★★★★★☆☆☆★★★★★
「ただいま」
チャイムを鳴らして玄関を開けたにも関わらず、いつもの様な出迎えが無い事に首を傾げたテギョンは、その場で腕を組んで暫く待っていた。
「どうしたんだ!?」
いつもなら、玄関までは、来なくともリビングの扉が開いて、ミニョかリンが、顔を出す。
しかし、この日は、どちらも出て来なかった。
不思議に思いながらも靴を脱ぎ、廊下を歩き始めたテギョンは、いつの間にか大股で、ガラス張りの扉の前で中を覗き込むとソファに座るミニョとその横で、ソファに立ち上がっているリンが見えた。
「居るじゃないか・・・」
ノブに手を掛け、そっと開けると啜り泣きがテギョンの耳に入ってきた。
「・・・っす・・・ぐずっ・・・っ」
「オンマー、だいじょうぶぅ・・・」
ミニョの顔にタオルを当てるリンが、心配そうに顔を覗き、拭いていた。
「オンマー・・・」
「ふぇ・・・ぇっ・・・ッずっ・・・す」
既にグズグズの顔は、目を腫らし、鼻も真っ赤だ。
「グスっ・・・だ・・・だい・・・じょう・・・っっ」
啜りあげながらもリンにい向かって笑顔を作っていた。
「なっ・・・何があったんだ!?」
怪訝な顔で、恐る恐る近づいてくるテギョンに背中を向けていたリンが、驚いて小さく飛び跳ねた。
「アッ!アッパ!!!」
大きく見開かれた目を無視したテギョンは、リンからタオルを奪って、ミニョの隣に座った。
「どうしたんだ!?」
真っ赤に腫れるミニョの目元に優しくタオルを押し付け、顔を包み込む様に手を添えている。
「・・・っす・・・ぐす・・・」
まだ啜り上げているミニョから事情は、聞けないと判断したテギョンは、リンを見た。
「何をした!?」
首を傾げるリンは、暫く考えてソファから飛び降りるとトコトコテレビに近づき、映像デッキに手を伸ばしてパッケージを取り出した。
「コレ、見てたー」
テギョンに見える様に翳している。
「!?・・・ホラー物か!?」
「うん!」
明るいリンの答えに溜息を吐くテギョンは、ミニョに向き直って顔に添えた手で上向かせた。
「おっ前・・・苦手な癖に何で、そんなもの・・・」
呆れ口調でミニョを覗き込めば、落ち着いてきたミニョが、口を開いた。
「やっ・・・そのリンも居るし大丈夫かなぁ・・・と思ったんですけど・・・」
「オンマねー、ずーっと僕をギューってしてたの!」
戻ってきたリンが、テギョンの前でそう言って、再びソファをよじ登った。
「オンマ怖かった!?」
リンの手を探ったミニョが、両手を握りこんだ。
「リンは!?」
「僕はねー、追いかけられるところが怖かったのー!」
「そう・・・オンマはね最後の処かな・・・」
タオルを当てられたままミニョが感想を漏らしているとテギョンが、心底呆れたという風に溜息を吐いた。
「お前なぁ!こんなになるまで泣くくらいなら、そんなもの見るな!!」
タオルの上の手が、ミニョの目元を強く抑えている。
「やっ、オッパ、もう少し優しく・・・」
ミニョの抗議に弱める気配もなく、ぐりぐり押さえつける手が怒りを表した。
「ふざけるな!お前もお前だ!」
巻き添えにされるリンもテギョンに睨まれている。
「だってー!」
「「面白い」」
「もーん」
「です」
重なった声にミニョもリンもクスクス笑い出し、テギョンの手に触れたミニョが、その手を剥がす様に外してテギョンの顔を見た。
「はは、オッパ、すみません」
タオルを手にテギョンに笑いかけるが、目はまだ腫れて赤いままだ。
「・・・・・・・・・たぬきだな!」
ミニョの顔をじっと見たテギョンが、真顔でそう言うとリンが、ミニョの顔を覗いて両手をあげた。
「オンマたぬきー」
「えっ、な・・・な・・・」
目元に手を当て、慌てて立ち上がったミニョは、鏡の前に走り、目尻を伸ばしながらがっかりした顔で覗き込んでいる。
「・・・本当ですね・・・」
ソファの背凭れに肘を置いて後ろを向いたテギョンが、クスクス笑った。
「もっと、冷やすんだな」
