ユンギが、テギョンを見ると頷いたテギョンが、楽器の用意されたステージを見た。
「リンはともかく、他の2人の実力を確認させてもらうぞ!」
「うん!じゃぁ、子供達おいで」
ユンギが、手を招くとユソンとリンが手を繋いで、ジュンシンはその後ろを歩いてやってきた。
「リン・・・一応確認するけど歌は、どうする!?」
ユンギが、リンの顔を覗き込んで聞くとにっこり笑ったリンは、左右を確認して頷いてから答えた。
「僕やらない!ギターだけで良いよ!」
「ジュンシンもそれで良い!?ピアノと歌、両方だけど」
「どっちでも良いよ」
そっかと言ったユンギは、子供たちに併せて折り曲げていた体を起こすと良いかいと人差し指を立てた。
「ユソンとリンは、併せた事もあるけど、3人で併せるのは初めてだから、違うと思うなら遠慮なく言うんだよ」
「わかったー」
「判ってます」
「了解!」
三人がそれぞれに答えて顔を見合わせて笑っている。
「それで、何を遣るんだ!?」
「『約束ー』」
リンが、口を開いた。
「それが、一番判りやすいよねー」
ねッと首を傾げたリンは、アッパと笑ってみせる。
「ふん!お前が好きなものを言われてもな・・・ふたりもそれでいいのか」
テギョンは、リンを見て呆れたように視線を投げ、ユソンとジュンシンを見た。
「問題ないです」
「大丈夫です」
ふたりも笑顔を交わすと頷いてテギョンを見ている。
「じゃぁ、決まりー!練習しよー」
リンが、二人の手を引いて楽器の置いてある場所へまた戻って行った。
「子供ってのは、打ち解けるのが早いんだな」
テギョンが笑みを噛み殺しながら言うとミニョが、クスッと隣で笑っている。
「オッパみたいに人嫌いじゃないですからね」
小さな声でテギョンにしか聞こえていないが、ギロッと鋭い視線を飛ばしたテギョンは、お前ーと小さく呻った。
ステージとして用意された空間は、グランドピアノが置かれているスペースで、オーディションでリンが使ったものだ。
そのピアノにマイクが取り付けられると、一応ギターの2人の前にもマイクが取り付けられた。
「ドラムはどうするんだ!?」
テギョンが聞くと、ユンギが、一応ふたりとも出来るけど必要かと聞いた。
「!!ふたりとも出来るのか!?」
テギョンは、目を見張って驚いた。
「うん、ユソンは元々そっちを遣ってたんだけど・・・子供だけだし、機械で調整しても良いし、とりあえず、リンが入れるかどうかも判らなかったし、あの子達それぞれ、結構どの楽器でも出来るし、主体は、ギターとピアノだけど、最悪、歌とギターだけでも良いかなって思ってたんだよね・・・だから要らないかなって・・・」
ユンギが笑って答えた。
「それに、ジェルミが遣っても良いって言ってたぞ」
アン社長が、腕を組みながらテギョンを見て言った。
「ヒジュンもね・・・あっ!?ソンベじゃ無い方だよ」
指を立てたユンギは、笑顔で可笑しいだろと笑った。
「紛らわしいな」
片目を閉じるテギョンは、めんどくさそうに応えている。
「仕方ないよ!両親がファンだったらしいし」
ユンギの親友でもあるヒジュンは、バンドメンバーで、仕事においても秘書という役割を担っている為、大概ユンギと一緒に行動していたが、この場にはいない様だ。
「いないのか!?」
テギョンが周りを見回して聞いた。
「うん、今日は別な仕事」
「そうか、ドラムがいると判りやすいかと思ったんだが」
子供たちの実力は、周りの大人の期待値というか、安心感の様なものが見え隠れしていて、心配という雰囲気を誰も出していない事もあって、それなりに聞ける物なのだと判断しているテギョンは、完成形に近いものを聞こうと思った様で、俯いて少し考え込んでいる。
「そーう!?」
不思議な顔で首を傾げたユンギにテギョンは、チラッとステージを見ると、唇に指を当て、腕を組んでミニョを呼んだ。
「なんですか!?」
「ジェルミに電話してくれ・・・スタジオにいるだろ」
「ジェルミですか!?」
「ああ、ここに来るように言ってくれ」
「判りました」
ミニョは、頷いて電話を掛ける為に廊下に出て行った。
「はー・・・きっと嬉々として来るな」
「何だよテギョン、自分で呼んだのに」
大きな溜息をついたテギョンにユンギが声を掛けた。
「あいつ、ソンベのファンなんだよ・・・さっきもサイン貰って来てくれって言われたばかりだ」
首を振って嫌そうに顔を歪めているテギョンにユンギが呆れた顔をしている。
「別に良いじゃんサインくらい・・・貰えば・・・」
「お前、あいつのミーハー振りを知らないだろう・・・それは、煩いぞ・・・」
「何だよそれ、自分で呼んだのに・・・」
テギョン達がそんな会話をしている中、子供たちは音を併せるのにすっかり夢中で、それぞれの保護者は、少し離れた位置に設置された椅子に座って子供たちを笑顔で見つめ、時に嬉しそうにその光景を見ている。
テギョンもその光景に目を移して、リズムをとったり、頷いたりしながら笑顔を刻んでいるのだった。
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