黒い塊を抱えてミニョを見上げたリンは、真一文字に結んでいた唇を前に突き出した。
「ダメっ！」
「嫌っ！欲しいっ！」
塊を見た視線を瞳だけ動かして見つめ睫毛の下を潤ませている。
「駄目ですっ！ファン・テギョンですよ！」
慌ててしゃがみ込んだミニョは、リンの顔を覗きこんだ。
「そんなの解ってるもんっ！」
指先を眦に充て、零れそうで零れない雫に首を傾げている。
「・・・許可・・・して・・・くれる訳ないじゃないですかぁ・・・」
リンの目頭から目尻を一撫でしたミニョの前で、口角がゆっくりあがった。
「一緒にお願いしてっ」
ニィと笑ったリンにミニョの頬が膨らんで、直に窄まった。
「ぅっ・・・それは・・・とても・・・無、理・・・で・・す」
両肩を掴んでグッタリ項垂れたミニョは、リンが抱えている塊に手を伸ばしている。
「ジェルミは飼ってるもーん」
「ジェルミは確かに飼っています・・・でも、ジョリーは、もう大分老犬ですし・・・外で飼っているでしょう・・・こ、れ・・・どこで飼うのですかぁ！？」
さわさわ触れているミニョにビクリと震えた塊が顔をあげ長い耳を揺らした。
「このまま飼う！」
「無理です」
「オンマの意地悪っ！」
ミニョの顔を見つめてゆっくりひとつ瞬きをした黒い塊が、リンの腕に潜り込んでいる。
「意地悪じゃないですよぉ、オッパが帰って来なくなったら困ります」
笑おうとして口角をあげたミニョは、リンの顔を凝視した。
「・・・・・・ぁ」
「ふーん・・・僕よりアッパが大事だもんねー」
口を抑えたミニョにくるんと踵を返したリンは、門扉へ駆け出している。
「あ、ちょっとリンっ！！！」
「今日は、いえでするねー！あんにょーん」
「へ！？わー、ちょっとー、在り得ませんからー」
リンに腕を伸ばしたミニョは、ロングスカートに脚をとられて前のめりに転び、背中で手を振っているリンは、門扉に寄りかかったジュンシンに声をかけた。
「ジョノヒョーン！行こー」
「許可、貰えたのかぁ！？」
立ち上がって膝を叩いているミニョを指差したジュンシンと手を繋いだリンは、ミニョに大きく手を振っている。
「うぅん！やっぱり駄目だった！ね、今日は泊まって良い！？」
「お、マジ！じゃぁ、一緒にカラオケしようぜー！ユンギの部屋にさぁ・・・」
頬に手を充てたミニョは、手を振るリンとジュンシンに苦い笑いを零して手を振り返し、ガックリ首を曲げ、両手の指を組んで太陽を見上げた。
「ああ、オッパ・・・わたし・・・どう伝えれば良かったのでしょうか」
「今ので正解だろう」
玄関と垂直に立つミニョに声がかけられ、横を向いたミニョは、瞬きを繰り返している。
「オッパ！いっつお帰りに！？」
「今・・・・・・面白そうだったから見学してた」
「は！？何で、止めてくれないのですかぁ！」
ミニョの前を通り抜けるテギョンは、玄関の扉を開け、膨れてテギョンを追いかけたミニョは、靴を脱いでいるテギョンの後ろで、玄関の扉を閉めた。
「あ！？だって、お前、あれを飼えって話だろう！？無理という以前にあれを俺の前に持ってこようとすること自体在り得ないっ！！！！」
後を付いて廊下を歩くミニョは、玄関脇のクローゼットに入るテギョンに首を傾げている。
「オッパだって昔は飼っていたでしょう！？」
「俺が飼ってた訳じゃぁない」
奥へ奥へ入っていくテギョンは、鞄を一つ持って戻って来た。
「ほら！」
「何ですか！？」
ミニョのお腹に鞄を押し付けている。
「リンのお泊り道具一式だ！届けて来いよ」
「あ・・・家出するって・・・言ってました・・・ね・・・」
「家出ってお前・・・たかだか数百メーター先だぞ・・・お泊りだろう」
ニヤリと頬を上げたテギョンは、またミニョの前を通り、リビングに向かった。
「うーん・・・ミナムオッパも昔良くやっていましたよぉ・・・院長様と喧嘩して・・・
まぁ、大体オッパが悪いんですけど・・・お友達の家に泊まってましたぁ・・・」
「ミナムと似てるってか・・・ふ、ん、ミナムの入れ知恵かもな・・・」
鞄を抱えたミニョは、とことこテギョンの後ろを付いて歩き、ソファにジャケットを放り投げたテギョンの背中を見つめながら、携帯を取り出している。
「はは、まぁ・・・ユンギssiにも連絡を入れておきます」
