ミニョと呼んだシヌに3人もドアに目を向けた。
お邪魔ですかと遠慮がちにお盆を抱えて入って来たミニョは、テーブルにパウンドケーキとティーセットとフルーツを置いてジェルミの横に座った。
『皆さんこちらにいらしたのですね!モッタ夫人からおやつを頂いたのです!食べませんか』
切り分けられた山盛りのフルーツの乗った皿をテーブルに置いたミニョは、ミナムを呼んだ。
『オッパ!いつの間にデザートなんてお願いしていたのですかぁ』
『ああ、出発前にヌナに電話したんだ。ここのシェフ、ヌナが何年も通って引き抜いて来たって聞い
てたからさぁ。デザートもそりゃぁ、旨いって聞かされたんだ』
フルーツよりもホールケーキに目が釘付けのミナムは、ジェルミを押し退けてミニョの横に座りナイフを取り出した。
『うはー、マジで美味そう!1.2.3・・・5等分か!?』
頭数を数えるミナムにテギョンは首を振り、シヌもカップを並べながら首を振っていた。
『3頭分で良いのか!じゃぁ、俺、一番大きいの貰うぞー』
『4等分ですっ』
ナイフを乗せたミナムの手首をミニョが掴んだ。
『オッパは食べ過ぎですっ!アン社長にオッパの管理をしろって言われたんですよー』
『はぇっ!?何だっそれっ』
十字にナイフを入れるミニョは、それでもミナムが指差した箇所を皿に乗せ、ジェルミの顔を覗き込んで選択されたケーキを渡し、ナイフに付いた粉砂糖を指先で掬って舐め、ミナムに睨まれた。
『オッパは、食事の管理がテキトー過ぎるそうですよーバクバク食べるのは良いけど太ったって・・・運動もしてるみたいですけどそれでも、あと2キロは落とさないとダメだって言ってましたよー』
『なっ、なんだよっ、そんなの俺に直接言えば・・・』
ミニョが舐めるナイフの粉砂糖を要求したミナムは、差し出された指を舐め、黙しながら注目していたテギョンの片目が奇妙に釣り上がった。
『オッパに言ったけど聞いてなさそうだって!ライブで落ちるとか言ったのでしょう・・・お酒も飲み過ぎですし、食事でも管理してくれないかって言われ』
同じ様に見ていたシヌも眉間を寄せかけたが、ミニョの手を引っ張って指先を拭い始めた。
『なっ、何だよっミニョ、お前、俺の専属マネージャーにでもなるのかぁ!?』
『そ・・・うーん・・・そんな事出来るのでしょうか!?雇ってくれますかね!?』
『社長なら俺が口利いてやっても良いけど・・・でも、めちゃくちゃ大変だと思うぞ、俺のスケジュールだけ見てれば良いってもんでもないからなぁ・・・交渉とか・・・出来ないだろう・・・』
シヌから淹れたてのお茶を受け取ったテギョンは、ミニョと視線を合わせたが、カップに顔を埋める様に湯を啜って何も言わず、テギョンの言葉を待つように上目だったミニョは、少し膨れて俯いた。
『ああ、なら、俺が直接お前を雇えば良いのか!俺の身の回りだけで良いんだろう・・・事務所じゃなくても俺がお前に小遣いやれば良いんだもんな』
『却下』
『なんでヒョンが反対するんだよー俺とミニョの問題だぞー』
ミナムを睨むテギョンは、目力で契約について語っていた。
『お前のスケジュールに振り回されるなんてごめんだ』
『だーかーら、俺とミニョのー』
睨み返すミナムもミニョ次第と過日の答えを目で語り、テギョンは面白くなさそうに顔を逸らした。
『俺も反対だー、これ以上ミニョと遊べなくなるの嫌だー』
『お前は、仕事が増えるのが嫌なんだろう。ドラマの仕事を断わられたって社長が嘆いてたぞ。まだまだ選べる立場じゃないんだから受けてやれ。それと、ミニョの家政婦の仕事は、事務所から給料貰えるように俺が社長に話をした』
ケーキを頬張った顔でシヌを見たミニョは、驚きながら礼を言おうとして顎を持たれ、ミナムによって口を閉ざされていた。
『微々たるものだろうけどね』
『今回の同行も社長から手当が出てる筈だぞ・・・旅費は全部事務所持ちだろう』
『あ、はいっ、何か沢山の書類にサインをしましたよ』
お茶を飲み干したテギョンが、ミニョにお替わりを要求しようと前に歩み出て来た時、シャッター音が連続で響いたのだった。