ダイニングを指し示され黙ったままのミニョは、冷蔵庫へ向かって、テギョンの隣でソファに顎を乗せているリンは、背中から抱き上げられテギョンの膝に乗せられた。
「どっちが見ようと言いだしたんだ!?」
「オンマ!」
「ふっ、やっぱりな」
リンの頭に手を置いてダイニングを振り返るテギョンは、氷とボールを出してタオルを浸しているミニョを見た。
「おいっ!コレって続きがあるんじゃないか!?」
パッケージを手に取るテギョンは、それを見ながらミニョに声を掛けた。
「ええ、あと3本ほどありますよ!」
絞ったタオルを目に当てながら答えるミニョに嬉しそうな顔をしたテギョンは、リンを横に下ろして小さな声で聞いた。
「続き見たいか!?」
遅い時間帯で、いつもなら早く寝ろというテギョンの顔をまじまじ見つめるリンは、コクンと頷いた。
「いいの!?」
「ああ、良いぞ」
リンの頭を撫でながら頷き返した。
「おい、ミニョ!それを持って来い」
タオルを浸しているボールを指したテギョンに片目だけできょとんとしたミニョは、目元を冷やしながらリビングへ戻ってきた。
「続きを見るぞ!」
「えっ!?」
いそいそDVDをデッキにセットしたテギョンは、立っているミニョの腕を引いて膝に乗せ、リンに向き直ってニヤリと笑った。
「暗くしてこい」
ドア付近の照明スイッチを押しにリンが走り出した。
「オッパ!?何を」
冷やして大分腫れも引いた顔で、ミニョが不安そうに瞳を揺らした。
「もう一回たぬきにしてやるぞ!」
冷たいタオルをミニョから奪ったテギョンは、クスクス笑いながらボールに放り込み、戻ってきたリンが隣に座るのを確認するとリモコンを操作した。
「ギューっとしたんだろう!?」
ミニョの耳元にテギョンの口が寄せられた。
「今度は、俺にしろ」
「そっ・・・」
リンに聞こえない囁きは、始まったオープニングで、既に首に回されていた腕が、きつくきつく巻き付き、まるで暗がりの映画館の様にテギョンの思惑通りになっていたとある日の出来事だった。
「ただいま」
チャイムを鳴らして玄関を開けたにも関わらず、いつもの様な出迎えが無い事に首を傾げたテギョンは、その場で腕を組んで暫く待っていた。
「どうしたんだ!?」
いつもなら、玄関までは、来なくともリビングの扉が開いて、ミニョかリンが、顔を出す。
しかし、この日は、どちらも出て来なかった。
不思議に思いながらも靴を脱ぎ、廊下を歩き始めたテギョンは、いつの間にか大股で、ガラス張りの扉の前で中を覗き込むとソファに座るミニョとその横で、ソファに立ち上がっているリンが見えた。
「居るじゃないか・・・」
ノブに手を掛け、そっと開けると啜り泣きがテギョンの耳に入ってきた。
「・・・っす・・・ぐずっ・・・っ」
「オンマー、だいじょうぶぅ・・・」
ミニョの顔にタオルを当てるリンが、心配そうに顔を覗き、拭いていた。
「オンマー・・・」
「ふぇ・・・ぇっ・・・ッずっ・・・す」
既にグズグズの顔は、目を腫らし、鼻も真っ赤だ。
「グスっ・・・だ・・・だい・・・じょう・・・っっ」
啜りあげながらもリンにい向かって笑顔を作っていた。
「なっ・・・何があったんだ!?」
怪訝な顔で、恐る恐る近づいてくるテギョンに背中を向けていたリンが、驚いて小さく飛び跳ねた。
「アッ!アッパ!!!」
大きく見開かれた目を無視したテギョンは、リンからタオルを奪って、ミニョの隣に座った。
「どうしたんだ!?」
真っ赤に腫れるミニョの目元に優しくタオルを押し付け、顔を包み込む様に手を添えている。
「・・・っす・・・ぐす・・・」
まだ啜り上げているミニョから事情は、聞けないと判断したテギョンは、リンを見た。
「何をした!?」
首を傾げるリンは、暫く考えてソファから飛び降りるとトコトコテレビに近づき、映像デッキに手を伸ばしてパッケージを取り出した。
「コレ、見てたー」
テギョンに見える様に翳している。
「!?・・・ホラー物か!?」
「うん!」
