瞼が小さく動いて、寝返りを打とうとした体は、身じろぎを繰り返し、掛け布団を揺らして天を向いた顔は眉間に深い皺を寄せた。
「あーあーあーーー、もう!何だっ!」
ガバッと大きく布団を剝ぎ取ったテギョンは、大の字に覆い被さった小さな頭に触れている。
「おはようアッパぁ!気持ちよかったぁ!?」
剥がれた布団から顔を出したニンマリ笑顔のリンは、テギョンの胸に顔を埋めてクスクス笑った。
「わっ、ばっ、よ、止せっ、く、くすぐったっ・・・」
「うーん・・・ミーニョーもっとー」
甘えた声で、肌蹴た胸に両腕を回してキスをしたリンに頬を引き攣らせたテギョンは額に手を当て固まっている。
「もっと、こっちに来いよー・・・・・・って、言った」
またまたニンマリした顔でテギョンを見たリンは、首を傾けた。
「ばっ、だっ、誰が、そ、そんな・・・」
「オンマがしょうがないですねーって赤くなってたよぉ」
「おっ、俺が、いっそんな・・・」
慌てた顔は、頬を引き攣らせ、緩め、挙動が不審なテギョンにリンがクスクス笑っている。
「そんな事言ったもんねー、いっつもカッコつけてるアッパじゃないもんねー」
べったりテギョンの体に張り付いているリンの両脇に腕が差し込まれた。
「おっ、大人を揶うなっ」
ムニッムニッと尖った唇を動かしたテギョンは、上半身を起こしてリンを腹に乗せている。
「よく寝たのー!?」
「あ、ああ、よ、く寝、たな・・・・・・お前が居ないから!ぐっすりだ」
悪戯な顔を見下ろして尖った唇で額を小突いたテギョンにリンの唇も突き出た。
「僕がいてもぐっすり寝てるもーん!僕が居たほうが良いでしょう」
にっこり笑顔が小さく首を傾げ、真顔のテギョンは、瞳を一周回して破顔した。
「ふ、当り前な事を聞くな・・・・・・何時だ!?」
振り向いてサイドテーブルの時計に腕を伸ばしたテギョンは、もそもそとベッドを動くリンの腰を捕まえて床に下ろしている。
「おっ昼過ぎたよー、ハラボジがねー、遅いお昼を一緒に食べようって」
「ん、ああ・・・アボジ、ね・・・・・・ミニョは!?」
「ハラボジとお話してるー」
テギョンも脚を下ろし、前に立つリンは、両手を挙げた。
「・・・お前はメッセンジャーか」
「うん!オンマにお願いされたー」
「チッ!コ・ミニョ・・・」
縁に座ったままベッドを振り返ったテギョンは、シーツを一撫でし、小さな笑みを零している。
「あのねー、オンマがアッパに渡してねって」
「あ!?何・・・を!?」
後ろを向いたままのテギョンの膝に両手を置いたリンは、テギョンが向き直るのと同時にその頬にキスをした。
「サランヘって」
「あ!?」
「良く解んないけど、サランヘってキスしてくれたぁ!」
丸い目で頬を抑えたテギョンに両手を挙げたリンは、扉に駆け寄り、驚いているテギョンに手を振っている。
「え、あ、おいっ・・・」
扉を重そうに開け、閉まる間際にミニョが笑顔で前を通り、リンは、そのお腹にくっついている。
「オンマー、アッパも起きたよー」
「はは、ありがとうございます!リンも食べますか」
まあるい開封された缶を持ったミニョは、リンの顔の前に差し出した。
「クッキー!!食べるー」
「でも、少しですよ!ご飯を食べに行きますから」
「はーい」
ミニョから缶を受け取ったリンは、ギョンセの座るテーブル前に置いてソファに上っている。
「それで、アボニム、どうされるのですか!?」
「ああ、そうだね・・・時間が合えば、私は、出ようと思ってる・・・けど、テギョンがね」
会話の続きといった風情のミニョも腰を下ろし、リンに渡されたクッキーをひとつ頬張った。
「コンサートへの出演なら、むしろ、お願いしますよ」
「はぇっ!?」
美味しいと動いた口が、妙に膨らんで窄まり、振り返ったミニョは、テギョンに睨まれている。
「ほー、お前らしくないな、反対すると思ってた」
「反対は、しましたよ・・・けどね、社長に逆らえなかったんです」
両手で口を覆い隠したミニョは、リンが持ち上げたコップを受け取り、一気に飲み干した。
「はは、それだけか!?」
ローブに片袖を通して歩いているテギョンは、もう片方の腕も通してミニョの座る背もたれに腰を凭れさせている。
