ダイニングで朝食中のリンは、カップの淵に目だけを出していた。
「ふふふふーん、ふふん、ふふ、ふふーん」
鼻歌交じりのミニョが、背中を向けている。
「・・・ねー、オンマー」
「はーい!何ですかぁ!?」
呼んではみたものの振り返ったミニョにリンは首を振った。
「・・・っ何でも無い・・・」
「ぅうんー!?何でも無いのですかぁ!?」
首を捻るミニョに頷いて椅子から降りている。
「なーんでもなーい!アッパにするー」
「へっ!?」
駆け出したリンは、茫然とするミニョを振り返ってリビングの入り口で手を振った。
「アッパの方が良いみたーい」
「はふぇ!?何・・・」
お玉を口に咥えたミニョは、リンを見送り、リンは、階段を駆け下りている。
「アッパー」
勢いよく地下スタジオの扉を開けたリンが、テギョンの背中に飛びついた。
「っ!て・・・あぁあ・・・何だよ!?」
「ね、アッパ、オンマに何したの!?」
テギョンの首を絞めつけながらリンは頬を寄せている。
「はっぁ!?」
きょとんとリンを振り返ったテギョンがゆっくり立ち上がった。
「何って何だよ・・・何もしていないぞ!?」
レコード盤とCDを並べたステレオに触れたテギョンは、小さな丸椅子を引っ張り出している。
「えー、だーってー、今日のオンマ変だよー!?」
「・・・あいつが変なのはいつもだろう」
ぶらぶら背中で揺れるリンにお構いなしで、ヘッドホンを耳に充てた。
「えー、そうかなぁー、オンマ、アッパと居る時は、変だけど、僕と居る時は、変じゃないもーん」
「・・・どういう意味だよ・・・」
「ねー、オンマと何かしたでしょう!?」
「何も心当たりはなっ・・・がぐぉぇっ・・・」
リンの腕に喉を詰まらせたテギョンが、前屈みで派手に咽ている。
「無い筈ないもんっ!オンマっとっても嬉しそうだもんっ!アッパじゃなけりゃあんな顔しないもんっ」
ひとしきり、むせび終えたテギョンは、リンの脚を引っ張って抱き直した。
「っッチ・・・っ前っ・・・そ、焼きもちか・・・」
「オンマってば、とっても嬉しそうなのー!ねー、何したのー!?」
テギョンの顔を包み込んだリンがコツンと額をぶつけている。
「ぁあー、もしかしてあ、れか・・・」
「あれってなーにー!?」
「もうすぐ七夕だろう!?」
小さな手で顔を遊ばれるテギョンは、片目を閉じた。
「星を取ってやるって昔約束したことがあってな・・・」
口を開けたテギョンにリンは慌てて手を引っ込めている。
「アッパ取れるの!?」
「本物は取れないさ・・・けど・・・星が降る場所は知っているぞ」
勝ち誇った顔のテギョンにリンは膨れて見せた。
「昔、オンマとふたりで出掛けたんだ・・・七夕のコンサートが丁度その近くなんだよな・・・だから」
歩き始めたテギョンは、チョコンと顔を出したミニョに破顔している。
「リンも一緒に行くのですよ!」
「オンマっ!」
腕を伸ばしたミニョに抱かれたリンは、嬉しそうにキスをした。
「旅行は久しぶりでしょう!アッパと出掛けられるのも久しぶりです!それにキャンプ!したいのでしょう!?」
首を傾げるミニョと一緒に首を捻ったリンがテギョンを見ている。
「アッパは、ホテルじゃないとダメでしょう!?だから、ミナムとジェルミにお願いしたの・・・」
頷いたテギョンは、尖らせた唇を数回動かした。
「ったく、まず俺に聞け!お前等親子揃って俺を何だと思ってやがるんだっ!」
顔を見合わせたミニョとリンがテギョンを見ている。
「潔癖症・・・」
「夜盲症・・・」
「虫きらい・・・」
「田舎の夜も嫌い・・・」
再び顔を見合わせたミニョとリンの笑顔に俯いていたテギョンが拳を握って顔をあげた。
「お前等っ良ーい度胸だ・・・」
その場に正座しろと怒鳴るテギョンに背を向けたミニョは、一目散に階段を駆け上がり、後ろを振り返るリンは、大笑いをしながらミニョを応援し、縦皺をくっきり眉間に刻んだテギョンは、舌打ち交じりにふたりを追いかけていたとある朝の出来事だった。
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ミアネ。リアルバタバタなので(^-^;
七夕の他のお話しは、リク送っておいて下さいませm(__)m
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