『あっ、こっ、これ、ソヨンssiから預かって来ましたっ!』
社長室に招かれるなり、持っていた資料を差し出して、早く帰りたいという態度をありあり見せるミニョをクスリと笑ったアン社長は電話を掛け始め、スタッフにコーヒーをふたつ持ってくるように伝えるとミニョに向き直ってソファを指差した。
戸惑ったミニョは、ソファを見つめて暫く立ち尽くしていたが、ノックの音とトレイを持って入って来た女性スタッフの微笑みに慌てて頭を下げ、オズオズソファに足を向け、やっと腰を下ろしている。
『ありがとう。ああ、あと、○○店のプリンケーキがあっただろう!?あれも持って来てくれ』
『畏(かしこ)まりました』
小さく畏(かしこ)まって俯いているミニョのピクリとした反応を見逃していないアン社長は、口元を緩めて引き締め、テーブルに置かれた資料に腕を伸ばした。
『こうやって会うのは三回・・・いや・・・四回目かな・・・』
口を開くアン社長にキョロキョロ視線を泳がせたミニョは、小さな返事を返し更に縮こまった。
『そんなに緊張しないで欲しいな!俺と君の中だろう!?』
『へっ!?』
顔をあげたミニョをまじまじ見つめたアン社長は、脚を組み直して資料に目を落とし、バッチリあってしまった目に動揺しているミニョは、挙動不審にソファを後退った。
『ふーん・・・やっぱりミナムに良く似てる・・・』
『えっ!?えっと・・・あっ、あの、その、え、な、なんというか・・・えと・・・その、すっ、すみませんっ』
畏(おそ)れを抱いて、改まったミニョは、ガバッと勢いよく頭を下げ、テーブルが揺れた。
『あっ痛っ・・・』
ガチャンとティーカップが派手な音を立て、零れたコーヒーを見て慌てたミニョは、ケーキを持って戻って来た女性に涙目を向けた。
『だっ・・・』
『オー、大丈夫かいっ!?』
状況を一瞬で把握した女性が慌ててミニョの抑えた頭を確認し、ハンカチを出して涙を拭き、アン社長をじっとり眺めている。
『ん!?何だ!?その目・・・私は何も・・・』
『社長・・・泣かせたら、増々お仕事引き受けていただけないでしょう!?』
『えっ!?』
『あ!?いや、まぁ・・・それは・・・な・・・』
ミニョにまだ話していない事。
ミニョがまだ聞かされていない事。
テーブルを片付けた女性が、コーヒーを入れ直してくると去っていくといたたまれない表情のアン社長は、きょとんとしているミニョを見て髪を掻き毟り、再び資料を拡げて座った。
『ソヨンssiに写真をお願いしていてね・・・まぁ、これは、テギョンから経緯を聞いたからと・・・コ・ミナムとしての仕事を見直したからお願いするんだけどね・・・』
『えっ!?えっ!?えっ!?えっ!?』
挙動不審なミニョの前にテーブルの下から取り出したファイルを拡げたアン社長は、ソヨンのファイルに挟まれたミニョの写真とコ・ミナムとして入れ替わっていたミニョの写真を並べて見せたのだった。
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