虫刺され?
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春、うららかに柔らかい陽射しが降り注ぐリビングで、庭を眺めて洗濯物を仕分けているミニョの肩は、小刻みに揺れていた。
「ふふ・・・っ、えへ・・・あは・・・・・・ぷっ、くくっくく」
膝に抱えたテギョンのシャツを口に当て、ニヘラと緩む頬も抑えられず、次第に体も揺らし、前のめりに倒れている。
「・・・・・・・・・」
そんなミニョの姿をリビングの扉に手を掛けたまま不思議そうに眺めていたリンは、首を傾げたまま、そろーっと踵を引いてニ歩三歩と下がり、両手を拡げて駆け出していて、その冒しな叫び声とバタバタという足音に振り返ったミニョが、きょとんとした表情で、大きな目を瞬かせ、暫くすると真っ赤な頬を抑えていた。
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「アッパー、オンマになーにーしたのー!?」
地下スタジオの扉を開けて、ピアノの譜面台で書き込みをしているテギョンに向かって、パタパタとスリッパの音を響かせて駈け寄ったリンは、隣の椅子を少しだけ引いて、黒い革張りの座面に両手を乗せ、跳ねる様にそこに座り込み、鉛筆を置いて、鍵盤に指を乗せたテギョンの動き始めた指先を見つめている。
「何って、何かあったのか!?」
紡ぎだすメロディーに耳を傾けながら、瞼を伏せ、音に身を任せているテギョンは、体を揺らし、やがて口角を上げると開いた目の中に譜面を捉えて右手を上げた。
「えー、なーんか、今日のオンマ変なんだもーん」
あげられた右手が鉛筆を持ち上げ、左手がまだ、伴奏を刻むと両手を鍵盤に置いたリンは、テギョンの書き連ねているメロディーを弾き始め、けれど、今、正に書かれているメロディと別な音を鳴らしている。
「おっ、前・・・・・・」
「へへ、こっちの方が良いよー」
「ったく、お前の曲じゃないんだから邪魔をするな」
ギロリと動かされた瞳にそれでも右手を戻したテギョンは、リンの奏でるメロディに伴奏を付け、ニヤリと笑みを零すとまた右手を上げて、譜面台の紙を一枚捲った。
「ふ、良いだろう、このまま弾き続けろ!一曲書いてやる」
「えー、僕のだもーん!」
「違うだろう!俺とお前の共作だ!」
「・・・うーん、ま、良いやー」
「生意気言うな!」
「えへへー」
ペロっと小さな舌を出したリンにふっと笑みを崩したテギョンは、瞳を閉じ、息を吸い込んで、弾いていたバラードをポップな音に変えている。
「カンタービレ(歌うように)、アマービレ(愛らしく)コンアニマ(生き生きと)」
音楽用語が飛び交うスタジオで、紡ぎだすメロディに指を動かすリンは、時折考え込む様に天井を見上げ、テギョンはそれを横目で見ながら、右手を上げては、鉛筆を走らせ、最後の一音をピタリと止めたリンに腕を伸ばした。
「終わりか!?」
「うん・・・も、出ない」
テギョンに髪を撫でられ、鍵盤を見つめたリンは、大きく頷くと譜面に目を向けている。
「見せてー」
「ああ、直すなら今のうちだぞ」
「えー、だって、お仕事じゃないもーん!コモド(気楽に)ー!」
テギョンから譜面を一枚受け取り、椅子を降りたリンは、ローテーブルの前に座り込んで、鉛筆立から一本を取り出した。
「フフ、フゥン・・・フ、へへ、こっちー」
出来上がったばかりの楽譜を鼻歌で歌いおたまじゃくしを消したり書いたりしている。
「出ー来たー!これで良いよー」
ピッと風を切り、テギョンに差し出した譜面を渡し、にっこり笑ったリンは、軽やかに演奏を始めたテギョンの横に駈け寄り耳を傾けた。
「ふ、上出来だな」
「ほんとー、じゃぁ、アッパ歌詞もつけてーオンマに歌ってもらうー」
「贅沢を言うな」
トンと譜面でリンの頭を叩く真似をしたテギョンに片目を閉じたリンは、ハッと表情を変えている。
「そうだー!アッパ!だーからー!オンマに何したのー」
頭に手を置いたまま上目遣いで見上げるリンにこちらも上目遣いで視線を逸らしたテギョンは、唇を動かすとくるりと背中を向けた。
「あー!やっぱり、アッパが何かしたんでしょー!ねー、なーに、何したのー」
背中を向けたまま椅子の向こう側を回って、オーディオセットの前に立つテギョンにパタパタと追いかけたリンは、横から見上げている。
「あー、アッパも変な顔してるー」
ニヤつくテギョンの顔に指を向け、小さな唇を尖らせたリンは、不満顔で、ヒクリと左側の口角を上げたテギョンが、首をニ三度動かした。
「あー、ファン・リン、こっ、子供は知らなくても良い事だ」
ニヤける顔を抑えながら、真顔を取り繕い首を擦っているテギョンにむぅーと唇を尖らせたリンは、不満顔で、俯くと両足を揃えてポンと一歩、前に飛び出し、にっこり笑いながら、両腕を上げている。
「何だよ・・・・・・」
差し出された両腕に瞬間的に腕を伸ばしたテギョンは、リンの脇腹に手を差し入れて抱き上げ、首に両腕を回したリンと目を併せて暫く見詰め合った。
「っわ、パッボ、お前、何をしているっ」
ニヤリと笑ったリンにシャツを引っ張られたテギョンは、首を引き、肌蹴た胸元を顕にされて焦っている。
「うん!?なーんにもないよー」
シャツを引っ張ったまま、テギョンの胸元を覗きこんだリンは、きょとんとした顔をあげ、テギョンと目を併せると首を傾げた。
「何か隠してたんじゃないのー!?」
「何かって何だよっ」
「オンマに何か貰ったとかー」
