それは、絵本のお話。
絵本の中の王子様は、お姫様に許可して貰ったのかというお話から。
「許可がなくてもキスしたら起きるー!?」
「・・・眠り姫なら・・・・・・起きるんじゃないか」
「ふーん・・・じゃぁ、いってくる―」
トタトタと絵本を抱えて階段を駆け上がったリンにレコード盤を手にしたテギョンは、ヘッドホンを首から持ち上げてバッと両目を見開いた。
「え、おいっ、行くって、おまっ・・・」
振り返った瞬間、差し込みプラグに体を戻され、大きな舌打ちをしている。
「おいっ!!リン!ちょっと、待て!!!」
階段の一番上にいるリンは、テギョンの声に振り返り、舌を出して駆けだした。
「オンマー、キスしたら起きるってー」
リビングの窓辺に寝転がるミニョに絵本を差し出したリンは、隣に腰を下ろしている。
「そうですねー、アッパが言うなら間違いないでしょう」
「オンマもキスしたら起きるー!?」
膝の上で絵本を拡げるリンにコテンと首を傾けたミニョは、唇に人差し指を充てた。
「さぁ・・・試してみますか!?」
俯いたリンを見上げているミニョに頷いた顔が、にっこり笑って両腕を伸ばしている。
「やめーろー!!!!」
「やめなーい」
チュッと軽い音を立ててミニョの両頬を包み込んで唇にキスをしたリンに一歩遅れたテギョンがその襟首を引っ張った。
「痛ーい!」
「おっ、おま、お前っ!何をしてるんだっ!」
「オッパ!何をするのですかぁ」
襟首を掴まれて宙に浮いているリンは、バタバタと両脚を動かし、ミニョは、リンの脚を捉まえている。
「お前!眠り姫とミニョにキスをするのは何の関係も無いだろう!」
床を一睨みしたテギョンは、リンを抱え直して、ミニョの前に座った。
「オンマが許可してくれたもん!アッパの許可なんていらないもん!」
「なんだとー!」
「ちょ、オッパ!リンも!」
テギョンと真っ直ぐ睨みあっているリンが、ゆっくり口角をあげている。
「アッパが勝手に勘違いしたんだもん」
「なっ・・・・・・・・・・・・・・・」
「あっ・・・・・・・・・・・・・・・」
テギョンの両頬を包み込んだリンが、尖った唇に軽いキスをした。
「オンマとアッパからの許可はいらないでしょうー」
テギョンが絶句してる間にミニョの膝の上に座ったリンがにっこり微笑んでいたとある日の午後の出来事だった。