皆既月食数年ぶりの赤い月
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「綺麗なお月様・・・」
窓辺で空を見上げて柔らかい吐息を零したミニョの膝枕の小動(こゆるぎ)に顔に載せていた本を僅かにずらしたテギョンは、細い顎を見つめていた。
「ふふ、真っ赤なお月様・・・」
手を伸ばし揺らぐミニョの膝は、テギョンを乗せている事を忘れ、転がった顔がお腹にぶつかった。
「あ・・・いけなっ・・・起こし・・・たかな・・・」
テギョンの頭にそっと手を乗せたミニョは、ふわりと髪に触れ、少しだけ腰を引いた。
「ふふ、大丈夫みたいです・・・」
狸寝入りのその頭が、全く動かない事を確認してまた空を見上げた。
「オッパと見たかったですが・・・」
翳した掌の遥か先を見つめたミニョは、満足そうに微笑み、眠るテギョンの頭を包みながら背中を丸めた。
「疲れていますもんね・・・オッパ、いつもありがとうございます」
風に揺らされた髪に口づけるミニョの口から感謝の言葉が漏れた。
「あと少しでオッパの誕生日ですねー・・・今年は、何をしようかなぁ」
また見上げる空に輝く月を仰ぎニンマリ笑っているミニョは、顎に当てた一本指で唇を押し上げた。
「んー・・・ストロベリー・・・パプリカ・・・・・・トマト・・・タンアイ・・・っ」
「・・・・・・・・・」
ビクンと震えたミニョの顔が下がると同時に肩を震わせたテギョンの腕が腰に回された。
「ぷっ、クッククククっは、あっは、はは・・・っ・・・」
「な、オッパ・・・」
「はっ、はは、あっははははは、おっ、前・・・食いもんばっかりだなっ・・・クッは」
お腹で笑うテギョンのシャツを引っ張ったミニョは、大きな瞳をパチクリさせた。
「はは、は、だ、黙って聞いていようと思ったけど、げっ、限界だ」
ごろんと仰向けになったテギョンは、俯くミニョと目を合わせた。
「は、は、赤い月の理通り、労われようと思っていたんだが・・・クッ、クク、おっ前相手じゃ・・・それも難しいらしい・・・」
「いっ、いつから・・・」
「ん!?ああ、綺麗な・・・からだな」
パチパチ瞼を開け閉めしているミニョにテギョンが腕を伸ばした。
「さっ、最初っからじゃないですかー」
「ああ、お前の声で目が覚めた」
頭に触れた指先に手を重ねたミニョは、テギョンを膨れて見下ろし、ニンマリ笑うテギョンは、コロンと顔を庭に向けた。
「大分、赤くなったな・・・」
「ええ、地球が月を隠しましたから」
「ふ、お前にそんな事が解るのか!?」
「むむ、オッパ、失礼ですね、私だってそれくらい知っています」
頭の位置を僅かに変えたテギョンは、空を見上げ、ミニョは胸を張った。
「月か・・・星も見えないのに月も隠されたら、俺には何も見えないな」
「月は隠れるものですよー、星みたいにいつも輝いてはいないのですか・・・」
空を見上げた顔を俯けたミニョは、またゴロンと上向いたテギョンと見つめ合った。
「なっ、何です・・・」
「月が隠れるのが当たり前なら、星は月を隠すのが当たり前だと思わないか!?」
「へ!?」
「地球も大きな星だよなぁ」
「へ・・・あ、ああ、そ、うですね・・・」
「地球が太陽を遮って月を隠しているんだろ!?」
「へ!?ああ、月食ですから・・・そう、です・・・ね」
見つめ合って指を一本立てたテギョンが指す方向を見るミニョは、首を傾げた。
「何ですか!?」
「聞いてたか!?星が太陽を遮る日だそうだ」
「ふぇ!?」
バタバタと音を立てて駆け寄ったリンがミニョの背中に勢いよく抱きついた。
「え、あ、わ、リ、ッン!?」
「ちっがうもーん!太陽が照らすから!月は赤いんだもん!」
肩に乗るリンの手に触れたミニョの腕を引いたテギョンは、素早く頭に手を回した。
「え、あ・・・ッパ・・・っん」
「あーーーー、アッパのパーボー!!!!」
叫びと同時にテギョンのお腹を跨いだリンは、片腕に勢いを殺されてジタバタした。
「ふ、ん、赤い月は俺のだな」
「じゃぁ、白い月は僕のだもん!」
ミニョの頭から手を離したテギョンは、見つめ合ったままリンを抱きしめ、その腕の中で暴れるリンは、ミニョを見上げた。
「あ・・・え・・・!?えっと・・・」
唇を隠すミニョの顔を見つめたままのテギョンにしどろもどろのミニョは、赤くなったまま頬に手を当てた。
「ほら、見て見ろ、赤も白も良い色だ」
小さく微笑んだテギョンは、向きを変え庭に向けた体でリンを前に座らせた。
「わぁ、真っ赤なお月様だぁ・・・」