「ソンベもです!それにこいつ等と演奏をしたいんでしょう」
トトトトとリンが、テギョンの前に立ち、挙げた手からクッキーを口で受け取ったテギョンは、リンの頭を撫でて抱き上げた。
「ふ、そうだな・・・」
リンに目線を移し、ギョンセは、笑っている。
「こいつに寄越した譜面・・・あれは、オモニとの思い出だと思っていたんです・・・」
「ああ、あれは、イ・ソンジンとの思い出だ・・・ユンギの父親」
ふっと優しく目元を緩め微笑んだギョンセは遠くを見つめた。
「ソンベが、何かを考えているのは、知っていました・・・渡された時も嬉しそうな顔をしていましたから・・・でも、アボジの筋書ですよね」
「ん!?何の事だね!?」
ニヤリと片頬を上げるギョンセは、テギョンそっくりな顔で、ミニョが、ぽやんと見惚れている。
「ソンベに口説かれたでしょう!三人で出来る機会はないぞとか何とか・・・」
ミニョと視線の合ったギョンセは、もう片方も口角を上げて微笑み、リンを見ているテギョンは、上目遣いの視線に口を両手で塞いだ顔を見て眉間を寄せた。
「まぁな・・・どうしたってもう、三人で出来る事は無いんだが・・・」
ギョンセの視線は、真っ直ぐリンを見つめている。
「その子たちを見ていると思い出す事もあるからな・・・懐かしいな・・・」
しっとり話すギョンセにリンと顔を見合わせたテギョンは、リンの動いた視線の先に目を細め、小さな舌打ちをした。
「老い先短い方達の頼みですから断りませんよ!」
「ん!?お前、それは、失礼だな!私は、リンが結婚するまでは頑張るつもりだよ」
指を組んだミニョは、ギョンセに大きく頷いていて、拳にした腕を突き上げている。
「は!?辞めてください!結婚なんて何年先の話ですか」
「解らないね・・・そもそもお前が結婚できると思っていなかったからね」
また頷いたミニョは、頭に大きな掌を乗せられて背中を上下させた。
「ぁん!?息子に対してなんてことを言うんです!」
「息子だからね・・・」
ミニョの頭を抑えるテギョンの手をリンが掴み、テギョンの腕からソファに伝い降りている。
「わたしの息子は、気難しくてねー、女性にはモテるけど、女性を愛せるのかとずっと思っていたからねー」
降りてきたリンを受け止めたミニョは、振り返った顔でテギョンと目を合わせた。
「アボジより深い愛を持ってます」
「オッパ!!!!」
不貞腐れた表情のテギョンに、にへらと笑いかけたミニョの表情が引き締まり、大きな目を見開いている。
「うっ、胸っ・・・」
「ハラボジー!!!」
左胸を抑えたギョンセが、前屈みになるとリンが大きな声を出して腕を伸ばし、ミニョが慌てて振り向いた。
「ふ、演技も俺の方が上です」
素知らぬ顔のテギョンは、溜息を吐いて立ちあがった。
「ふ、は、ははは、そうだね・・・前は、こんな冗談にも付き合ってくれなかったね」
「アボジが冗談をお好きな事も知りませんでした」
首を振ったテギョンは、笑いながらリンを抱き上げたギョンセに舌打ちをし、安堵の表情を浮かべたミニョも息を吐いている。
「そうか!?小さい頃は一緒に・・・」
「やってません!!!」
バスルームに向かったテギョンは、扉を半分開けながら、ものすごい勢いで振り返った。
「そうだったかね・・・」
「アボニム!そのお話!聞きたいです!」
ミニョが嬉々とした表情で、テギョンを見ているギョンセに身を乗り出し、ギョンセの腕から降りたリンは、テギョンの元に駆け寄っている。
「ミニョに余計な事を教えないでくださいっ!」
「ああ、解ってるよ!早く支度をしておいで」
「約束ですよ!!」
尖らせた唇で、ギョンセを睨みつけ、リンの手を引いたテギョンは、バスルームの扉を閉め、薄く閉まりきる隙間からミニョを手招いてソファの隣に座らせているギョンセに深い深い溜息を吐き出した午後のひと時だった。
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アリツア発表よりテンション上がった!!チョアチョア( *´艸`)
ほしいー!!!!!!!!!!
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