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振り返ったミニョを後ろに倒した影は、転びそうになって慌てたミニョの両手を掴み、お腹を引き寄せていた。
「今日いらっしゃるとは、聞いていませんでしたが」
不遜に低い声を出したテギョンを見るギョンセは、リンを床に降ろしている。
「連絡は、したよなー」
屈みこんでリンと視線を合わせたギョンセは、にっこり微笑んだ。
「うん!オンマのラジオを聞いてる時に電話でお話したよー!」
「あ!?」
眉間に皺の寄るテギョンはミニョの首に回した腕を引き、ジャケット前を開けたリンの背中を細めた目で見ている。
「ほらー!」
「あっ、お前、俺の携帯」
ギョンセに向かって携帯を掲げたリンにテギョンが目を丸くして腕を伸ばした。
「アッパが置いてったんだもん!僕の事心配だから持ってろって言ったでしょう」
「・・・あ、ああー・・・そうか・・・そうだったな」
画面を見せたリンに伸ばした腕を空振りしているテギョンは、ミニョに覆い被さっている。
「オンマの事お迎えに行くから持ってろってくれたもん」
「貸・し・た・だろう!大体、お前が、俺に置いて行けと言ったんだ」
テギョンの重さを背中に受けたミニョが前に蹌踉めき、慌てたリンがミニョのお腹に両手を乗せてテギョンを睨みつけた。
「アッパが、お約束の代わりに置いてったんだもん」
「あ、あのー、約束って何なのですかぁ!?」
お腹を支えたテギョンの手にリンの手が乗り、息を吐き出したミニョの手も重なっている。
「あ!?」
「あの、ねー」
手を握られたリンは、微笑んで頷いたミニョに頷き返し、テギョンを見上げて唇を突き出した。
「黙ってろ!大体、アボジがいるんだ!お前は、アボジと行くんだろう」
テギョンも負けじと唇を尖らせて、きょろきょろしたギョンセが横を向いて吹き出している。
「うん!ねーハラボジー、今日は一緒にお泊りしても良ーいー!?」
「あ、ああ、は、はは、良いよ!ハラボジと一緒に寝よう」
駆け寄ったリンの腰に腕を回したギョンセは、またリンを抱き上げて立ち上がった。
「やったー!」
「ということは、約束は有効だな!」
ギョンセの首に腕を回して頬にキスをしたリンにテギョンも鼻で笑っている。
「うーん・・・ちょっと違うけど良いよー!アッパも忘れないでねっ!」
「解ってる!コンサートを楽しみにしてろ!」
「わーい!ハラボジー、デザート食べたーい!」
「こ、こら、リン!ダメですっ!アボジを困らせないでー」
リンのおっとりした声にテギョンを無言で見ていたミニョは、はしゃいだ声に慌てて前を向き、腕を伸ばした。
「構わないよ・・・私も碌に食事をしていないからね!それにパーティもそろそろお開きだ、お前達も一緒に行くかい」
「い・・・・・・・っ」
テギョンにがっちり抑えられているお腹に視線を落としたミニョは、手を添えた途端、口を塞がれ、大きな目を見開いている。
「行きません!どうぞ、ソンジャ(孫)を可愛がってください」
ミニョの体を床から数センチ持ち上げたテギョンは、バタバタしている腕に瞳を細めながら、ニッコリ満面の笑みを浮かべた。
「あんな事を言ってるけど、リンは、良いのかい!?オンマと一緒じゃなくて」
嬉しそうな笑みを浮かべるテギョンにギョンセがリンに聞いている。
「一緒が良いけどぉ、今日は、オンマを譲るって約束したから良いよー」
「な・・・」
ギョンセに抱かれて、首を傾げ、満面の笑みを浮かべたリンは、ミニョに手を振った。
「オ、オッパー、リ、リンの事、虐めましたー!?」
「するかっ!どっちかというと虐められたのは俺だ!お前のラジオの件だって聞き出すのにどれだけ苦労したかっ!」
焦って慌ててバタついているミニョを床に降ろしたテギョンは、腕を強引に外して振り返ったミニョに僅かに仰け反っている。
「オッパが!!練習中に虐めたのでしょう」
「虐めてないっ!!!と言ってるだろう!」
「っ・・・・・・・・・」
姿勢を正したテギョンは、深呼吸をして一歩前に進み、口を開けて首を傾げたミニョを見下ろした。
「な、んだよ・・・急に黙って・・・」
怪訝な表情であんぐり口を開けているミニョを見たテギョンは、視線を追いかけている。
「な、やっぱりそうだろう!?」
「ねぇ、テギョン・・・俺達の見間違いじゃなくて!?酔ってるのか!?」
「本当にめちゃくちゃ珍しいけど、最初から結構呑んでた・・・よ・・・」
腕を組んだユンギにシヌとジェルミが顔を見合わせ、シヌに腕を絡ませているユナが、顔を半分覆った。
「あれ、全部テギョンssiが開けたの!?・・・ひとりで!?」
「あれだけ呑んだら、いくらヒョンでも酔うよね・・・」
テーブルに転がるワインボトルやブランデーの数を数えながらジェルミが頷いている。
「オオオオッパ!?あ、あああああんなに飲んだのですか!?」
「そんなには飲んでいないぞ」
酒瓶の数にぎょっとして目を丸くしたミニョはテギョンのシャツを掴み、テギョンは、ミニョに気圧されながら後ろを振り返った。
「十分、酔っぱらってる・・・ミニョ・・・覚悟した方が良いぞ」
テギョンの顔を見たシヌは呆れた顔で、首を振っている。
「か・・・覚悟!?」
「こんなに飲んでるテギョンには、会った事が無いだろう」
「え、え、と・・・・・・・・・」
テギョンの足元を見たミニョは、しっかり立ってる姿に首を傾げ、シヌを見た。
「記憶にない位昔、一度だけ会った事があるよなぁ・・・ジェルミー」
「うん!ヒョンニムは、酒は強いけど、酒癖は・・・」
苦笑いを浮かべたジェルミの表情にミニョは、増々目を見開いている。
「え、えええええええー、シシシシシヌオッパ!?ジェルミ!?」
「うーん・・・俺・・・出来れば、あまり会いたくない・・・かなぁ」
テギョンにくっついたまま、横から顔を覗かせているミニョは、シヌとジェルミを交互に見つめ、両手を拡げてお手上げのポーズを作ったジェルミにごくりと喉を鳴らした。
「どどどど、どういうことですかぁ」
「そんなに酔ってるとは、思えないけど・・・まぁ、ミニョ、気を付けた方が良いかもね」
リンを抱いたまま、ユンギの肩を叩いたギョンセは、手をあげたヒジュンに合図を送り返している。
「ア、アボニー・・・」
「クク、ミニョ、安心しろ!問題ない!」
背中を向けて歩き出したギョンセにテギョンの顔をちらりと見たミニョは、ニヤリと笑った顔に頬を引き攣らせた。
「オンマー、行ってきまーす!アッパと楽しんできてねー」
リンが手を振っている姿を見送るミニョは、俺達も帰るよと言ったシヌ達に助けを求める様に手を伸ばしていたのだった。
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