『あ、はいっ、良いですよ・・・じゃぁ、後で・・・』
ミニョが、ミナムからの電話を切るや否や、乱暴に開いたドアに驚いたアン社長は、コーヒーを膝に数滴零して慌てていた。
ズカズカ入って来たテギョンは、テーブルを見て眉を寄せ、慌てる社長ときょとんとしているミニョを見て舌打ちをした。
『テッテギョン・・・何か用か・・・』
『用が無くちゃ来ちゃいけないのか!?』
そもそも、用が無ければ来ることの無いテギョンだからこその問いかけだが、首を傾げたアン社長は、タオルを膝に当てながらお前も座れとミニョの隣に促した。
『それは!?』
テーブルに拡げられた写真の数々をざっと見て、数枚を手にしたテギョンは、宣材写真の様に写されたミニョの写真に顔を顰めながら座った。
『ソヨンssiに頼んでた・・・お前達の写真集と一緒にミニョssiの・・・』
『こいつに仕事をさせる気かっ!』
説明の途中で少なくない怒気を孕んだテギョンにアン社長とミニョがぎょっとすると発言を悔やんだテギョンが、すかさず謝った。
『なっ、何か・・・あった・・・のか・・・』
『あ・・・ああ、いや・・・』
狼狽えるテギョンに怪訝な顔をしたアン社長は、話を続けても良いのかと聞き、ミニョを見たテギョンは、ソファに置かれたミニョの手を握った。
『いや、すまない・・・A.N.entertainmentのタレントにするつもりなのか!?』
『ああ、ミナムとしての仕事を見直させて貰った・・・短い期間だが、十分やっていけると思うんだ』
『素質はあるってことか!?』
『十分あるだろう!ミナムと入れ替わっていたなんて誰も気づいちゃいないぞ』
テーブルには、ミナムとして仕事をしていたミニョの写真が並んでいる。
それを見るテギョンは、ミニョの手を握り直した。
『あんたが認めるんならそれなりなんだろうけど・・・』
『だからな、今、ミニョssiに説明をしていたところだ!歌の上手さはお前が認めたくらいだから証明されているし、ミナムの妹だからな!ふたりでデュエットをしても良い!双子で、売り出すんだ!』
喜々として説明をしているアン社長のオーバーアクションを見つめ、考え込んだテギョンは、黙っているミニョを見た。
『お前・・・今日、帰って来るって言わなかったよな・・・』
『へっ!?』
明らかに話の筋が違って、きょとんとしたミニョは、テギョンの顔を見つめた。
『チッ!こいつに仕事をさせるかどうかは、俺が決めるっ!あんたの話は終わってるんだろう!連れてくぞっ!』
『えっ!?』
『あっ、おいっ!テギョン!!!』
握っていた手を強く引っ張ったテギョンに転がされる様に立ち上がったミニョは、アン社長の声も無
視してスーツケースを引いたテギョンに廊下に連れ出され、ズカズカ歩いて行くテギョンに引っ張られるまま、もたつく足を運んだ。
『ちょ、あっ、あのっ、ヒョ』
何度も声は、掛けるが、無視しているテギョンの考えている事等知らないミニョは、困り顔で、廊下の反対側に見えたミナムに安堵の笑みを浮かべると大声で呼んでいたのだった。
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