探し物。
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ふわっとしたスカートの縫い目を摘んで持ち上げ、そのままくるっと回ってみる。
斜めに傾けられた首元の銀のネックレスが朝陽に光り、回転すると同時にシャランと涼やかな音を立て煌めいていた。
水辺に踏み入れられた足元は、素足を晒して、白い爪先を時折水に浸けて蹴飛ばす仕種をする。
弾ける水飛沫の中、ひとり、はしゃいだ声を出していた。
「オンマー!」
遠くからミニョを呼ぶ声がする。
傍らに少し大きな白い塊を抱えたリンが、帽子を振り回しながら走ってきた。
「リン!!」
水から離れたミニョは、膝を折り、しゃがみこんで駆け寄ってくる小さな体を受け止めた。
「おはよう!オンマ!」
柔らかいほっぺにキスを落とし、にっこり微笑んだリンが、ミニョをギュッと抱きしめた。
「良く眠れましたか!?」
「うん!一杯寝たのー」
「そう、昨日沢山遊んだからですかね」
手を繋いで立ち上がったミニョは、お散歩をしましょうと歩き出した。
「うん!!」
繋いだ手の先からミニョを見上げ、綻ぶ顔を見たリンが満足そうに笑った。
「どうしました!?」
「オンマ、今日もきれいー!!」
「ふふっありがとうございます!」
リンの賞賛に戸惑う事も無く笑顔を返すミニョは、それでも緩んだ頬に手を当てた。
白く、柔らかい砂浜を手を繋いで歩き始めたふたりは、時折、足元に埋もれる様に転がる貝を見つけては、寄せて返す波音にはしゃいだ声を重ねて響かせていた。
「あったよー!」
渦を巻く大きな貝殻を拾ったリンが耳に当てている。
「海の音がするのかなー!?」
「ふふ、どうでしょうか!?ここでは、聞こえないかもしれないですね・・・」
貝殻の潮騒は、海にあっては聞こえないとミニョがリンに教える。
「お家に帰れば聞こえるかもしれないですね」
「そうなの!?」
「ええ、ここを思い出すような音が、きっと聞こえますよ」
目を細めたミニョが、遠くを見つめた。
「オンマー!?」
急に黙ってしまったまま何も言わないミニョに不思議な顔をして小首を傾げたリンがキュッキュッと砂を踏みしめて近寄ってくると腿に両腕を廻して、くるっと後ろを向いた。
砂浜の遥か先を白いフードを被って、誰かが歩いてくるのが見える。
ポケットに両手を突っ込み、フードを深く被って空を見上げると眩しそうに手を翳している。
ふと、腰を折って砂浜に手を伸ばすとそこから何かを拾い上げこちらに近づいてくる。
首を傾げてそちらを見つめていたリンが、大きくなる影に次第に口角をあげ、いきなり走り出した。
「アッパー!!!」
白い人影が、大きなサングラスを外しながら両手を拡げた。
飛びついたリンの身体を空中で受け止め、そのまま一回転する。
「ふっ!!早いなリン!!」
「おはよう!アッパ!」
リンが、テギョンの腕に抱かれてその頬にキスをする。
フードを少しずらしたテギョンは、片腕にリンを乗せるとゆったりと歩いてミニョに近づいてきた。
「どうした!?」
ぼけーっとしてその場に立ち尽くすミニョにテギョンが不思議な顔をしている。
首を傾げながら声を掛けるが、聞こえていないのか固まって動かないミニョは、ジーッとテギョンを見るとはなしに見ていた。
「おい!!」
テギョンがミニョの顔前に手を翳し、ひらひらと左右に振って視線が動かない事を確認すると目を細めながらその頬を抓った。
ハッとしたミニョが、そこを押さえテギョンと視線を合わせる。
「あっ・・・おはようございます」
慌てた様にお辞儀をしながら挨拶をしたミニョにテギョンは、リンと顔を見合わせて大丈夫かと聞いている。
「だっ・・・大丈夫です・・・」
頬に両手を当てたミニョは、何故かくるっと後ろを向いてしまった。
その頬は、デレッと緩んで赤くなっている。
後ろに立つテギョンは、怪訝な顔をしているがミニョの心の内など判るわけもなく、首を傾げていたが、暫くして瞳を左右に動かすとニヤッと笑った。
「見惚れたのか!?」
意地悪くミニョにそう聞いた。
「ちっ・・・違います」
「赤くなってるんだろう!?」
「そんな事ありません!」
「だったらこっちを向けよ!」
リンを砂に下ろしながら右手に持っていたサンダルをミニョの前に翳すように差し出した。
「お前のだろ!?」
小さな声を発したミニョがそれを受け取ろうとバツが悪そうに片目を瞑って手を差し出したが、さっとテギョンが腕を引いてしまった。
「俺に見惚れてたんだろ!?」
ニヤニヤしているテギョンは、そうだろと言ってミニョの首に後ろから腕を廻した。
グイッと胸に凭れさせるように抱き込んでいく。
首の横に顔を近づけて、耳元に唇を寄せた。
「ちっ・・違います」
横から見るミニョは、首筋まで赤く染まっている。
恥ずかしそうに口元を両手で覆い顔を隠すように俯いた。
「お前のリクエストだからな・・・」
「ちっがいま・・っ」
ミニョが、否定を続けているといつの間に前に回っていたリンがミニョのスカートを引っ張っていた。
「オンマ!?真っ赤ー!」
ミニョの顔を見上げて不思議そうな顔をしている。
「ほっ、ほら、アッパ!リンが見てますよ!」
「別にいつもの事だろ」
何でもないようなテギョンは、ミニョの耳元で笑って視線を落とし、頷くリンもにっこりして答えた。
