「なぁ、いっつもああなのか!?」
ユソンが、リビングのドアから顔だけ覗かせて下にいるリンに聞いた。
「いつも、ああだよ」
リンは、床に這い蹲るように寝転がって、リビングの向こう側、ダイニングに立つふたりを見ている。
「うちもあんなだよ、大して変わらないけど」
二つの顔の上から同じ様に顔を覗かせたジュンシンが言った。
「ふーん、まぁ、うちのハラボジもあんな風にしてる事あるけど、ファン・テギョンssiってもっと、こう、クールなイメージだったんだけど!?」
「クールなら、カン・シヌじゃないの!?」
「アッパは、アッパだよー」
「心配性なんだな」
リンに手を伸ばして、立ち上がらせたユソンが、笑っている。
「そうなのかなぁ・・・」
リンは、きょとんとしてユソンを見ている。
「ミニョssiのお腹、大分おっきくなったな!」
リンの手を繋いで、地下のスタジオに戻る為に廊下を歩き出したユソンは、リンもチェメ(弟妹)が出来るんだなと言った。
「うん!どっちかなぁ」
「リンだけだよな!オッパかヒョンになれるの!」
ジュンシンが、走り寄ってきてリンの反対側の手を取ると地下に降りる為の階段の所で気をつけろよと言った。
「どうしてー!?」
ユソンに手を引かれて階段を降り始めたリンは、反対側の手を離したジュンシンにもう一度手を伸ばして、三人で降り始めた。
「俺は、もう、親がいないから無理だし」
「俺ンとこは、ヒョン達が居るから、幾ら仲が良くてもこれ以上は、増えないと思うぜ」
トンと一番下のフロアーに降り立つと、先頭に立っているユソンが、スタジオの扉を開けて、中に入って行った。
「でもねー!ユソンヒョンもジュノヒョンも僕のヒョンでしょ!?」
わーいとギターに走って行くリンにユソンとジュンシンは、顔を見合わせている。
「オッパじゃないのか!?」
クスッと笑ったジュンシンが、椅子に座ってピアノに向かうと微笑んでいるユソンもそうだなと笑っている。
「僕は、いちおう、おとこのこー!」
リンは、不満そうに唇を尖らせた。
「あんな格好をしてたのに!」
「そうだよ!素のままじゃ、テギョンssiに見えるけど、帽子は・・・やっぱりミニョssiに似てるぜ!」
クスクス笑ったジュンシンが、何にするとユソンに聞いた。
「ソンセンニム(先生)の言う通りにやってみて、音をあわせよう」
「そうだな・・・リン!お前たまに先走るから、少し、テンポを抑えてくれ!」
「解ったー」
手を上げて返事をするリンだが、肩ベルトが上手く掛けられないのかユソンが、近づいてそれを直している。
「リンが、歌えば良いと思うんだけどさぁ」
鍵盤に指を置いて、軽く音を出しているジュンシンが、あーと発声をしながら誰とも無く言った。
「ピアノと歌はきつい!?」
「そうじゃないけど、こういう集団演奏は初めてだし、まだ、解らないというか・・・」
ショパンを弾き始めている指先で、こっちが楽だと言っている。
「そういえば、ジュノ、どうしてオーディション受けたんだ!?」
ユソンが、何かを思い出した様な顔で聞いた。
「あー、ユンギがさぁ、あーサムチョンが・・・アメリカに来てたんだけど、一緒にゴハン食いに行ったんだ!その時、A.N.Jellの話が出てて、俺ファンだったから、会いたいって言ったら、ピアノを弾いたら会わせてやるって言われてさぁ・・・」
ジュンシンの話に不思議な顔をしているユソンは、自身のギターも抱え直して、肩を軽く廻した。
「どういうことだ!?」
「俺、知らなかったんだよなー!サムチョンが、ファン・テギョンやカン・シヌとあんなに仲が良いなんてさぁ」
譜面台に赤でバツが一杯付いている譜面を載せたジュンシンは、うぇーと目を細めている。
「会わせてやるから、学校行くまでの間だけ韓国に来いって言われた」
「そか、お前、音楽学校決まってるんだっけ」
リンのギターを直したユソンは、ピックを外して渡している。
「そう!それまでの間だけで良いからプロと経験をしろって言われたんだ」
「そっか・・・」
「お前は!?」
ユソンに向き直ったジュンシンが、興味津々という顔で聞いている。
「俺も似たようなものかな・・・ハラボジが、ユンギssiから話があるって言われて、教室のバンドの話は、前から決まっていたんだけどA.N.entertainment主催で本格的なオーディションをするから、それに行って来いって言われた」
