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「じゃぁ、今日は、こ、こ、ま・・・で!皆またねー」
元気よくマイクに向かって声を出し、引き攣った顔と焦った呼吸を隠して番組を終えたジェルミは、スイッチャーの手の動きと同時にドアを開けてスタジオに入ってきたテギョンに素早い動作で立ち上がってミニョの前に飛び出していた。
「ミ、ミニョは、悪くないっ!お、っ怒るなら、おっ、俺・・・」
「・・・ほぉ、お前が代りになるのか・・・・・・悪いと思っているんだ!?」
コクコクと頷いたジェルミは、テギョンのにっこりした笑みにごくりと喉を鳴らした。
「さ、て・・・じゃぁ、説明をしてもらうか!」
ギロリギロリと左右にゆっくり動かされた瞳の前で、肩を縮めたミニョは、両手を拱(こまね)いて、瞳を下げ、また上げては下げて、困った表情を浮かべながら、隣をチラリと窺った。
「お前が、誘ったのか!?」
ミニョの隣で、同じ表情を浮かべたジェルミも小さくなって慌てて首を振り、ジェルミを見据えるテギョンは、組んでいた腕を外して髪をかき上げた。
「お前じゃないなら、コ・ミナムか!?」
仁王立ちしたテギョンにミニョもジェルミも押し黙ったまま互いの顔を見合わせ、フルフルと首を振っては、互いを見るを繰り返している。
「・・・本人が居ないから、こいつが代理か」
「あ・・・あのぉ、オッパ・・・」
テギョンの顔を暫く見ていたミニョは、首を傾げて、隣のジェルミを見た。
「お前は、黙って、ろ」
「そっ、ミッ、ミナムは、ヘイとデートだって、けっ、今朝、飛行・・・」
「・・・こんな時に旅行!?」
ジェルミを横目で見ながら背中を向けたテギョンは、椅子を引いて座っている。
「やっ、えっと、だから、ヒョンには話・・・」
「聞いてない」
足を組んだテギョンに近寄ったジェルミは、間髪入れずに返ってきた答えにしどろもどろで一生懸命説明を始めた。
「だ、だって、ミナムが、ヒョンには話をしてあるから、ミニョもすぐに来るって、本当に来たし・・・・・・」
ミニョを振り返ったジェルミに首を傾げて自身を指差しているミニョを見たテギョンは、小さく舌打ちをして溜息を吐いている。
「コ・ミニョ・・・お前、さっさと着替えて来い!」
「ヒョンにきっ、聞かなかったのは、悪かったけど、けど・・・だって・・・」
「だって、何だよっ!!!」
「・・・コンサートの宣伝もな・・・」
「お前がそんな心配をしなくても良いっ!!!練習をしろっ」
尖らせた唇を動かして、どっかり座った椅子の肘掛けに両肘を置いたテギョンは、きょとんとしているミニョに手の甲を向けて振った。
「何で、オッパは怒っているのですかぁ!?わたしも出して頂くのですから、ラジオに出ても良いじゃないですかぁ」
にっこり笑ったミニョに眉間に皺を寄せたテギョンの眼光は鋭く、睨まれたミニョは、近づいた足を戻して、くるりと背中を向けている。
「俺の知らないところで仕事をするんじゃないっ!!!」
「ミナムオッパの代りは、初めてじゃないです・・・」
「何か言ったか!?」
「いっ、いえ、き、着替えてきますっ!」
トトトトと早足でスタジオを出て行ったミニョの背中を見送ったテギョンは、ジェルミを見上げて近づく様に促した。
「・・・・・・」
「イ・ジェルミ!お前、今度のコンサート、いつもと同じだと思っているか!?」
「えっ!?ど・・・同じでしょ・・・」
テギョンに顔を近づけたジェルミは、首を傾げている。
「いっ、いつもと同じ・・・でしょ・・・」
真顔で聞くジェルミに溜息を大仰に吐くテギョンは、勢いよく立ち上がった。
「同じだと思っているなら、お前、いつも以上に努力をした方が良いな」
「し、してるよー、俺だって真面目に練習してるー」
ツカツカと横を通り抜けたテギョンにジェルミは慌てて上着を掴み、スタッフに会釈をして、背中を追いかけている。
「お前の練習は、まだ足りない」
きょろきょろと周りを見回しながら歩いているテギョンは、ジェルミを振り返った。
「ミニョの楽屋は!?」
「え、あ、あっち」
指差した方向に顔を向けたテギョンの目の前でジェルミは、テギョンの行き先を阻み、顔を顰めたテギョンはジェルミの頭を押しやっている。
「いったいよヒョン!俺の何が足りないのさー!言ってくれなきゃ解らないよー」
歩き出した背中を追いかけながら、キャンキャン騒ぐジェルミに扉に手をかけたテギョンは、大きな溜息を吐いて後ろを振り返った。
「良いか!イ・ジェルミ!よく聞けよ!お前、ソンベに選ばれたんだぞ!少なくとも、ミニョのアルバムに入れる歌だけど、ソンベが出演するって事は、お前、それを本番で、コンサートで披露するって事だ!アルバムみたいに録り直しが利くものじゃない!お前がどんなに頑張っているかを評価するのは、俺じゃない!リップシンクでも構わないが、それじゃ、ソンベは、がっかりするだろうな!選んだのが間違いだったって!」
「あ・・・・・・もしかしてヒョン・・・心配してくれてる・・・!?」
きょとんとするジェルミに舌打ちをしたテギョンは、体の向きを変えようとして、ミニョが開けた扉に思い切り頭をぶつけたのだった。
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