『ミニョ様・・・ですよね・・・本当に・・・』
全身を見回すセロムの視線に耐えられないと鏡越しに俯いたミニョは、ムスッとしていた。
『なっ、なによっ』
『いえ・・・馬子にもっった!たた、痛いですっ』
振り返り様ポカンと肩を叩かれたセロムがそこを抑えて摩りながらミニョを睨んでいた。
『馬子にもってなによー似合ってるでしょう!』
『ええ、ええ・・・似合ってます・・・けど・・・また・・・随分お淑やかに見えるもんですねー』
『ほっほ、ミニョ様は、お淑やかに見せるのだけは得意ですからね』
『ばっ、ばぁやまでっ!どういう意味ー』
衣装箱を侍女に渡したばぁやに向かってぴょんぴょん飛び跳ねたミニョは、眉間を寄せられてシュンとなり、丸めた背中で後ろに下がって長椅子に腰を下ろした。
『いつもいつもそうしていて下されば良いものを・・・』
座ってるだけなら美しい居住まいだ。
そのまま、絵に収めて眺めていたい。
テギョンがそう唸るのも尤もだ。
ほうぅと零れる侍女達の溜息にミニョは、また剥れていた。
『だって、だって・・・剣を握ってたら結婚してくれないっていうんだものぉ』
口さえ開かなければな。
『結婚したいって仰ったのがミニョ様ならば致し方ないでしょう』
『うっ・・・』
『そうですよぉ!ミニョ様大人しくしてないと嫌われちゃいますよー』
『なっ・・・そっ、そんなことないっ、もんっ・・・』
揶揄うセロムの言葉にクスクス笑う侍女達、その中で、ミニョは、むっつりしていた。
★★★★★☆☆☆★★★★★
『結婚は、認めてやろう・・・というよりこれが、お前達の運命なのだろう・・・』
ジェヒョンの言葉に何も返さないテギョンは、ただ、続く言葉を聞いていた。
『わたしがあの扉の存在を知ったのは、ミナムがあそこを開けたからだ・・・元来、墓地は、祭事の要であり、この城では、王がそれを司る。ミナムが生まれて間もなく、跡継ぎの儀礼としてあれひとりを連れて墓地に入った。すると奥の間に入った時に不思議な事が起きた。抱いている筈のミナムの重みを全く感じられなくなったのだ・・・腕の中に居る・・・私が抱いている・・・何度も確認した。しかし、重みを感じない。何が起きているのか考えたよ。そうしたら、突然、ミナムが喋ったんだ。有り得る訳が無い。まだ生まれたての赤ん坊だ。喋るどころか、泣いているだけの赤子だ。しかし、「壁」という言葉を聞いた。それで、ミナムを抱いたまま通路に戻ると壁に手を伸ばしたあの子の前で小さな扉が開いた。最初は、先祖の残した隠し部屋だろうぐらいに思っていたさ・・・しかし、そこにあった絵姿は、奥の間にある絵姿にどれも酷似していた。しかし、時代が全て異なっている。訳が判らず、そこを閉めてしまったが、再び開くことは出来なかった。それで、わたしは、この城の歴史を調べ始めたんだ・・・』
そう言って、胸に手を当てたジェヒョンは、衣の合わせから一枚の布を取り出しテギョンに渡した。
『これが、多分、その答えだろう・・・そこに書かれている事が真実か否か、それを確かめる術は無い。だが、君が現れた。シヌがこの城にやって来た時、いや、招いたのは私だ・・・ならば、既に運命に呑まれていた事になる。いや、いや、もっと前か・・・双子の片割れにミニョと名付けた時に運命が決まったのだ・・・』
布に書かれた文字を見つめるテギョンの手が、震えた。
握り締める手の甲に血管を浮き立たせ、強く強く握り締め、噛み締めていた。
『こ・・・れは・・・こ、れ、では・・・巻き込まれる人々は、どう・・・な・・・』
張り付いた喉が、水分を求めて鳴った。
『さぁ・・・そこまでは、書かれていないのが難点だな』
『こっ・・・んな事っ許される訳がな・・・いっ・・・』
掠れた声が、傷みと共に響き、テギョンの驚愕が、怖れを見せつける。
『許す、許さぬの問題でも無い・・・それが、希望的観測であったとしてもその通りに進んでいる』
『なっ・・・貴方はっ!これを・・・受け入れると言うのかっ!』
潤いを満たした喉が、低い声に怒気を含んで響き渡った。
真っ直ぐにテギョンを見返したジェヒョンは、ゆっくり頷き、そして笑っていたのだった。
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