳がせて視線を逸らした顎を捉えた。
『なぁ、コ・ミニョ、お前、あの女とシヌの関係を知っていたか!?』
ミニョの顎を持ちあげたテギョンは、些か怒った様な顔で見ていた。
『はぇっ!?』
『あの女がシヌを誘惑していたのを知っているかと聞いている!?』
『は!?え、い!?な・・・に!?』
きょとんとしたミニョは、溜息交じりに離れてまた考え込んだテギョンの背中を見つめた。
『・・・前の撮影の時からなんだよな・・・あの女・・・シヌに何か吹き込みやがった・・・』
『え・・・ちょ・・・ヒョ・・・それってどいう事ですか!!』
一瞬、考え込んだミニョは、ぎょっとしてテギョンの腕を掴み焦り顔で見上げた。
ソヨンとシヌの関係。
関係というほど深い知り合いでは無いというのがミニョの見解だ。
シヌとソヨンが会った回数などミニョのそれに比べれば、片手で足りる程度の事で、深く知り合うという程、会話を交わしたことも無い筈だった。
しかし。
今のテギョンの見解と言い分は、それを凌いでいた。
『なっ、何を言っているのですか!?シヌひょんとオンニって・・・!?』
『コ・ミニョ・・・・・・お前、シヌが夜遊びしてる原因・・・・・・解って、いるよな・・・』
じっとり見つめるテギョンの鋭い眼差しを前に固まってしまったミニョは、やがてゆっくり頷いた。
知らない筈は無かった。
シヌが、ミニョに必要以上の接近を見せるのを、それにミニョが何も言わないのは、少なくともテギョンに会えない間、シヌを二度も傷つけた負い目を感じているからだ。
シヌの事迄考えていなかった。
ただ、テギョンのスキャンダルによって、壊れてしまいそうな心を抑えつけるのに必死で、シヌが、自分を気にかけてくれているのを知っていたが、一度は、テギョンでなければ駄目なのだと伝え、それを理解してもらった筈で、だから、だからこそ、シヌの事等考えていなかった。
ただ、テギョンに会いたいだけだった。
『・・・ミ・・・ニョ・・・』
大きな目から零れた涙を目にしたテギョンは、慌ててミニョを引き寄せた。
『っ、すまないっ泣かせるつもりは・・・』
『ヒョ・・・』
『悪い・・・今のは、聞かなかった事にしてくれ・・・』
『シッ、シヌひょんは・・・そ・・・ま・・・私を・・・』
『あ、ああ、まだ、お前を諦めていない・・・仕方が無いんだ・・・俺が、どちらかといえば俺が、優柔不断だったから、もっと、あいつ等を頼れば良かったんだろうが、それを出来なかったから・・・』
ミニョを取り戻してからこちらテギョンもシヌとちゃんと話し合ったかといえばそうでもない。
避けているのか、避けられているのか。
表面上は、A.N.Jellの仲間として過ごしているが、その実、どちらもその事に触れないまま、今日まで来ていた。
まして、ミニョの宿舎への逗留を最初に求めたのは、テギョンでは無くシヌだった。
一度目のイタリア帰りにそうしろと言ったシヌの意図等その時は、何も考えていなかったテギョンは、ただ、この恋を応援されているだけだとむしろ隣で眠るミニョを抱きしめてくすぐったい様な気分だったのに今の気分は、崖を前に背中を押された様な気分だ。
『前の撮影の時にシヌとソヨンは、その、何というか・・・何かあったみたいなんだよな・・・お前にこれを話すのは、その・・・何ていうか・・・卑怯というか・・・あいつは、お前を諦められない傷を他で・・・』
『シヌひょんを傷つけたのは、事実です・・・けど、でも・・・何も出来ないから・・・だから、その宿舎を出ようかと思っていたんです・・・でも、オッパに反対されて・・・ヒョンも・・・その・・・反対・・・す・・・』
テギョンの腕がミニョをきつく抱きしめていた。
『反対するに決まってるだろう!お前、俺を怒らせたいとしか思えない!それにな!俺の話をもう少しまともに聞けっ!散々逃げ回ってまだ逃げたいのか!?』
『そっそんなつもりありませんっ!ユジンssiにも沢山お話して頂きましたしっ!ヒョンがどれだけ待っててくれたかも今はっ解ってますっ!』
『・・・本当か!?』
何度も頷くミニョを前に膝を落したテギョンは、また木に押し付けていた。
どちらともなく触れ合った唇は、すぐに離れたが、その場で暫く抱き合っていた。
『・・・・・・なぁ、ところでお前、あの女に何の用事だったんだ!?』
『ぅん、ヒョンこそ何の用事だったのですか!?』
さぁとお互いに恍けたふたりは、屋敷を振り返った。
聞きたかった事をどちらもソヨンには聞けなかったが、思いがけず縮んだ距離に晴れ晴れした顔を見合わせ戻って行ったテギョンとミニョだった。
★★★★★☆☆☆★★★★★★★★★★☆☆☆★★★★★★★★★★☆☆☆★★★★★
悲鳴が聞こえてきそうな展開ミアネ(^▽^;)
チェ・ソヨンというキャラクターは、A.N.Jellになる前のシヌの初恋相手が出発点だったので(^^ゞ
キム・ユナが年上な理由もユンギの恋人が人妻な理由も実は、ここにあったりした(笑)
そのお話は、まだどこにも出していないし、全く独立したシヌだけの恋の話は、
どちらかというと痛いからこの先も日の目は見ないかも(-_-;)
なので、それも掛け合わせてこの先お話展開します。
ちょっぴりお断りでし(-^□^-)いつも最後まで読んで頂いてありがとう(^-^)
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