見つめられていたテギョンは、伏せた眼差しをミニョに向けたが、咳払いをしてシヌに向き直った。
「ああ、そのつもりだったけど、気になって・・・」
ミナムの姿を見たシヌは、口元を抑えながら笑いを堪え、きょとんとしたミナムが、ギロリと瞳を動かしている。
「ちょっと、ヒョン!失礼じゃない!笑うとこじゃないわー」
ミニョの真似をしながら姿(しな)を作ろうとしたミナムだが、肩に乗せているリンの重みで膝を折るのを躊躇い、上を見上げている。
「化粧をすればなんとでもなるだろう」
「なんとかね・・・なるというより、したいんだろう」
ミナムとミニョを見比べているシヌは、ミナムの腕を測るように掴んだ。
「お前、戻ってきてからも勿論鍛えているよな」
「うん、当然!ヴォーカルだって、体力勝負!」
ピースサインを作るミナムに苦い顔をしているテギョンと不思議な顔で見ているジェルミとミニョにシヌはミナムの頭の上を見ている。
「はは、リン、お前は、どう思う!?ミニョに見える!?」
「ううん、オンマはねー、もっと細くて可愛いもん!ミナムにしか見えなーい」
ミナムの額の髪を掻き揚げて覗き込み、ケラケラと笑い出したリンにミナムもムッとしたが、ミニョを引き寄せると鏡に向かって並んだ。
「うーん、確かになー、流石に前の俺ならも少し細かったから、ミニョの服も着こなせたけど・・・ちょーっと無理があるかなー」
「速攻痩せろ!」
鏡に向かって差し出されたひとさし指に驚いたミナムが振り返り、不機嫌な表情のテギョンは、唇を動かしている。
「何言ってんのさヒョン!いっくらミニョの為でも俺!そこまで出来るかよー、だいたい俺、今、痩せたら、ヘイに怒られるんだよなー」
「可愛い妹を守りたくないのかっ!」
「守るのはあんたの役目だろう!俺から取ったんだから!それ位しろっ!」
「何だとー」
くるりと振り返り、振り返るミナムに鏡越しの視線を併せていたテギョンは、ぎょっとした表情で、大きく舌を出している顔に苦々しそうに唇を突き出した。
「はい、はい!事実は、事実!ところで、テギョン!お前・・・なんか、別な事を考えているんだろう」
テギョンとミナムの間に入ったシヌが、テギョンを見ると薄く笑っている。
「あ!?」
「双子にこんな格好をさせて、そんなの無理があるくらい、お前だって解ってた事だろう、な・に・を、させたいんだ!?」
「・・・チッ・・・シヌ・・・お前、仕事受けたんだろう」
「俺!?・・・っ、ああ、CMの話か!?」
質問を返されたシヌが、きょとんとすると一斉に注がれた視線にテギョンが、面白くなさそうに背中を向けた。
「ああ、ツアーが終ってから撮影に入るという契約で、つまり、その相手役をミニョにしたいと指名する為に連日押しかけられているんだ・・・」
「へっ!?俺!?」
言葉を切ったテギョンが、チラリとジェルミを視界に入れて、テギョンと視線の合ったジェルミもまたきょとんとして自分を指差している。
「ああー、もう!このまま、受けるとな!次はこいつとって言い出しかねないんだよ!」
苦い顔で、ジェルミを指差し、額に手を当てたテギョンは、その場に座り込みそうな勢いで、膝に両手を置いて、がっくり項垂れ、そんなテギョンの傍らにミナムの肩から降りていたリンが駈け寄った。
「えー、俺は、大歓迎だー」
「ジェルミは、イメージが、合わないんじゃない」
指を組み合わせ、瞬きを繰り返すジェルミにミナムが茶々を入れるとむっつり膨れたジェルミは、黙り込み、ミナムをジトリと睨んでいる。
「けど、それって、お前の憶測だよな・・・今のところ・・・」
ミナムとジェルミを交互に見たシヌが、ククと笑みを零してテギョンに向き直った。
「ああ、しかし、あいつは、それらしい事を言っていたからな・・・」
「ねー、ヒョンさぁー」
「ねー、アッパはさぁー」
同じ高さの声が、綺麗にハーモニーを奏で、顔を見合わせたミナムとリンは、言葉を繋がず、にっこり微笑み合っている。
「オッパ、私にお仕事して欲しくないのでしょうか」
「そういうことじゃないだろう・・・あいつと仕事をしたくないだけで」
「ソンジュンssiですよねー・・・確かに毎日いらっしゃるんですよねー」
小さな溜息を吐いているミニョの脇でしゃがみこんだミナムは、ツンツンとスウェットを引っ張り、ミニョも隣にしゃがみ込んだ。
「お前さ、ちょっと、痩せた!?」
「ん、オッパとCM撮るのに少しだけ絞りました」
「やっぱりな・・・ちょっとだけ、小さくなったかもと思ってたんだ」
「オッパこそ、鍛えすぎじゃないですかぁ」
「ああ、ヘイと約束をしたんだよ・・・だから・・・」
顔付き合わせて小声で、ぼそぼそ会話をしているミナムとミニョは、共に背中を震わせると同じ仕種で尻餅をついている。
「おい!お前達!俺の話を聞いていたか」
ぶるぶると顔を横に振るミナムとミニョの同じ顔を覗き込んだテギョンは、二人を指差してシヌを振り返った。
「どうだ!?ミナムが相手でも通るだろう」
「ああ、今の顔なら、いけるかな」
「じゃぁ、それで、決めるぞ」
「ああ、そうだね、じゃぁ、俺も付き合おうか」
テギョンとシヌが、肩を並べてホールの扉に向かうと尻餅をついたままふたりの背中を見ていたミナムが、ジェルミに顔を向け、ヒクリと唇を動かしたジェルミは、ぶんぶんと手と首を振っている。
「ちょぉー、っと、待ってよヒョン!何がどうなったのさ」
「オッパ!シヌオッパ」
ミナムとミニョの呼びかけも虚しく、扉を出て行ったテギョンとシヌは一度も振り返る事無く、残されたミナムとミニョは、顔を見合わせた。
「なんだよ・・・今から会いに行くって話じゃなかったのか」
「そういえば、オッパ、今日お休みでしたよね」
ミニョの服で片膝立てて座り込むミナムは、親指を噛みながら舌打をして正座をしてミナムと向き合っているミニョは、首を傾げている。
「あん、休みだからリンを預かったんだろう」
「そうですけど、どこに居たのですか」
「シヌヒョンの処だよー」
ミニョの質問に肩に手を乗せたリンが答え、じゃれつくリンに腕を回したミニョは、負ぶさる小さな体に前屈みになった。
「シヌヒョンがねー、ケーキをくれたのー」
ふふと笑っているリンにシヌとコンサートの打ち合わせをしていたとミナムが答えた昼下がりだった。
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