リンを見下ろしたユソンは、クスッと口元に手を当てて笑っている。
「まさか、女の子に選ばれるとは思ってなかったけど」
「僕は、おとこのこなのー!」
リンは、突き出した唇を更に尖らせて不満顔だ。
「それは、すぐに解ったよ!遠くから見てた時は、どっちなのかなと思っていたけどミニョssiの写真があったし、俺もA.N.Jellのファンだからね!写真もDVDも一杯見てるし、テギョンssiに男の子しかいないのも知ってたし」
ユソンがそう言うと、リンはふーんと頷いた。
「でもさー!リンに妹が出来たら、そんな感じなのかな・・・」
「それはさ、やっぱり兄妹だから、似るんじゃない!?」
年長者ふたりで、リンの顔を見つめて微笑んでいる。
「それって、めちゃくちゃ可愛いよな!」
「そうだね」
「ぅわーミニョssiのお腹に女の子入ってないかなぁー」
ジュンシンが、ピアノを軽快に鳴らしている。
「どっちだろうね」
ストロークを始めたユソンもコードを押さえる指先を見つめながら答えた。
「どっちでも良いんだよー」
リンが、ギターで、自身の作曲した子守唄をスローテンポで弾き始める。
「アッパもオンマもどっちでも良いって言ってたもん!僕もどっちでも良いのー!もうすぐ、僕はおにいちゃんになるんだもん!」
「そうだね!リンのチェメなら、僕達にも可愛いチェメだね」
「うん!」
にっこり微笑むリンは、待ち遠しそうな顔をして、ふたりのヒョンを前に嬉しそうに笑っている。
「そうだな!じゃぁ、始めるか!」
「うん!」
「はーい!」
手を大きく上げたリンが、ギターを叩いてテンポを決めていく。
それに併せるように、三人の『約束』の練習が始まった。
★★★★★☆☆☆★★★★★
テギョンは、スタジオの大きなガラス窓から暫くの間、練習をしているのかと呟いてスタジオ奥にいる三人の様子を覗いていた。
何か楽しい話をしているらしい事は見て取れたが、如何せん防音完備のスタジオの中の音は外に漏れる事がない。
それでも、今迄、一人っ子のリンが、子供同士で楽しそうに笑っているのを見ているのは、親として嬉しいものがある様で、友達というよりは、兄弟の様に接している様を見ながら口角をあげている。
「オッパ!?どうされました!?」
ミニョが、階段の上からテギョンに声を掛けると降りても良いですかと聞いたので慌てて振り返ったテギョンは、直に上にあがってきた。
ミニョの両手には、子供達のおやつを用意したお盆が乗っていて、足元にはお菓子の袋が置かれている。
「俺が取りに行くって言っただろ!」
「そんな、散々くっ付いてたのに持って行かないから!」
「ちょっと、気になったんだよ!」
ミニョの手を引いて、片手にお盆を持って地下に降りるテギョンは、不満そうに唇を尖らせるが、クスッと笑っているミニョは、リンですかと聞いた。
「ああ、チェメが出来るけど、あいつらと一緒にいるとリンがマンネだろ」
「そうですね」
「練習中は、音楽の話しかしていないから、ある意味対等だけど」
「そうなのですか!?」
「ああ、リンの方が音に煩い時があるからな」
「ふたりに悪いですね」
「ああ、でもふたりともそこは、認めてくれてるようだな」
テギョンは、階段を降りきるとミニョの手を離して開けてくれと顎をあげた。
「良いお手本になってくれるというか、面倒も見てくれるし、俺の前でも言いたい事を言うしな・・・」
テギョンは、ガラス窓の向こう側を見て言った。
「チェメが出来ても早く順応出来そうで助かるな」
「良いお友達だという事ですね」
大きなお腹を抱えたミニョが、扉を開けると、『約束』が、丁度終わった所で、ミニョに気がついたリンがオンマと手を振った。
「おやつにしましょ!」
ミニョがそう言うと、はいと返事をした子供たちは、それぞれ楽器を外して、テギョンとミニョが用意したテーブルの傍らまでやって来たのだった。
★★★★★☆☆☆★★★★★★★★★★☆☆☆★★★★★★★★★★☆☆☆★★★★★
はて、チュルサン(出産)待っているのは、お友達も一緒みたい・・・(-^□^-)
うーんこの流れっって女だなー!?女かぁ・・・ミニョの嫉妬・・・は無さそうだなぁー・・・(笑)
と、最後までお付き合いをありがとうございました!
また、ゆるーくお会いします(-^Ⅲ^-)
にほんブログ村