唇に指を当てたリンを重そうに抱えなおしたテギョンは、シャツの襟首を掴んで直し、コホンと咳払いをしている。
「・・・ないだろう」
「でも、アッパ、さっき、ここ触って笑ってたもん」
こことリンの触れた首筋には、ポツンと鎖骨の境目にほんのり赤い跡が残り、それをジッとリンは見つめた。
「虫刺され!?」
リンの見つめている鎖骨に指を乗せたテギョンは、顔を逸らしている。
「あっ、ああ、まぁ、そうだ、な」
歯切れの悪い返事と共にリンを床に降ろしたテギョンは、カチャリと聞こえた音に扉に視線を移して固まった。
「あー、オンマー!」
「リン・・・えっと、あの、その」
走り出したリンに両手を拡げてしゃがみこんだミニョは、けれど、視線はテギョンに向けていて、目を見開いて首を振ったテギョンは、ミニョを睨みつけている。
「ねー、オンマー、何で笑ってたのー!?アッパもね、教えてくれないのー」
「ええっと、それは・・・ですね」
近づいてくるテギョンに泳ぐ視線を向けて、首を振っているミニョに溜息を吐いたテギョンが、またリンを抱き上げた。
「ああ、もう、解ったよ!教えてやる!」
ミニョに手を伸ばして立ち上がらせ、肩を抱いたテギョンは、きょとんとして見上げたミニョにニヤリと笑みを返している。
「ほらっ!」
右手でミニョのニットを引っ張り、膨らみを覆うレースに指を掛けたテギョンは、左手に乗せているリンの体を前に差し出し、そこを覗き込んだリンと目を見開いて口をパクパクさせたミニョが、同時に声を上げた。
「キャー!オッパ!何をー」
「わー、オンマも同じとこが赤ーい」
くるりと振り返ったミニョよりも一瞬早く後ろに飛びのいたテギョンが、振り上げられた拳を宙で受け止め、テギョンの首に腕を回しているリンは、にっこり笑っている。
「解ったか」
「うん!同じだねー」
「ああ、昨夜、ふたりで星を見てたんだ」
「ふーん、だからなんだー」
「ああ、仲良く刺されて、笑ってたんだよ」
「変なのぉー」
「ふん、お揃いを喜んだだけだ、滅多にないからな」
テギョンに握られた拳をそろりと降ろすミニョは、俯いたまま瞳を左右に動かし、上目遣いでテギョンを見上げると後ろを向いて両手を口に当てた。
「なーんだ、オンマが変になっちゃったのかと思ったー」
テギョンに床に降ろされ、ミニョの腰に抱きついたリンは、苦笑いで振り返った顔に笑顔を向けている。
「そっ、そんな事はないです」
「うん!オンマ今日も綺麗だよー」
ミニョの緩んだ頬の謎が解けたリンは、脇をすり抜けて、階段を昇り始め、テギョンに視線を移したミニョは、引き攣った笑顔で人差し指を立てた。
「は、は、ありがとう・・・じゃ、じゃぁ、お茶・・・を」
ギロリと動いたテギョンの視線に自然、直立になったミニョは、両手を脇に置いてピクリと肩を動かしている。
「コ・ミニョssiー・・・・・・」
「いっ、良いじゃないですかぁ、ちゃ、ちゃんとオッパが誤魔化したんだからー」
「ふ、ん・・・ニヤけて笑っていただと・・・お前・・・そんなに善かったのか」
ミニョの両肩に腕を乗せたテギョンは、額をぶつけ、至近距離で見つめあうふたりの視線は、互いを映し、ミニョがオズオズとテギョンの腰に腕を回した。
「オッパが、先に噛んだんですっ」
「そんな事あるかっ!お前が先に噛み付いたんだ!」
小声で頬を膨らませたミニョに首を傾けたテギョンも小声で、その声は、ミニョの唇に吸い込まれている。
「ん・・・も、どっちでも良いです」
「ふふ、明日もリンは、ここに忍んで来るな」
「だとしても、今日みたいなのは、だめっ」
「さぁ、それは、明日決めれば良い事だ」
離れたミニョを胸に引き寄せ、秘密の時間に付けた赤い印に思いを馳せて、ニヤけているテギョンにミニョも胸の中でクスクス笑い、けれど、あーという声にふたりで慌てて顔を上げたとある日の出来事だった。
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Table of contents
Favorite music excerpt 再生リストからchoiceコントロールから音量変更可 不可はページ再読込❦一部字幕ON&設定で日本語約可
loveYou're Beautiful❦Story it was based Korean drama "You're Beautiful" secondary creation.❧
Hope to see someday"You're Beautiful" of After that.
Aliasすずらん──長い長い「物語」を続けております。貴方の癒しになれる一作品でもある事を願って。イジられキャラテギョンssi多(笑)
交差点second掲載中❦フォローしてね(^▽^)
コメディ・ほのぼの路線を突っ走っています(*^▽^*)あまりシリアスは無いので、そちらがお好きな方は、『悪女』シリーズ等を気に入って頂けると嬉し。
『テギョンとミニョの子供・・・』という処からお話を始めオリキャラ満載でお届けしておりましたが、登場人物も交差し始め統一中。
長らくお付き合いいただいている方も初めましてな方もお好きな記事・作品等教えて頂けると嬉し(^v^)
ご意見ご要望はこちら★すずらん★メッセージを送ってください。BM仕様限定のごくごく一部解除しました。
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