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「それで、何があったのですか!?」
テギョンの顔をマジッと見つめたミニョの瞳を見つめ返したテギョンも、真顔で、しかし、徐々に唇が突き出し、ソファの横からテギョンを見あげていたリンが、口を開けてミニョの前に駈け寄った。
「オンマー、アッパのお顔怖ーい」
「うぅん・・・楽しくは・・・なさそうですねー」
ミニョの膝に手を乗せたリンに微笑み返したミニョは、リンの体を抱き上げている。
「チッ!お前達!のん気だな!」
リンとミニョが向かい合って笑う横で、ソファの背凭れに腕を伸ばしたテギョンは、足を組んでミニョの顔を斜めに覗き込んだ。
「ん、のん気にしてる訳じゃないです、レッスンだって行ってるし」
「行くのは当たり前だ!俺のトレーニングだけじゃ不安だと言ったのはお前だろ」
リンと顔を見合わせて笑ったミニョに舌打を返したテギョンは、足を組み直している。
「そっ、それはですねー・・・オッパもお忙しいから・・・」
あたふたしたミニョにリンがテギョンを睨み、ちらりとリンを見たテギョンは、唇を歪めて顔を背けた。
「ふ・・・ん・・・確かにそんなに見てやれる時間も無いからな・・・」
「オッパ・・・怒ってます!?」
低い声音にミニョがテギョンの顔色を窺い、笑顔で首を振るリンに頷いている。
「怒ってない・・・」
「でも、変な顔だねー」
ミニョの手を握って、手遊び歌を歌い始めたリンにテギョンが横からムッとした表情で拳を突き出し、ミニョがその上に指を乗せた。
「ちょっと、焦っているからな」
「えっ、オッパも焦るのですか!?」
蝸牛の形になった二つの手にテギョンを見て笑ったリンは、小さな蝸牛を作って上に乗せテギョンは、大きな声で驚いた割にリンを見ているミニョを睨んでいる。
「ああ、今回、ソンベの意向で、お前の演出にオーケストラを入れるんだ」
「ん!?」
きょとんとしたミニョは、リンと顔を見合わせて、拳を引いてゆっくり立ち上がり、ジャケットを脱ぎ始めたテギョンを見上げた。
「オーケストラは、ソンベの考えだ・・・あの曲の発表は、アルバムより先行するから、そちらの方が効果的だろうと言われたが・・・チッ、何か別な思惑がある気がしてきたぞ!」
「別な思惑ですかぁ」
ソファに足を置いて立ち上がったリンの手を握ったミニョは、座り直すのを支えながらヒョイと横から顔をだしてテギョンを覗きこみ、シャツのボタンを外したテギョンは、前を肌蹴ながらピアノに向かっている。
「ああ、ソンベとアボジは、学生時代からの旧友だそうだ・・・ユンギの父親も同じ大学らしい・・・アボジはそんな話を俺にした事は無いが・・・・・・」
ポロロンと鍵盤に乗せた指が、音を流し、旋律を奏で始めたテギョンにリンがミニョを勢いよく振り返った。
「お前・・・聞いてないよな」
「聞いてません・・・うんー、でも、リンのバンドの話をした時、凄く喜んでくれましたね」
「そうだ!アボジが珍しく俺にまでメールを送ってきた・・・あの時は、孫の成長を喜んでるからだと、そんなもの気にもしていなかったが・・・」
奏でるメロディーを徐々に強めていくテギョンにリンもミニョも笑顔を浮かべて聞き入り、振り返ったリンが、ミニョの腕を解いて膝から飛び降りている。
「それにこれだ・・・」
「楽譜!?」
リンの後を追いかけてピアノに近づいたミニョは、上に置かれている譜面を手に取った。
「ああ、リンにアレンジをさせろと無茶な事を言ってきた」
「無茶なのですか!?」
膝を折ったミニョは、リンの顔を覗き込んでいる。
「わっかんなーい」
ミニョの手から譜面を受け取り、テギョンと譜面を見比べたリンは、首を振ってソファに走って行った。
「ふ・・・ん、まぁ、良いさ・・・思う様なアレンジをしてみれば良い」
「何かに使うのですか!?」
「判らない・・・というより何に使うのかも判らない」
首を傾げたテギョンに首を傾げたミニョは、不思議な顔でくるりと振り返っている。
「リンは、それで、良いのですか」
「良いよー、だって、僕、アッパみたいに忙しくないもーん」
「チッ!練習をしろ!歌うのはお前だぞ!」
「ふふ、そうですね」
ソファで大きな丸を作ったリンに笑顔を向けたミニョと苦虫を噛み潰した表情のテギョンであった。
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