「では、お気をつけて」
車両を降りたユソンとジュンシン、ユンギの三人を見送るヒジュンは、腰を折って、運転席に戻ろうとした。
「何に気を付ければ良い!?」
慇懃無礼だと言いたそうに振り返ったユンギは、足を止めたふたりに手を振って先を行かせ、ドアを開けようとしたヒジュンは、首を傾げている。
「何って、何ですか!?」
「俺が!聞いてるの」
「ヒョンは、ヒョンで、良いんじゃないですか!?ファン・テギョンssiにお任せです」
「嫌味の通じない奴だな!」
「ヒョンの嫌味なんて慣れてますよ!俺の言葉を皮肉にとったのでしたらそれも間違っていないです」
ユンギの言葉を肯定したヒジュンは、首を傾げるユンギを笑った。
「気を付けて頂きたいのは、マスコミです・・・今日インタビューの打ち合わせがある筈ですから」
「お前って、本当に何でも良く知っているんだな」
「それが、仕事ですからね!でも、インタビュアーは、ユ・ヘイssiなので大丈夫ですよ」
「ユ・ヘイって!?コ・ミナムの奥さんの!?」
「ええ、テギョンssiに近しい方で融通の利く方を紹介して欲しいと伝えました」
「それって、今後の仕事の為か!?」
「ええ、イ・ユンギに興味を持っていただくのは構わないんですけど、あまり煩くされるとSPglobeが困りますので」
「チッ!結局仕事かよ」
「奥様にも頼まれてますからね・・・ああ、それとこれを差し上げます」
胸ポケットに手を入れたヒジュンは、封筒を取り出し、中から数枚の紙を出した。
「なんだよ、それ!?チケット!?」
「ええ、最終日のチケットです」
リボンスプレッドよろしく広げるヒジュンは、最後の一枚を抜き出している。
「招待者のリストです!目を通しておいた方が宜しいと思います」
差し出される紙を受け取りに車に近づいたユンギは、屋根越しに受け取った。
「・・・見合いした相手ばかりじゃないか!?」
「ええ、奥様が、折角なので、皆さんにと」
「チッ!お前って、オモニの秘書なんだな」
「SPの社員です!では、わたしは、これで」
車に乗り込むヒジュンからリストに視線を戻したユンギは、歩き出そうとして、目を瞠って振り返った。
「おいっ!これ!!!」
虚しい声は、車のエンジン音にかき消されている。
「あっ、チッ、ヒジュンのやつー!!何でこの名前が書かれているんだよっ!あー、もう、電話、携帯っ!」
ポケットを探るユンギは、携帯を取り出し、電話を掛けようとして持っていた腕を引っ張られた。
「あ!?」
「おいっ!ユンギ!早く来いよっ!」
「何だよジュノ・・・先に行ったんじゃないのか!?」
「行ったけど、戻ってきた!あのな、俺達着替えるんだって!」
「あ!?俺達!?って誰が!?」
「俺とリンとユソン」
ジュンシンに腕を引かれながら歩き始めたユンギは、携帯を仕舞った。
「着替えならひとりでも出来るだろう」
「それは、問題じゃないぞ!リンの格好が問題なんだ!」
「あ!?どういうことだよ」
「良いから早く来いってば!」
腕を引かれながら、どこかうきうきしているジュンシンに首を傾げたユンギであった。
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