「あーーーーーーーーー!!!」
「!!!!!!!!!なっ、何だ!突然!」
駐車場に響いた耳を劈くような大きな声にミニョの籠バッグを手に歩いていたテギョンは、それを胸に抱えて、振り返っていた。
「どうしました!?」
裏口の扉の前で警備員に会釈をし、大きな声を出したままその場に突っ立っているリンにミニョが、手を差し出している。
「アッパに!!!ごはーーん!」
「ん!?」
ミニョの手を捕って、テギョンの元へ向かうリンは、繋がった手を大きく振った。
「食べられちゃったのー、たまご焼きー」
「えっ、あっ、ああ・・・そういえば・・・」
不満顔で、ぷくぷく膨れたリンに大きく一緒に手を振っていたミニョは、車の助手席を開けてドアに凭れているテギョンと目を合わせている。
「チッ!!なんだ・・・たまご焼きか・・・」
呆れた表情で、午前中の出来事に少し唇を突き出したテギョンは、首を振って、車に上半身を突っ込んだ。
「僕が、食べるはずだったのー!!アッパ、ずるーい!」
「煩いなぁ、ミニョが、俺の為に作ったんだぞ、俺が食って当前だろう」
「アッパが、僕を苛めたから!罰だったんだもん!!」
「・・・・・・罰って、お前、たかが、たまご焼き・・・」
心底呆れた表情で、車から顔を出したテギョンにリンが、指を向けている。
「ちっがーうもん!本物は、黄色くって甘いたまご焼だもん!」
「緑を作ったのもミニョだぞ、だったら、緑も、本物だろう」
ふふんと鼻で笑うテギョンにリンが、口を尖らせて、くるんと横を見た。
「・・・・・・オンマー、どっちー!?」
「えっ!?どっちって・・・えっ!?えっ、ええと・・・」
リンに矛先を変えられて、質問をされたミニョは、戸惑っている。
「緑だろう」
「黄色でしょう」
「えっ、えっと、あの・・・ど、どっちも本物!?」
助手席のドアを開けたまま、運転席に向かったテギョンと手を引っ張っているリンと交互に見据えてミニョは更に困った顔をした。
「「答えになってない」」
シンクロした親子の声に図らずも背筋を伸ばしたミニョは、テギョンと絡んだ視線に僅かに口角をあげて、瞳を回している。
「うん・・・も、判りました・・・えっとね、リン・・・」
しゃがみ込んでリンの腕を軽く掴むとその顔を覗き込んだ。
「アッパは、お野菜が、嫌いですよね」
「・・・!?」
しゃがみ込んだミニョに怪訝な顔を向けたテギョンは、運転席のドアを開けて、屋根越しにミニョを見ていて、頷いたリンが、首を傾げている。
「だからね、緑のたまご焼きは、実は、アッパが嫌いな物を沢山入れて作ってあるんです!だからね、あれを食べる事がアッパには、既に罰なのですよ」
「・・・・・・・・・ 美味いけどな」
にっこり笑っているミニョに首を傾けていたリンも感心顔でミニョが、少し安堵の表情を浮かべかけたが、ぼそりと呟かれた言葉が、リンの表情を変えた。
「ちょぁ!オッパ!・・・なっ、邪魔をするのですかぁ!そもそもリンを苛めたのは、オッパなんですからねー」
テギョンの一言に、にぃと笑ったリンに失敗顔で、片目を閉じ、すくっと立ち上がったミニョは、テギョンを膨れて睨んでいる。
「そうだもん!そうだもん!!アッパが、僕を苛めるのがいけないんだもーん!!」
テギョンとの論争に決着がつかないまでも、ミニョも膨れた事に便乗したリンが、ミニョに抱きついてテギョンを見ると、大声で笑い始めたテギョンが、運転席に乗り込みながら、ミニョとリンに向かって指を動かした。
「お前が、俺を苛めてるんだぞ」
「そんな事ないもーん!」
テギョンの指の動きに笑顔で走っていくリンは、開かれたままの助手席に乗り込みながら、まだテギョンと干渉を繰り広げていて、ミニョがクスクス笑っている。
「ああ、そうだ、天才的なお子様を持つ親父の苦労って奴を・・・今、身を以って感じてるな、俺は」
