迷っている事実を認められないのは、良くある事で、迷った末に行動も起こせず、知らずそれが新たな迷いを生むものだ。
盲人の知恵とはよく言ったものであの女に再会したのは、まさにまたそんな時だった。
「また、考え込んでいるの!?」
変わらず、民族衣装を身に纏って、杖も突かず、まるで見えている様に歩くその様は、そのガラスの瞳を覗き込まなければ、その閉じた目が開かれなければ、常人のそれと遜色が無い。
「ふ、今度は、何が見えるんです!?」
自嘲的に警戒を見せて笑ってみてもこの女相手にそれが通用しないのは、確認済だった。
「座っても良いかしら!?」
局の廊下で、どこかの番組のスタッフ達が右往左往する中で、俺は、またその女の見えない目と視線を合わせた。
「前の様な感じはしないわ。あの頃の悩みは、解消できたのでしょう!?今は、もっと穏やかに感じるけど・・・」
伸びてきた腕に胸に当たる手に不思議と嫌な感がしないのは、ミニョ以外ではこの女位だ。
「ふぅん・・・光が三つになっているわね・・・随分会わない間に子供が出来たのね」
「ええ、生意気な、子供がいます・・・よ」
「ふふ、でもそれって貴男に似ているみたい・・・」
そうですかと少し嬉しくなって、女が微笑むのを見れば、触れていた手が離れていった。
「随分と・・・」
「随分と!?」
「いえ、そう、ね、随分と強情なのは奥様に似ている事・・・」
「あいつも未だに生意気ですからね・・・」
「その奥様は、賛成なのね」
言い当てられるのは慣れないもので、そういう女だと解っていても心臓がドキリとした。
「ええ、だから困っているんです。あいつは、もっと反対すると思っていた・・・のに・・・」
「貴方が手離せないのね」
「ええ、若者の多聞は、必要だと思い知っていますけど・・・後一年くらいは・・・」
「その一年で大きく運命が変わるわよ」
狭い廊下の壁に向かった小さな小さな声は、大きく響き返すけれど、実はそれが、俺の身体を駆け巡り縛られた様な不思議な感覚に捕らわれるのは、あの時と同じだった。
「ふ、俺がそれを信じないのを知っているでしょう」
「そう、そうね、そうだったわ・・・なら、奥様に伝えようかしら・・・」
ミニョの名が出てハッとした。
「そういえば、あの時、ミニョに何を言ったんです!?」
「大したことは言ってない・・・でも、そうね。私は、私を必要としている人の前にしか現れないわ。テレビの向こう側で私の話を聞いている人達は勿論大勢いるし、私に会いたいと思ってくれる人も大勢いるけど、その人達にとって私は、普段日常で接している周辺の人達と同じなのよ。助言なんて、誰もが無意識にしているのに誰もがそれに気付かないだけで、私の様な人間が言う言葉を真実だと受け止める・・・」
「悪い事ですか!?」
「いいえ、そうは、思わない。けれど、それが全てだと思う事はとても危険な事ね」
「俺の様な人間もいるでしょう」
「勿論そうだわ。貴方は、貴方を誰より信じていて、自分が正しいと思っているでしょう!?」
「ふ、俺は、随分傲慢な男なんですね」
「違いないわ。貴方は、貴方の運命を自分で切り開ける者。悲しみを原動力に闘う者。その炎は、決して消えることの無い物」
「間違っているとは思っていません。今も昔も」
「それで良いと思うわ。私が貴方の前に現れるのは、ただ、聞く為だけ。答えはそこ・・・」
ここと再び胸に手が触れていた。
そこを軽く押され、立ち上がった彼女のその目は、また廊下の向こうに注がれ、三度目は無いと嬉しそうに去って行った彼女の背中にそうかもしれないと思っていたとある日の出来事だった。
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あんにょん(^.^)
懐かしい人でしたのん(≧▽≦)
はじめましての人がかなり多いと思われるキャラクターでしが(^.^)
ちょっと書きたくなったんだけど題材重いのしか思い浮かばず(^^;
この人の特性活かして「悩むテギョンくん」にしてみた(笑)
勿論本編のどこかと繋がっているのでお時間ある人は捜してみてね(^^)/
パズルのピースを埋めているBlueMooNでした(≧▽≦)
またねー*****≫))))(/▽⦿)/.
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