明るいリンの答えに溜息を吐くテギョンは、ミニョに向き直って顔に添えた手で上向かせた。
「おっ前・・・苦手な癖に何で、そんなもの・・・」
呆れ口調でミニョを覗き込めば、落ち着いてきたミニョが、口を開いた。
「やっ・・・そのリンも居るし大丈夫かなぁ・・・と思ったんですけど・・・」
「オンマねー、ずーっと僕をギューってしてたの!」
戻ってきたリンが、テギョンの前でそう言って、再びソファをよじ登った。
「オンマ怖かった!?」
リンの手を探ったミニョが、両手を握りこんだ。
「リンは!?」
「僕はねー、追いかけられるところが怖かったのー!」
「そう・・・オンマはね最後の処かな・・・」
タオルを当てられたままミニョが感想を漏らしているとテギョンが、心底呆れたという風に溜息を吐いた。
「お前なぁ!こんなになるまで泣くくらいなら、そんなもの見るな!!」
タオルの上の手が、ミニョの目元を強く抑えている。
「やっ、オッパ、もう少し優しく・・・」
ミニョの抗議に弱める気配もなく、ぐりぐり押さえつける手が怒りを表した。
「ふざけるな!お前もお前だ!」
巻き添えにされるリンもテギョンに睨まれている。
「だってー!」
「「面白い」」
「もーん」
「です」
重なった声にミニョもリンもクスクス笑い出し、テギョンの手に触れたミニョが、その手を剥がす様に外してテギョンの顔を見た。
「はは、オッパ、すみません」
タオルを手にテギョンに笑いかけるが、目はまだ腫れて赤いままだ。
「・・・・・・・・・たぬきだな!」
ミニョの顔をじっと見たテギョンが、真顔でそう言うとリンが、ミニョの顔を覗いて両手をあげた。
「オンマたぬきー」
「えっ、な・・・な・・・」
目元に手を当て、慌てて立ち上がったミニョは、鏡の前に走り、目尻を伸ばしながらがっかりした顔で覗き込んでいる。
「・・・本当ですね・・・」
ソファの背凭れに肘を置いて後ろを向いたテギョンが、クスクス笑った。
「もっと、冷やすんだな」
ダイニングを指し示され黙ったままのミニョは、冷蔵庫へ向かって、テギョンの隣でソファに顎を乗せているリンは、背中から抱き上げられテギョンの膝に乗せられた。
「どっちが見ようと言いだしたんだ!?」
「オンマ!」
「ふっ、やっぱりな」
リンの頭に手を置いてダイニングを振り返るテギョンは、氷とボールを出してタオルを浸しているミニョを見た。
「おいっ!コレって続きがあるんじゃないか!?」
パッケージを手に取るテギョンは、それを見ながらミニョに声を掛けた。
「ええ、あと3本ほどありますよ!」
絞ったタオルを目に当てながら答えるミニョに嬉しそうな顔をしたテギョンは、リンを横に下ろして小さな声で聞いた。
「続き見たいか!?」
遅い時間帯で、いつもなら早く寝ろというテギョンの顔をまじまじ見つめるリンは、コクンと頷いた。
「いいの!?」
「ああ、良いぞ」
リンの頭を撫でながら頷き返した。
「おい、ミニョ!それを持って来い」
タオルを浸しているボールを指したテギョンに片目だけできょとんとしたミニョは、目元を冷やしながらリビングへ戻ってきた。
「続きを見るぞ!」
「えっ!?」
いそいそDVDをデッキにセットしたテギョンは、立っているミニョの腕を引いて膝に乗せ、リンに向き直ってニヤリと笑った。
「暗くしてこい」
ドア付近の照明スイッチを押しにリンが走り出した。
「オッパ!?何を」
冷やして大分腫れも引いた顔で、ミニョが不安そうに瞳を揺らした。
「もう一回たぬきにしてやるぞ!」
冷たいタオルをミニョから奪ったテギョンは、クスクス笑いながらボールに放り込み、戻ってきたリンが隣に座るのを確認するとリモコンを操作した。
「ギューっとしたんだろう!?」
ミニョの耳元にテギョンの口が寄せられた。
「今度は、俺にしろ」
「そっ・・・」
リンに聞こえない囁きは、始まったオープニングで、既に首に回されていた腕が、きつくきつく巻き付き、まるで暗がりの映画館の様にテギョンの思惑通りになっていたとある日の出来事だった。