「違うっ!!!」
「ずれたぞ、ジェルミ」
「ヒョーン、もう少しスローにしてー」
「走り過ぎだっ!」
「テンポあげてくれー」
ステージ上の真剣な攻防は、冷静沈着な中に怒号も混じり見ている子供達を怯えさせていた。
「こっえー・・・見た事ねぇ・・・」
「すっごい・・・ですね・・・」
「あんなのいつもだよー」
リンだけがにこにこ笑って見ている。
「アッパも怒ってるんじゃないから大丈夫ー」
ショルダーキーボードをどこからか引っ張り出してきて並べていた。
「何するんだリン!?」
駆け寄ったジュンシンが、一緒に引っ張っている。
「アッパ練習してろって言ったもん」
「そうだけど、良いのか!?ここで!?」
きょろきょろ辺りを見回したジュンシンは、ステージからそう遠くない隅を指摘した。
「だって、これ、持っていけないもん」
簡易式のドラムを指差すリンにユソンとジュンシンがゆっくり頷いている。
「確かに・・・」
「でもさ、ここで音鳴らしたら、怒られないか!?」
「う!?うーん・・・」
「誰かに運んでもらいますか!?」
キーボードとギターだけでもかなりの重量で、太鼓を見つめた三人は、首を傾げた。
「誰かっていってもなぁ・・・」
忙しく動き回っているスタッフもテギョン達の演奏を見ているだけのスタッフも仕事中である事は変わりなく、リハーサルを終えた子供達は、綺麗に無視されていた。
「モニター使っているんだから大丈夫じゃないですかね!?」
ステージを見上げるユソンは、ミナムの足元を見ている。
「どうなんだろう!?聞いたこと無い・・・」
リンもユソンの隣に並びミナムの真似をして見せた。
「モニターって何だ!?」
「・・・・・・あっ、そうか、ジュノは、知らないんだ・・・」
リンとユソンの間に立ったジュンシンがきょときょと左右を見ている。
「あれー、そういえば、アッパ、それ、何にもおしえてくれなかったよー」
「つけてますよね」
「つけてるよー」
キーボードの前に座り込んだリンは、イヤホンを取り出して引っ張った。
「僕たち、つけろって言われなかったですね・・・」
「いわれてなーい!絶対、聞こえなくなるのにー」
「今は、お客さんもいないから、それ程、問題なかったですけど・・・」
「本番できるかなぁ!?」
「リンのハラボジのコンサートみたいなら大丈夫でしょうけど、ハラボジのライブの時は、無理ですよ・・・・・・どうするんでしょう!?」
両足拡げて座り込んこんでいるリンを見下ろしたユソンは、しゃがみ込んでイヤホンやら、コードやら、機材の箱を覗き込んで引っ張っている。
「だーかーらー!なんのことだよー」
首を傾げて顔を見合わせたリンとユソンの脇で、ジュンシンが不満たっぷりに膨れた。
「聞きに行く!」
そんなジュンシンを見上げたリンは、暫く無言で見つめてユソンに手を引かれ立ち上がっている。
「そうですね」
「えっ!?おいっ」
手を繋いで駆けだしたふたりをジュンシンが慌てて追いかけた。
「アッパー!!!」
「なんだ!?」
ステージを歩き回っていたテギョンは、額の汗を拭いながら振り返っている。
「あのねー、僕達のはー!?」
ギターを弾いて歩き回るテギョンにリンとユソンも平行に歩き始めた。
「あ!?」
耳に手を当てたテギョンは、目を細めて立ち止まっている。
「僕達、イヤモニ!!!貰ってなーいーのー」
聞こえないという仕種をするテギョンにむと唇を突き出したリンが、階段を駆け上った。
「あ!?ああ、そんなことか」
ギターを背中に回したテギョンに引っ付いたリンは、受け止めたテギョンが屈むと同時に耳から外されたイヤホンを引っ張っている。
「おいっミニョ!」
広い会場を見回すテギョンは、椅子に座っているミニョを捜して大きな声を出した。
「はーい」
返事をするミニョは、少し遠くで、ジョンアと話しながら手を振っている。
「午後から使わせてやるけど今は、まだ、必要ないだろう」
リンを離し、ギターを抱え直したテギョンは、派手に音を外したミナムを睨みつけた。
「着けなくても聞こえるんだろう!?モニターでも十分判るだろうし」
テギョンの横でシヌが、足元のスピーカーを踏みつけている。
「判るけど、アッパ達のコンサートってお客さん凄いもん!わかんなくなると思う」
今はまだ、小さな音が漏れているスピーカーに耳を寄せたリンは、シヌを見上げた。
「ジュノは、まったくの初めてなんですけどー」
ユソンもスピーカーの前でシヌを見上げている。
「ユンギヒョンのコンサート見たこと無いんでしょう!?」
「コンサート!?ああ、クラッシクしか連れてったこと無いな」
ステージの隅で調整をしていたユンギが、きょとんとしながら答えた。
「じゃぁ、余計にあった方が良いと思います」
「ああ、判った!午後からは、客の声も流してやる!」
「それで判るのー!?」
すっかり、音が止まってしまったステージ上を睨み回したテギョンは、その視線をそのままリンに向けているが、同じように見回したリンは、にっこり笑っている。
「判るか判らないか解らないから!やるんだろう!?」
「わかんないけど、判ったー」
テギョンの顔にユソンは、リンとテギョンを交互に見つめ、降りて来たリンに手を引かれて後ろを気にしながらも駆けて行った。
「良いのかあれで!?」
テギョンの隣に立ったユンギが、ふたりの背中を見ている。
「良いんだろう・・・まぁ、聞こえなくなるだろうと思って用意はしてる」
「大人と同じだけのものが必要なのね」
「ただ、演奏をしたいだけなら良いけどな!ここは、リビングじゃない」
振り返ったテギョンは、真っ直ぐミナムに向かった。
「俺達のコンサートばかり見てるリンは、良いとして・・・」
「ユソンも平気だろう・・・ジュンシンが心配・・・だよなぁ」
シヌと顔を見合わせたユンギは、がっかり顔で額を覆っている。
「夜までかかりそうだな」
肩を叩いたシヌに首を振るユンギは、テギョンを振り返った。
「覚悟は、していただろう!?」
「「「「まぁな(ね)」」」」
ミナムの楽譜にペンでバツを書いたテギョンは、手を上げて中央に戻っている。
「オンマー」
テギョンに呼ばれて箱を持って歩いて来たミニョは、リンにそれを差し出した。
「どうしました!?」
「あのね・・・」
受け取ったリンは、箱を見つめ、ユソンの手を離すと暫く黙っている。
「ん!?どうしました!?」
俯くリンにミニョが、しゃがみ込んで顔を覗いた。
「あのね!病院!!行きたい」
「へっ!?」
ミニョを見上げたリンは、笑顔のまま驚くミニョを見ているのだった。
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はぁ・・・病院・・・だれが・・・!?
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