「あーうー・・・むっむぅううぅ」
「ふ、お前が俺に勝とうなんて無理に決まっっ！あっ、っちっ様」
近づけた顔をペチンと叩かれてきゃっきゃっと笑うリンをギロンと睨みつけたテギョンは、叩かれた頬を撫で、舌打ちをして腕を伸ばしていた。
「ふ、間抜けな顔だ！誰に似たんだお前・・・」
リンを膝に抱えて小さく柔らかい頬を片手で潰し、それにぶすくれながらももっとと要求するリンは、手を離したテギョンの肩越しに立ち上がって腕を伸ばしている。
「あーんま」
「ほっ、よっ、っとっと・・・」
大きな洗濯籠を抱えてよたよた歩いていたミニョは、リンの声ににっかり笑って首を傾げ、籠を床に置くと汗を拭った。
「ふー、なーんかお洗濯物も増えた気がしますねー」
テギョンの背中に向かって片目を閉じるミニョは、尖らせた唇で横を見たリンに手を伸ばしている。
「リン！アッパに遊んでもらえて良いですねー」
「あー、ぶふー、きゃっふ、きゃっきゃー」
「ふふ、でもアッパにペチンはダメですよー」
まだ頬を叩いているリンの手を握ったミニョは、振り返ろうとして倒れたテギョンに顔色を変えた。
「なっ・・・何です・・・オッパ・・・」
さわさわミニョの足に触れるテギョンは、お腹に転げたリンを支えながらニヤリと笑っている。
「いや、こいつがな・・・」
「あっばー・・・っぶっぶー」
テギョンのお腹を跨いだリンは、手足をばたつかせて泳ぐ真似をした。
「プール・・・です・・・か！？」
リンを見たミニョは、庭を見つめて聞いている。
「ああ、昨夜風呂に入れてる時にな」
「ビニールプールでしたらすぐに用意しますけど・・・」
「いや、ほら、先週、皆でホテルに行っただろう」
「え、ええ、大きいプールは初めてでしたし、喜んでましたよね」
お腹の上をもぞもぞ動いているリンを見つめたまま首を傾げるミニョは、テギョンの手元を見た。
「お前とミナムを間違えてたんだよな、こいつ」
「へっ！？」
「ミナムの奴、面白がってワンピースの水着を着て来ただろう」
「えっ！？ああ、そういえば・・・水の中で解るのかなぁとか言ってましたね」
「ふ、それで、あっさり間違えた訳だが・・・」
起きあがったテギョンは、リンの頭を胸に押し当てている。
「ふ、俺とお前の邪魔をしようと思ったらしいんだが、ミナムをお前と思っていたからな」
「は、あ・・・」
テギョンに抱かれるリンを見つめるミニョは、頬に手を当てた。
「ぁぶー、っぶっー」
「オッパ・・・それってリンが苦しいんじゃ・・・」
テギョンの手の平にすっぽり収まる頭を見るミニョは、増々首を傾げている。
「ふ、昨夜から俺のここが気になって仕方がないんだよな！お前！」
「あっぷー！ばっ！あ」
ガバッとテギョンの胸元を開くリンにミニョは自分の服を引っ張って胸を見た。
「オッパの胸！？」
「ふ、こればっかりはなお前・・・」
不思議な顔をしたミニョは、しゃがみ込み、リンを背中から抱き上げている。
「オッパの胸に何かあるのですかぁ！？」
まじまじとリンが引っ張っているテギョンのシャツの中を覗き込んだ。
「あっぱーめっ」
「あれ！？今、アッパって言いましたぁ！？」
「ふ、何を言っているかはまだ良く判らないけどな、ほら！」
「あ、キ・・・えっ！？あ！？あれ！？そ、わ、わ、たし・・・ですか！？」
「お前以外に誰がいるんだよ」
「えっ、嘘っ・・・そんなつもりっ・・・」
胸元の赤いマークに真っ赤になって俯くミニョは、振り返ったリンに頬を叩かれている。
「うー・・・」
「えっ！？あ、リン・・・何を・・・」
「あー、まもめっ」
「えっ！？えっ！？何！？なんですかぁ」
むっと唇尖らせ、明らかに恨めしそうな目をしたリンにきょとんとしたミニョは、笑い始めて腕を伸ばしたテギョンにリンを渡して座り込んだ。
「ふ、風呂に入れてる時にこれを見つけて、俺に吸い付いてきやがった」
「えっ！？」
「そうしたら当然もっと赤くなるからな！それで思い出したのさ！プールでお前とふざけていた時につけたんだって」
「えっ！？あっ、ああ椅子にぶつかった時！」
「ああ、お前に押し倒された時だ！」
「あれはぁ不可抗力です」
「濡れてるから気を付けろと言った俺の忠告を聞かなかっただろうが！」
「うっ、だって、転ぶと思わなかったんですもの・・・」
「こいつがいたから周りにクッション敷いてて助かったんだぞ！」
「うっ・・・それについては反省してます・・・」
「ったく、事故多発地帯だから危なくってプールもひとりじゃ行かせられない」
「リンが居たら気を付けますよぉ・・・でもぉひとりだったし・・・」
「ミナムがリンを見ていてくれたからな！お蔭で俺は、プール事故にまた巻き込まれた」
「そっ！うっ、それとリンと何の関係が・・・」
ぶすくれていたリンの腕を万歳させたり、手を叩いたりして遊んでいるテギョンは、ぶすくれたミニョにニヤリと笑っている。
「今朝なお前が起きる前の事だ！」
リンを抱いたテギョンは、そのままミニョに近づくと突き出された唇に軽いキスを落とし、驚いたミニョと声を出そうとしたリンの口を抑えてその耳元で事情を話し始めたのだった。
「ベッドにちょっと乗せといたら、お前の所に這って行くから何をするのか観察してたんだ・・・そうしたら・・・」
テギョンの胸元に吸い付いたリンは、眠っているミニョの胸元にも吸い付き、赤い痕が付かないのを不満に思ったのかテギョンを振り返ったので、テギョンがミニョに痕を付け、ミニョが目覚めるまでの数十分ふたりで過ごしていたというとある日の朝の出来事だった。