「ああ、まぁ、ジュノも遊び相手がいないから、丁度良いと思われてるみたいだな・・・」
「お忙しいのですか！？」
「あ！？」
鞄を床に置いたミニョは、携帯の操作をしながらダイニングで水を出したテギョンを見た。
「ユンギssi・・・です・・・お仕事の他にオッパのお手伝いも・・・」
「っ！言葉に気を付けろよ、コ・ミニョ！」
眉間を寄せたテギョンは、タオルで手を拭きながらミニョの前に立っている。
「俺が！あいつに巻き込まれてるんだ！俺の大変さが解るか！」
「解っりたいと思います・・・・・・」
眉間に指をあてがわれ肩を竦めるミニョは、素早く何度も頷いた。
「・・・・・・い、や、すまない・・・お前も大変だったな・・・」
ミニョの表情に唇を尖らせ動かしたテギョンは、くるんと瞳を回して横を向いている。
「ね、オッパ！何か食べたいものないですか！？」
「は！？」
「うん！こういう時は、美味しいものを食べるのが一番です！ジェルミと良く行きました！」
舌打ちをしたテギョンの腕を掴んだミニョは、にっこり微笑んで頷き、独り言ちて見上げた。
「落ち込こんだ時の話だろう・・・色気より食い気だもんなぁ・・・」
ミニョに掴まれた腕に手のひらを被せたテギョンは、掴んだ手を引いている。
「なっ、何をするのですかぁ」
「いや、もう少し・・・かなぁ・・・」
引き寄せたテギョンの胸に埋まるミニョは、背中に触れた手に身を捩った。
「オッパだって、わたしの事を言えないんですからぁ！」
「俺のどこが！」
テギョンの背中に回った手のひらも動き回り、肩甲骨で止まった。
「シヌオッパ・・・素敵でしたよ」
「おっ前・・・性質が悪いぞ」
さわさわと肩甲骨を這い回った掌に身を捩るテギョンは、ミニョの肩を掴んで引き離し、ニンマリ笑うミニョがテギョンを見上げている。
「美味しい物を食べますかぁ！？」
「食わせてやるよっ・・・何が食いたいんだ！？」
ミニョの額を小突いたテギョンは、眉間を抑える身体をひっくり返し、背中から抱きしめた。
「オッパは！？」
「俺の食いたいものは、お前の腹を満たしてから・・・だな」
「わっ、わたしを食べても美味しくないですよぉ」
「美味いかどうかは俺が決めることだ」
抱きしめたまま、ミニョのお腹を覗き込み、頬にキスをしたテギョンは、足に当たった鞄に目を細めている。
「早く行って来い！どうせリンは、ユンギのオモニに美味いもん食わせて貰うんだろう！？今夜は二人っきりなんだから思いっきりお洒落をして出かけるぞ！」
手を離して鞄をまたミニョのお腹に押し付けたテギョンは、携帯を取り出した。
「早く行って来い・・・ユンギには、連絡をしておく・・・」
ミニョの肩を抱いて廊下に送り出したテギョンは、携帯を耳にあてた。
「ここのところ多いですよねー・・・あーあ、リンがくっついてた頃が懐かし・・・」
「俺はくっついてない方が良いけどな、お望みならもう一・・・」
玄関で靴を履いたミニョは、振り返ったテギョンの話し込む背中に笑顔を向け外に出て、ユンギと連絡を終えたテギョンは、携帯を口に充てて振り返り、ミニョの出て行った玄関を見つめていたのだった。
「あーあ、白くて、ほんのり桜色の肉が早く食いたいなぁ」
★★★★★☆☆☆★★★★★★★★★★☆☆☆★★★★★★★★★★☆☆☆★★★★★
あんにょん(^^)/おれんまにえよー(^^♪
今日は、うさぎとリンの家出のお話でした(＾◇＾)
居場所の判る家出人元祖はやっぱりテギョン(^^)
指を噛まれてるから犬は良くてもうさぎはあり得ない(^^♪
隣にテジトッキという生き物もいることだし(^_-)-☆
と考えて作った一本です。
楽しんで頂けましたか（笑）
最後の一言『要るのか』のか『要らない』のか考え、
やっぱり『要る』！という結論になりましたが(^^;
皆様はどちらでしたか！？
(＾～＾)
週末は、『キレイな男夏祭り～Love is Beautiful～［LIVE＆EXPO』ですね(^^)/雨らしいけど(^▽^;)
梅雨も明けず、TEAMHmv土砂降り、雨男健在（笑）
土砂降り雨の運転は真剣に！その眼力がやっぱり好きなすずらんでした(^^♪
日本語Vrお借りしてます!(^^)!
(≧▽≦)またね