小さい頭がみっつ、くっつきあって固まりあっている。
「失敗だと思わないかっ!?」
「なぁーにーがー」
「何ってさぁ・・・」
「ああ、ジュノは、怖いんですもんね」
「なんでー」
きょとんと肩にくっつく頭で笑ったリンは、ユソンを見上げていた。
「ああいうのっサギクン(詐欺師)って言うんじゃないか!?」
「さーぎー!?」
「サギは、言いすぎです。知らなかっただけでしょう」
「あの顔に騙される」
「顔だけならソンセンニムも負けてないですよね」
「えええええー、違うぅぞーソンセンニムは、もっと、こう、鬼だよっ!わっかりやすい」
「あっちは、天使の顔した悪魔ですか・・・」
リンを見るジュンシンをユソンも頷いて見ている。
「なーにー!?」
「こいつも鬼だよな」
「ええ、本当に良く似てます・・・」
年長者ふたりで年下のリンを囲ってキーボードとギターを鳴らしていた。
★★★★★☆☆☆★★★★★
「ヒョン!次、どうすんの!?」
「ああ、『らすとラヴ』を演る」
スタッフと話し込んで戻って来たミナムの後ろから事務所の練習生達が、ステージをわらわら歩き、ダンサーの取り纏め役と話をしていたシヌが振り返っていた。
「あっ、そう・・・じゃぁさ、俺ちょっと抜けて良い!?」
「ん、ああ、構わないが、どこか行くのか!?」
「うん!ヘイと昼飯食ってくる!ケータリングだと文句言うだろうし」
「あ、ああ、そうか、皆と一緒よりせっかくお前もいるんだしな」
「そういうんじゃぁないよー」
笑ったミナムは、手を上げてステージを下りて行き、戻って来たジェルミが、見送っている。
「どこに行くって!?」
「さぁな、これが終われば、午前中のプロムも終わりだからテギョンも夕方には戻ってくるだろう」
「えっ!?何それ、ヒョン帰って来なくて良いって言ったじゃん」
「ああ、言ってみただけだ」
不敵な笑みを頬に刻んで後ろを向くシヌを追い抜いたジェルミは、ドラムセットの前でしゃがみ込んでしまった。
「そんなに心配なのー!?」
「パボッ!お前じゃない!あれだよ、あれ」
ステージから子供達を指差すシヌは、楽しそうに笑ってじゃれる様子を見つめている。
「テギョンと良く似てるからな!始まってしまえば、ビシッと決めるだろうけど、今は、ミニョみたいだろう」
ジェルミも立ち上がって下を見たが、ぽやーんとユソンとジュンシンを見ているリンが、ニヤリと笑っている顔を見て、首を振った。
「なーんにも考えてなくて考えてる時のミナムみたいだ・・・」
「だと良いけどな」
ギターを持ち上げるシヌにダンサー達がわらわら中央に集まり、ヘッドセットを付けながら中央に立ったシヌは、ジェルミに合図を送っている。
「テギョンヒョンの踊りまんまじゃん・・・」
ステッィクを打ち合わせながら、踊リ始めたリンを見ていた。
★★★★★☆☆☆★★★★★
「ユンギssi!」
「ああ、コ・ミナムssi・・・お世話様でした」
演奏を聞き乍ら、楽屋口に戻って来たミナムは、鉢合わせたユンギに差し出された手を握った。
「失礼な事っ聞かなかったですか!?」
立ち止まって、ぽりぽり顔を掻くミナムは、上目がちに見上げている。
「ええ、大丈夫ですよ!こちらも答えられない事は、無視しましたから・・・それに彼女もお仕事でしょう・・・あれこれ聞けと言われていたでしょうに・・・返って気を使わせたかも・・・」
「あは、そこは大丈夫です!ほら、あいつ嘘つき妖精なんで!でも、そっか、それなら良かった」
ヘイとのインタビューが終わったユンギは、ステージを観ながらジャケットを脱ぎ、ポケットを探って片手のギターにピックを挟み、ミナムを見下ろした。
「何か心配でも!?」
まだ見上げているミナムの視線に不思議な顔をしつつふたつめを取り出して口に咥えている。
「え、ああー、これって多分極秘情報なんですけど・・・」
「ふぁんですか!?」
ニヤリと頬をあげたミナムにユンギの目が見開かれて、すぐ眉間が寄った。
「デート!!してたでしょう!?多分本命と」
「はぁ、ん!?」
何度も瞬かれる目にミナムは、更に頬を歪め、唇を一撫でしている。
「本命っていうかなぁ・・・あの人じゃぁ、政略結婚なのかなぁ!?そう簡単に結婚する様な女には見えなかったんだけどなぁ・・・」
「誰の事ですか!?」
ピックを口から外したユンギの喉が鳴った。
「恍けるんですかぁ!?」
鳴らした喉に胸に手を当てるユンギは、もう一度溜飲して顔を逸らし、ミナムに向き直っている。
「さて、俺の恋は、終わったばかりなので次なんてそうそう見つかるものじゃないですよ」
「学生時代から知ってるでしょう!?」
「はっ!?」
ヒクリと溜飲を戻されたユンギは、苦しそうに胸を抑え、ニヤニヤしているミナムを見た。
「後輩でしょう!?短い期間だったらしいけど」
「なっ、なんでっ!?」
「彼女の片思いだって聞いてましたけど・・・そっかぁ・・・結婚するのかぁ」
顎を撫でたミナムは、歩き出し、ゆっくり振り返ったユンギは、更に手を伸ばした。
「コ、コ・ミナムssiっ!」
「決まったら俺も招待してくださいよー」
後ろ手を振るミナムは笑いながらヘイの元に向かっている。
「どっ、どちら側に座る気ですかー」
ミナムが知っている事に激しく動揺しながら、背中を見送っていたユンギだった。
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