「ハラボジは、アッパの事を天才なんて思ってないもーん」
助手席から、後部シートに乗り込んでシートベルトを探り始めたリンにテギョンが、ハンドルに手を置いたまま振り返り、舌を出したリンに唇を突き出した。
「おっまえなー!俺という父親に向かって本当に良い度胸だ!」
「もー!オッパもリンも辞めてください!!!」
「ミーニョー!明日もよろしくねー!」
困りながら助手席に乗り込もうとしたミニョは、後ろから掛けられた声に振り返ってミ笑顔を向けた
「あ、ジェルミ!デートですか!?」
「うん!夏休みになるからねー、俺もコンサートで、もっと忙しくなるし、イギリスに行っちゃう前に一杯会うんだー」
「ふふ、気をつけてください」
バイクを押してヘルメットを片手にテギョンの車にジェルミが近づいて来た。
「お前が・・・気をつけろ・・・」
「えっ!?何か、おっしゃいましたか」
ジェルミと会話をしているミニョに事務所の裏口から出てきたシヌとミナムも手を振り、ミニョが会釈をテギョンが手を上げた。
「いーえ、ああ、コ・ミニョssi!あなたの歌も特別レッスンが必要なのでスペシャルメニューを作りました・・・ふ、ん、帰ったらミーティングだ」
「へ!?」
テギョンの突然の一言にきょとんとしたミニョは、くるんと振り返っている。
「クク、おい、ミニョ、お前、コンサートまで、寝かせてもらえないんじゃないの」
「やっ、そんなの困ります!お肌が・・・」
テギョンの車と並んで止められたシヌの車の前で、ミナムが、意地悪な笑顔を浮かべてミニョを見つめると、シヌがクスッと笑った。
「ふん・・・俺だって困る!まぁ、それなりに声も出てるからな、それ程必要ないが、リンと一緒にボイストレーニングに付き合え」
「僕もやるのー!?」
「ああ、・・・一曲だけだが、歌え、許可してやる」
運転席に座るテギョンを覗き込んだミニョに後部シートから身を乗りだしたリンと顔を見合わせたジェルミとミナムは一様に驚いた表情を浮かべ、シヌは、涼しい顔をしている。
「えっ、えっ、ね、それって!?」
「決定!?」
「決定か!?」
「・・・・・・・・・ああ、決定事項だ」
テギョンの言葉にミニョが両手を併せてリンを見つめ、ぱぁっと明るい顔になったリンは、運転席へ向かって手を伸ばしテギョンに抱き付いた。
「わっ!!!」
「やったなー!!リン!!!俺達と出れるんだ!」
「良かったな」
「やったね!リン!ヒョンが、認めたんだー」
「本当!ね、アッパ!!本当!?」
「ああ、本当だ・・・その代わり、明日からは・・・覚悟をするんだな」
口角をあげてじゃれつくリンを見たテギョンに大きく頷いたリンは、嬉しそうにミニョを見て大きな声を出している。
「オンマー!!!」
「良かったですねリン!!!アッパに許可をいただけました」
「うん!やったー!オンマと出れるー」
助手席に座り込みリンに腕を伸ばしたミニョがその膝に抱き抱えるとリンもミニョの首に腕を回してぎゅっと抱きつき、暫くして、グスッと鼻をすすった。
「お・・・い」
ミニョとテギョンが、顔を見合わせて、微笑みあい、声を殺して満面の笑顔で泣き笑いのリンの頭を優しく撫で、そんな家族を見て、鼻を啜ったジェルミにミナムが、呆れ顔でシヌと顔を見合わせていた夕方の出来事だった。
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またまたありがとうございます(^_^)ごちそうさまでしたー(*^▽^*)
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byアメーバピグ |
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