珍しく朝から猛練習をしていたミナムは、飲もうと手を伸ばしたペットボトルの水が無い事にシヌに買い物に行ってくると言って廊下に出ようとしてミニョとリンの話し声が聞こえ、そこで立ち止まっていた。
「それってヒョンに教えてやった方が良いと思うけどなぁ」
ミニョとリンが、内緒だと確認しあっている最中に顔を出したミナムは、ドアに背中をつけて腕を組み、ドアの桟を見つめて独り言の様に呟いている。
声のした方にすっと顔を向けたミニョは、小さくオッパと口にすると、立ち上がり、どうしてですかと聞いた。
「ヒョンさぁ、今、お前の歌を作ってるだろ!けど、行き詰ってるみたいだからな」
「えっ!?」
ミナムの思い掛けない言葉にきょとんとしたミニョは、そうですかと考えるように瞳を上げている。
「リン達のバンドのアレンジもしてるみたいだし、ただでさえ、夏に向けてアルバム作りに忙しいのに子供達とお前、それに今度の件!ヒョンの為には、お前がしてる事、教えてやっても良いんじゃないかと思っうけどなぁ」
寄りかかっていたドアから離れたミナムは、俯いて、リンに向かって軽く手を上げ、ミナムに近づいたリンは、その手に触れて軽くタッチを交わした。
「そんな、私がしてる事なんて大した事じゃありませんよ」
ミニョの戸惑った様な言葉に上目遣いで見上げたミナムは、肘をドアにつけて、空いた手を後ろポケットに入れた。
「でも、ヒョンの為だろ」
「それは」
頬に手を当て俯いたミニョは、そうですと頷いた。
「まぁ、お前の事だから相手がヒョンじゃなくても同じ事してるだろうし、それって日課だもんな」
ドアから離れたミナムは、ミニョに手を伸ばすとその額に軽く触れて、頭を持ち上げている。
「オッパだってしてるでしょ」
不満そうに膨れた頬でミニョがミナムを見た。
「俺は、いつもじゃないからね」
ミニョの横を通り抜けたミナムは、ジーンズの後ろポケットに両手を入れて振り返った。
「ヒョンに教えてやれば良いじゃん!お前はいつも祈ってるんだって」
「それは、わたしの自己満足ですもの!」
「それでもさ!お前のしてることは別に悪い事じゃないんだし!ヒョンの為に、ヒョンを思ってしてる事だろ」
「そう・・・ですけど」
戸惑っているミニョは、唇に触れ考え込む様にしている。
「嬉しい事だぜ!毎日欠かさず、それをしてくれるって事はな!知らなくても良い事だけど、お前の気持ちだろ!」
最後は、揶揄って笑って、手を上げたミナムは、ミニョの返事を待つ事無く階段に向かって行った。
「オッパ!!!」
ミニョは膨れてミナムを睨んだけれど、声は届いていない様だ。
「言っても良いんですけどね・・・」
独り言の様に呟いたミニョの腰の辺りに触れたリンがオンマーと見上げて呼んでいる。
「なんですか!?」
スタジオへ歩き出したミニョと並んで歩き始めたリンが、笑顔であのねと言っている。
「アッパの新しい曲ね・・・とっても暖かいんだよ」
前を向いて歩くリンは、ミニョを見ることは無く思い出すように話を続けた。
「うーんとね、家族を思って作りたいんだって」
「家族・・・ですか」
ミニョは、リンのゆらゆら揺れる頭を見つめて、隣をゆっくり歩いて行く。
「うん!男と女じゃなくて、家族だって言ってた」
「家族!?」
「うん!だって、オンマが歌うんでしょ」
スタジオの入り口で横を向いたリンは、ミニョを見上げてにっこり笑っている。
「そうですね」
ミニョも笑顔を返して屈みこみ膝に手を当てた。
「だからねー!女の人じゃなくて、オンマの歌なんだよ!」
そう言ったリンは、にこっと笑うとシヌヒョーンと言いながらスタジオに入ってしまい、頬に手を当てたミニョは、なんだろうと不思議な顔をしていて、リンの伝えたいことを考える様に首を傾げたが、まぁ、良いかと軽く頷いてリンの後を追って行ったのだった。
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