「ああ、それならテギョン!これを持って行けよ」
ユンギのにやけた顔に舌打をしてジャケットを手にしたテギョンをシヌが呼び止め、椅子の背凭れに置いていた包みを差し出した。
「!?なんだ」
「捜していただろう」
投げ出され、受け取った包みの透明なフィルムの隙間から中を窺ったテギョンは、驚いた表情でシヌを見ている。
「ど、こで、これを・・・」
「ミナムが、ヘイに買いに行かせたそうだ」
薄い笑を浮かべたシヌは、ぎょっとしているテギョンに早く帰れとばかりに手を振ったが、唇を突き出したテギョンの顔にニヤリと唇を歪めた。
「お前が捜しているのをミニョが気にして、ミナムに相談してたんだよ」
「・・・・・・」
「俺は、もう少し、ユンギとソンジュンssiの話を聞いてから戻るから、監督にもそう伝えておいてくれ!あそこは俺が見るから家に帰って良いぞ」
また、手を振ったシヌに黙ったまま手の中の包みを見つめたテギョンは、唇を数度噛み、頷くとシヌに包みを振って、店を出て行ったのだった。
★★★★★☆☆☆★★★★★
「オンマー、なーに捜してるのー!?」
クローゼットの引き出しを開け、開けては閉じてを繰り返し、引き出しを漁っていたミニョは、ドアに立つリンに驚いた表情で振り返り、小さなお腹の音にハッとして壁の時計を見た。
「えっ、わっ、もう、こんな時間ですか!ごっ、ごはんですねっ」
「う・・・ん、お腹空いたのー」
項垂れて、お腹を擦っているリンの手を握り、廊下を並んで歩き始めたミニョは、屈みながら謝っている。
「ミアネー!夢中になっていたのですねー」
「何か捜してるのー!?」
「ええ、ほら、この前、アッパが、ミナムオッパに服をあげてしまったでしょう」
「うん、でも、星は、返してくれたよー」
「ええ、でもあの後、アッパが、それを直しに出すと言っていたのですが・・・」
「どうしたのー!?」
頬を抑えてぶつぶつ呟きながら、キッチンに向かったミニョにダイニングで手を離したリンは、椅子をよじ登り、腰を下ろしてテーブルの向こうを見た。
「それをね、あそこに仕舞った筈なのに無いのですよー」
「えー、アッパが、箱に入れてたよー」
「ええ、その、箱ごと・・・無いのです・・・」
冷蔵庫からお皿を幾つか取り出してリンの前に置いたミニョは、頬を抑えて憂えた顔で、並べられたお皿にスプーンを差し入れたリンも首を傾げている。
「アッパが、また出したんじゃないのー!?」
「う・・・ん、でも、アッパには必要のないものですからねー」
「オンマは何に使うのー!?」
「ふふ、来週、ユンギssiの誕生日パーティがあるでしょう!それに着ていく服につけようと思ったのですよー」
ごはんを片手にリンの隣に座ったミニョは、小さなお茶碗をリンの前に置いて両手を併せるとお箸を手にした。
「オンマだけ!?」
きょとんとして訊ねるリンに驚いた表情のミニョは、首を振っている。
「まさか!!リンも行くのですよー!ごはんを食べたらお買い物に行きましょう」
「お買い物!?」
「ええ、プレゼントとリンのお洋服もね!新しいのを買いに行きましょうね」
ポロンと零れたおかずに大きな口を開けたリンとミニョの昼過ぎの出来事だった。
★★★★★☆☆☆★★★★★
「ジェールミー!来週のユンギssiのパーティ招待されてるー!?」
事務所のホールで一人、ステレオホンを耳にあて差し入れのお菓子を頬張っていたジェルミは、塞がれた耳の片側を持ち上げられて驚いた表情で横を向いていた。
「もっ、勿論!されてるっけど、その日、ラジオの公開録音があって遅くなる予定だろう」
持ち上げたミナムのにやりと笑った顔にコホッと咽(むせ)たジェルミは、手持ちのオーディオからプラグを抜くと電源を落としながらヘッドセットを首に掛けている。
「そ、っかー、お前も遅い・・・・・・となると・・・」
「え、え、ミナムは、先に終わるから時間通りに行けるんじゃないの」
両腕を頭に回して腕を組み、くるりと向きを変えたミナムは、窓側に設置されている楽器のスペースに足を運び、ピアノの前に座った。
「いや、それが、その日、双子とヘイの両親と遊園地に行くんだよね」
「え、あれ、ヘイssiって、確か、今、日本だよね」
「ああ、映画の撮影中!だから、陣中見舞いを兼ねて遊びにね」
「え、えええー、何だよーそれー!ヒョン達が頑張ってるのに休みって事ー!?」
「そういうことー!」
ピアノの蓋を開けたミナムは、軽やかに音を出し、童謡を弾いている。
「ええー、良いなぁ、俺も休み欲しーいー」
「休んでどうするんだ!?」
「えっ!?ええ・・・と・・・・・・・・・・・・・・・」
ニヤニヤしながらジェルミを見たミナムに威勢良く返事をしたジェルミだったが、きょとんとして肩を落とし、ハッとした表情で声も落とした。
「パッボー!彼女も今、こっちにいないんだろ!?ジェルミが国に帰ったら、二週間は戻って来れないもんなー、そんな長い休みを社長はくれないぜっ」
「うっ・・・い、良いよ!ツアーが終れば、ヒョンが長い休みを取るって言ってた!俺もそれに便乗して休みをとる!イギリスに帰るぞー!」
「で、今度は、彼女の休みが終るんだな」
「!!!ミーナームー」
「あはは、どちらにしてもジェルミの幸せは遠そうだなぁ!!」
鼻で笑ったミナムに得心の表情で片手を突き上げたジェルミだったが、ミナムの弾ませた和音の終焉に怒りの表情を浮かべたのだった。
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