『ばっかじゃないのー、そんなの許される訳ないじゃない』
どこから聞いていたのかドタドタ階段を踏み鳴らして降りて来たユ・ヘイは、腕を組みテギョンの後ろに立っていた。
『俺もまだまだ許せないなー』
渋い顔をして見せるミナムは、テギョンではなくミニョに向かって膨れ、困り顔で俯いた顔を笑って近づき頭を撫でた。
『っお前等黙ってろっ!』
突然来訪した外野に歓迎ムード等勿論持たないテギョンは、スプーンから水滴をまき散らして立ち上がり、飛び上がったミナムとミニョの顔を曇らせた。
『あっんたねぇ、芸能人の結婚ナメすぎよっ!恋人いるってだけでどれだけのファンが離れたと思ってんのよっ同情されてても契約違反って大きな話題になるのよー』
リビングのソファに座り込んだヘイは、タオルをお互いに当て騒いでいるミナムとミニョに呆れ顔をしながらテレビのスイッチを入れた。
『お前に心配される事じゃぁない!それにっ俺の契約は、お前が考えてるモノより複雑だ!』
『ふーん・・・ま、なんでも良いけど、その分、ミナムのファンが増えるわね』
芸能ニュースを見ながら雑誌を拡げ、新聞まで広げてテギョンを得意気に見返した。
『お前のせいで減っただろうっ』
『恋人がわたしなの!そんな訳ないじゃない!むしろ私のファンもミナムのファンだって言ってくれ
てるわー!貴方達よりとーっても応援されてるのよ!』
妖精の顔と素の顔を使い分けテギョンにポーズを作って決めて見せるヘイにミナムが膝を着いて手を差し出した。
『お気楽な変人同士だからだっ』
ヘイをお姫様扱いして立ち上がったミナムは、着ているシャツの襟を直すパフォーマンスで、ヘイと腕を絡ませた。
『俺達付き合ってる訳じゃぁないからねー、俺の切なる片思いに同情されてるだけだもん』
『チッ戦略家がっ!』
『褒められたぜー』
『じゃぁ今日も素敵なデートネタを提供しに行きましょう』
ミナムとヘイが出て行ってしまうと途端に脱力したテギョンは、ミニョの顔を見て水を要求した。
『羨ましいか!?』
『へっ!?』
玄関の方を見つめていたミニョにテギョンが聞いた。
『ミナムとヘイだ』
『え、ああ、羨ましいというか・・・オッパ・・・楽しそうだなぁって・・・』
『あいつらお互いの立場を利用しているからな・・・ミナムの一方的な恋人宣言は、ヘイを一躍トップに押し戻したし、曖昧に受け止めてても実際、認めているのと変わらないというか・・・どっちのペンからも同情を買える様なデートの演出をしたり・・・撮られて困る事は無いとミナムがヘイを庇ったりしてるからな』
『庇う!?』
『庇っているというか戦略だな・・・あのふたりは、外で喧嘩をしてもあくまでミナムが片思いで、ヘイ
は、友人として憎からず思ってるが、でも、その枠から今のところ出る気が無いというスタンスだ・・・まぁ、ヘイの方に多少ミナムのファンから嫌がらせはあるみたいだけどな・・・』
そんな関係でも堂々と人前でデートをしているふたりは、世間からいっそ早く付き合ってしまえと言われている。
羨ましく無い訳が無いと決めつけるテギョンは、ミニョを見つめるが、気の無い返事は、更にテギョンを脱力させていたのだった。
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