『ちょっと!ヒョン!何でミナムに当たるんだよっ』
『うるさいっ!お前は黙ってろっ!』
事情なんか知らない。
知らないが、怒っているテギョンを前にミナムを庇ったジェルミは、睨まれながら睨み返していた。
『ミナムが何したって言うんだよっ』
『何もしない事が問題なんだっ!』
『何だよそれっ!答えになってないっ!』
黙って聞いているミナムは、たった今録音を終えたばかりの楽曲を調整しているスタッフと目配せを交わしてから振り返った。
『ったく、うるせーなー!ミニョが帰っているかどうかなんて電話でもして直接聞けば良いだろう!なんでもかんでも俺に聞きに来る方が間違ってんだろっ』
『お前は知っていたんだろうがっ!』
『だから、さっきから、何の話なんだよ・・・ミニョなら、確かに会ったよ・・・今、事務所にいる』
『そっ!』
『帰って来たんでしょう!ね、どこ、どこにるのー』
テギョンが怒鳴る一歩手前で、ジェルミが、ミナムに顔を寄せた。
『ちっ!近いんだけどジェルミ・・・』
『あっ、ごめ・・・ん、ね、それより、やっぱりミニョいるんだよね、どこ、どこにいるのー』
押し返されつつも振り返るミナムの背中に抱きついたジェルミは、にこにこグイグイ近寄っている。
『あー、社長室の前で別れたから、今頃、アン社長に報告してるんじゃね!?』
『報告!?』
『仕事だって言っただろう!写真集の現地調査っ』
楽器の調整に意識を戻したミナムは、テギョンが渋い顔で出て行くのを横目に見ながらジェルミの顔を押しやり、ヒョンとスタッフを呼んで椅子に座った。
『これで、どう!?初めてだから判んないことだらけなんだけど・・・』
『ああ、初めてにしては上出来だ!お前、結構才能あるかもな』
『はは、俺って、器用だからねー、シングル出すの久しぶりだし!頑張って売るぞー!』
おどけるミナムに笑ったスタッフの終わりの一言に礼を言ったミナムが、ジェルミを促した。
『ったく、んだっよっ、ヒョン、何を怒ってんだ!?ミニョの事なら自分の方が詳しい癖にっ!』
『ミナムが、何か黙ってたって言ってたよねー。今日帰って来るの知らなかったんじゃないの!?』
『それなら、俺だって知らなかったぜ!さっき、ミニョに会ったのも偶然』
『ね、ね、ミナム、この後、予定無いんでしょう!ご飯行こうよ!ミニョも一緒にさ!』
『あん!?お前、もしかしてそれで俺の事捜してたの!?』
『そうだよー、ロビーでミニョもいるって聞いて来たんだもんっ』
はしゃぐジェルミを横目にテギョンの行先を慮ったミナムは、携帯を取り出し、ミニョに電話をかけ始めたのだった。
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