「リン~」
テギョンの口撃から助けてもらえるかもと淡い期待を抱いたミニョの情けない声が漏れている。
「昨日、何かしたの!?」
ふたりの会話の意味を紐解く様にリンが質問をした。
「なっ・・・何もしてません・・・よ」
真っ赤な顔で否定するミニョを不可思議顔のリンが、じーっと見つめ納得はしていない事が窺える。
「教えてやるぞ!」
テギョンが、ミニョの首から腕を外すと一歩足を出してミニョの前に回りこんだ。
柔らかい砂の上に片膝を付くともう片方を90度に曲げてほらと手のひらを出した。
何かを待つように上を見上げている。
そんなテギョンの肩に手を置いたリンも首を傾けながらミニョを見上げた。
「何するのー!?」
「黙って見てろ」
チラッとリンと視線を合わせたテギョンがニヤニヤしながらミニョを見る。
「ほら、早くしろよ!」
真っ赤になったミニョは、頬を手のひらで包み込んだまま爪先を交互に重ねて、もじもじしている。
ふっと緩やかに笑ったテギョンが、首に掛けていたタオルを引き抜いた。
「さぁ、奥様!おみ足を」
わざとらしい弾んだ声を出して手を差し出した。
「ファン・テギョンssi~」
困り果てているミニョは、泣き出しそうな声を出す。
「何だよ!お前が言ったんだろ!」
「何言ったのー!?」
ワクワクと期待した声を出したリンがテギョンを見ている。
「皇帝を跪かせるってどんな感じ!?って言いやがったんだ」
「だーかーらー!違いますって!!」
「俺に跪いて欲しかったんだろ!?」
「違いますっ!!」
剥きになって否定するミニョの頬は、膨れ、赤く染まったふくらみがあどけなさを強調している。
そんな顔にリンとテギョンと同じように惚けた顔をしてミニョを見つめた。
「オンマ可愛いのー!!」
一瞬早く感想を漏らしたリンにテギョンは、恥ずかしくなったのか慌てた顔でそうだなと横を向いて咳払いをした。
「ど、どっちにしてもそのままじゃ戻れないだろ!?」
気を取り直しサンダルを持ち上げたテギョンは、ミニョの濡れた素足に付いた砂を指摘した。
「ほら、寄越せ」
ミニョの足を強引に掴んで砂を払い、その下にサンダルを置いた。
反対側も同じように膝に乗せて砂を払っている。
編み上げのリボンをキュッキュッと結び、膝の砂を払いながら立ち上がった。
「どんな気分だった!?」
意地悪い顔がミニョを見る。
「・・・わかりません・・・」
俯くミニョは、胸に手を当てている。
昨夜、コンサートが終った後の打ち上げで、テギョンの皇帝と呼ばれる所以を語り合っていたA.N.Jellは、皇帝のプライドの話をしていた。
果たして皇帝は跪くのかとジェルミが言うとミナムが絶対無理だと言った。
その横でシヌが冷静な表情でミニョにならどうだとテギョンに聞き、解らないなと答えたテギョンにミニョは両手指を絡ませてどんな感じでしょうねと言った。
「解らないんじゃなくて、お前にならいつでもしてやるが正しいよな!」
「そんなこと・・・」
恥ずかしそうに俯き続けているミニョは、緩む頬を持ち上げるように手を添えている。
ミニョの肩を抱き寄せたテギョンは、それにと言った。
「俺と一緒にここを歩きたかったんだろ!?」
だから、見惚れていたんだろとミニョの顔を覗き込んでいる。
「・・・そうです・・・起きてきてくれると思わなくて・・・」
「ふっ、お前のリクエストならいつでも聞いてやる!」
そう言ったテギョンは、空いた手をリンに差し出し、にっこりと笑ってその手を取ったリンを片手で抱き上げた。
「お前には初めての海だからな!やっぱり3人で思い出を作るほうが良いだろ!」
テギョンの首に腕を廻したリンとその顔を見ていたミニョは、共に頷き早朝の砂浜を親子三人楽しそうに歩いていたのだった。
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Favorite music excerpt 再生リストからchoiceコントロールから音量変更可 不可はページ再読込❦一部字幕ON&設定で日本語約可
loveYou're Beautiful❦Story it was based Korean drama "You're Beautiful" secondary creation.❧
Hope to see someday"You're Beautiful" of After that.
Aliasすずらん──長い長い「物語」を続けております。貴方の癒しになれる一作品でもある事を願って。イジられキャラテギョンssi多(笑)
交差点second掲載中❦フォローしてね(^▽^)
コメディ・ほのぼの路線を突っ走っています(*^▽^*)あまりシリアスは無いので、そちらがお好きな方は、『悪女』シリーズ等を気に入って頂けると嬉し。
『テギョンとミニョの子供・・・』という処からお話を始めオリキャラ満載でお届けしておりましたが、登場人物も交差し始め統一中。
長らくお付き合いいただいている方も初めましてな方もお好きな記事・作品等教えて頂けると嬉し(^v^)
ご意見ご要望はこちら★すずらん★メッセージを送ってください。BM仕様限定のごくごく一部解除しました。
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