車から降りた、A.N.Jellは、それぞれに、手に袋を持って玄関へと向かった。
どちらが先に入るかでもめているミナムとジェルミを余所にシヌが、呼び鈴を押した。
「あーシヌヒョンずるいよー」
ジェルミが、不満そうにシヌを睨んだ。
「お前達を待っていたらいつまでも入れないだろう」
シヌは、冷静に口にした。
「おい、お前達邪魔だ!」
ケーキの入った箱を持って降りてきたテギョンが、玄関の鍵を開ける。
「なんだ、最初っからヒョンが、開ければよかったんじゃないの!?」
ミナムとジェルミが、顔を見合わせてコソコソと話をしている。
玄関の扉を開けるとリンとミニョが立っていた。
「おかえりなさい!」
ミニョがにこやかな顔で挨拶すると、ジェルミが、手をグーに握って口元に当てた。
「ミニョにお帰りって言ってもらうの、何年ぶりかなー」
「ばか!ヒョンに言ってるんだから、期待するな!」
ゾロゾロと、玄関へと3人がなだれ込んでいく。
「いらっしゃーい!ミナムー」
リンが待ってましたとミナムに両手を差し出すと、ミナムもリンを抱きかかえた。
「よー!リン!今日はどうだったんだ!?」
さっさと靴を脱いでリビングへ向かうミナムを見ていたテギョンは、ミニョに袋と箱を渡しながら言った。
「あいつ、自分の家みたいだな・・・」
それを聞いたミニョは、小さく頭を下げてすみませんとテギョンに言った。
「良いじゃないか!兄妹なんだから、気にするなよ」
ミナムへのフォローなのかシヌの言葉にテギョンが首を振った。
「どう考えても俺が、あいつの弟とかありえない!!」
「でも・・おとうとじゃん」
ジェルミが、ボソッと零すとテギョンの鋭い睨みが跳んだ。
「うわっ!恐いよヒョン!」
「ふんっ!」
テギョンも靴を脱いでリビングへ向かう。
「結局、皆で来ることになちゃってゴメンね。ミニョ」
シヌが、そう言うと、どうぞと促したミニョが、大丈夫ですと言った。
「シヌオッパの好きな物ばかり作ったので・・・」
ヘヘヘと笑うミニョは、少し赤くなっていた。
「エー!ずっるいよーミニョ!」
「だって、ジェルミも来ると思っていなかったんです!」
廊下を歩きながら、三人でそんな会話をしつつリビングへ入ると、テギョンが、ソファに座りながらネクタイを緩めていた。
ミナムとリンは、ダイニングに並ぶ料理を眺めてなにやらヒソヒソと話をしている。
「ユンギから、連絡はあったのか!?」
テギョンが、寛いだ様子でミニョに聞いた。
「ええ、もうすぐ着くと連絡がありました」
ジェルミが、シヌの袋を受け取るとダイニングへと向かう。
「俺たちあんまり関係ないからさ!こっちにいるよ!」
シヌとテギョンに向かって言う。
「そうだな・・・」
シヌが、テギョンの隣に座るとミニョがお茶と水を持ってリビングのテーブルへ置いた。
「まさか、また会うとはな・・・」
テギョンが、水のボトルを受け取ると、キャップを外しながら言った。
「ええ、わたしも驚きました!リンが見つけたのです!」
シヌの前にポットとカップを置くミニョは、どうしますと聞いている。
「ああ、自分で煎れるよ!」
「でも、近くに住んでるって、公園で見かけたことは無かったぞ!」
お盆を持ってダイニングへ戻るミニョは、リンに小さなお皿を持たせて持っていってと渡している。
「いつも、あそこで練習をしているとの事でしたけど・・・オッパのトレーニングの時間には、合わないのですかね」
お皿を持ったミニョが、リビングヘ次々運び込んでいく。
「そういえば、オッパに会ったとは言ってなかったですね・・・」
ミニョが、料理を並べていると、それを見たテギョンの顔色が僅かに変わっていくが、皆がいる前だからなのか、何も言わなかった。
ダイニングでは、ジェルミとミナムが、ミニョの作った料理について話し込んでいる。
「絶対そうだよ!」
「ヒョン!何、やったのかな!」
「ミニョって、こういうところあるからな!」
「女って恐いね・・・」
互いにつつきあいながらテギョンの嫌いなものばかり並んでいる料理の批評をしていた。
「でも、オッパ達に会えるって喜ばれてましたよ!」
ミニョが、そう言うと、シヌが、微笑んでミニョを見た。
「俺たちも会いたいって思ってたからな」
「ふふ、懐かしいのでしょう!?」
「「ああ」」
テギョンとシヌが言った。
「復活しても、それっきりだからな!この先どうするのか興味がある!」
「あいつのテクニックにだけは、どうしても勝てなかったんだ!どうなっているか知りたいよ!!」
それぞれに、思うところはあるようで、会いたい理由も様々だ。
「俺たちも興味があってさー!」
ミナムが、ミニョの作った料理に箸をつけながら口を開いた。
「うん!んまい!」
「ボーカルの子の話が聞けるかなと思って来たんだ!」
ジェルミも箸を持ち出してつまみ始める。
「ああ、天使の声って・・・オッパみたいですよね!?」
「ああ、だけど、女の子じゃないかと思うんだよね・・・」
スペードの話をしながらミナムはダイニングのカウンターに立つミニョに小声で言った。
「なぁ、ミニョ!ヒョン、食べれるのコレ!?」
「えっ!?」
驚いたミニョの顔が僅かに引き攣っていく。
「はっはは・・・オッパ・・・何を・・・」
「お前、嫌いなものばかり並べてないか!?」
「そっ・・・そんな事は・・・」
「あるよな!」
「はっはっはっ」
引き攣った顔で、笑いを零すミニョは、困ったような顔をしている。
「ヒョンに何をされたんだ!?」
ミナムが、兄としての心配なのかはたまたテギョンを追い詰めたいだけなのかミニョに聞いている。
「ふふっ、何も、されていません」
笑ったことで冷静になったミニョは、ジェルミとミナムの前に貰った袋からビールを取り出して置いた。
「ほんとかー!?」
ビールを受け取ったミナムは、プルタブを引っ張りながら聞いた。
「本当です!」
トタトタ歩き回っているリンに、ビールを持たせたミニョは、背中を押して、リビングへと行かせる。
何往復かするリンが、ビールをテギョンに渡すと、ダイニングへ戻り、ミナムの膝に手を置いた。
リンを膝に乗せたミナムは、リンにどれにすると聞いてお世話を始める。
「後で、ケーキもあるからな!」
そう言うと嬉しそうなリンが、うんと頷いた。
リビングでは、シヌとテギョンが、顔を突き合わせて、PCを覗いている。
ダイニングでは、リンとミナム、ジェルミが、料理を口に運びながら、会話をしていた。
そこへ、玄関から、呼び鈴が鳴った。
「来たな!」
テギョンが、そう言うと、ミニョに向かって顎をクイっとあげた。
「ええ」
にっこりと微笑んだミニョは、ユンギを迎える為に玄関へ向かって行ったのだった。