空を見上げ、手を叩くリンを向こうにちらりと振り返るテギョンは、腕を伸ばしてミニョの手を探り、まだ瞬いているミニョは、小首を傾げた。
「え、あ、リンは眠っていたんじゃ・・・」
「うん、アッパが時間になったら起こしてやるから、お昼寝しろって言ったんだよー」
「え!?」
テギョンの向こう側で庭に脚を出して座ったリンは、振り向く事なく答えた。
「オンマが帰って来たら起こしてやるって言ったから寝たのー」
「え、あ・・・そ、う、なの、ですか・・・」
「そうだよー、でも、アッパ、いつまでたっても起こしに来てくれないんだもん」
「ふ、それは、お前、こんな気持ちの良い事を邪魔されたくないからな」
ミニョの膝枕のままリンを引き寄せたテギョンは、柔らかい頬を突いた。
「目覚ましが鳴ったから起きたんだもん」
「ふ、ちゃんと聞こえて何よりだ」
「僕のピアノでしょうー」
「ああ”月の光に”だ・・・いつのだったかな・・・」
「わっかんないけど、すっごく下手だったー」
「ピアノを弾き始めてすぐの頃だな・・・簡単な練習曲だから・・・」
「あんなの録音してるなんて酷いよー」
「俺が録音した訳じゃないぞ、ミニョがしてたんだ」
顔を見合わせ話をしているテギョンとリンにぽかんとしていたミニョは、振り向いたリンの膨れた頬に慌てて首を振り、笑ったテギョンが、ミニョを仰いで、身体を起こした。
「ふ、これからも沢山録音してやるさ・・・お前の・・・俺達の軌跡だからな」
「うー、もう、良いもん・・・」
ふくれっ面のリンの身体を膝に乗せたテギョンは、ミニョの肩を抱き寄せた。
「ほら、軌道が変わるぞ、赤が白に変わっていく」
空を指差したテギョンに寄り添い三人で空を見上げていたとある月食の夜の出来事だった。
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よろぶん、あんにょん(^-^)
10月8日の月蝕はご覧になりましたか?
日本列島全国的に良いお天気という事で、
神秘的な月を肉眼で見られた方も多かったと推察いたします。
さて、
『どっちがどっち』みたいなシリーズになっている様な、なっていない様な(笑)
テギョミニョリンの三人家族。
リクエストをありがとうございましたm(__)m遅くなってごめんね(;'∀')
全体的に日常会話がテーマなので、意味はあったり無かったり(^▽^;)相変わらずのお話。
『一番と特別』ではなく『赤と白』でお届けしました。
リンに嫉妬するテギョンとテギョンに嫉妬するリンとそれぞれの愛情でそれぞれを見守る日常。
『ほっこり』感を受け取って頂けたら嬉しいです。
作中のフランス民謡『月の光に』は、こちらからご視聴ください。
ピアノ教則本『バイエル』に載っていたかどかはうろ覚えですが(笑)
小さな子供が弾くには簡単な譜だったと記憶しています。
最後まで読んで頂いてありがとうございました。
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Favorite music excerpt 再生リストからchoiceコントロールから音量変更可 不可はページ再読込❦一部字幕ON&設定で日本語約可
loveYou're Beautiful❦Story it was based Korean drama "You're Beautiful" secondary creation.❧
Hope to see someday"You're Beautiful" of After that.
Aliasすずらん──長い長い「物語」を続けております。貴方の癒しになれる一作品でもある事を願って。イジられキャラテギョンssi多(笑)
交差点second掲載中❦フォローしてね(^▽^)
コメディ・ほのぼの路線を突っ走っています(*^▽^*)あまりシリアスは無いので、そちらがお好きな方は、『悪女』シリーズ等を気に入って頂けると嬉し。
『テギョンとミニョの子供・・・』という処からお話を始めオリキャラ満載でお届けしておりましたが、登場人物も交差し始め統一中。
長らくお付き合いいただいている方も初めましてな方もお好きな記事・作品等教えて頂けると嬉し(^v^)
ご意見ご要望はこちら★すずらん★メッセージを送ってください。BM仕様限定のごくごく一部解除しました。
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