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「ふふ、それで、テギョンssiは、ミニョssiを迎えに行ったの」
ユナの膝に座ってご機嫌なリンは、ラジオを録音したポータブルプレイヤーのスイッチを切り、シヌが伸ばした腕に収まっていた。
「そうだよー!だって、僕が、一番だもん」
ニィィと笑って指を一本立てたリンにシヌが薄く笑みを返し、リンの整えられた髪に触れている。
「ミニョらしいというか・・・テギョンが、怒っているだろうな」
短く刈り上げた髪の襟足に触れられたリンが、シヌを睨み、首に触れて不満な表情を浮かべて擦った。
「ミナムが、テギョンを困らせたいのはともかく・・・ジェルミもとはね・・・」
「どちらかしら!?到着したみたいだから、本人に聞いてみましょうよ」
ドアマンに開けてもらった扉の前で優雅に頭を垂れたジェルミは、あげた視線をさ迷わせ、シヌを見つけるなり破顔して早足で駆け寄っている。
「シ、シヌヒョン!テギョンヒョンとミニョは!?」
賑やかなざわめきの中に小さく声を殺したジェルミにシヌも笑って、口を動かしたが、更に大きな声が重なった。
「ジェルミー!ありがとー!」
声をかき消されリンの鼻を摘んだシヌは、ジェルミに向き直って小さな舌を出して両手を挙げた姿に苦笑を漏らし、間抜けな顔でリンを見たジェルミは、両頬に手を当てている。
「今日は、僕がオンマの一番だもん!アッパに勝ったんだよー!」
「ふ、そういうことらしい」
「ふ、ぇ!?あ、え、え、あ、あーーー!もしかしてっ・・・リンが聞いてたっ」
「そうだよー!録音してたー」
「あ、あーあ、だ、からかぁ・・・ヒョンめっちゃ怖い顔で、ブースを睨むんだもん!俺、絶対、締められると思ったよー」
交差させた掌を首にあてて顔を歪めて見せるジェルミに皆が大きな笑い声を零した。
「お前の質問もどうかと思ったけどな」
「あれはさー、ミナムが台本を残していったんだよー、会見の時は普通の質疑応答で、面白くなかったから、何か面白いことを聞こうって!でもさぁ、妻とは思わなかった」
困り顔で情けない声を出したジェルミは、薄ら笑いのシヌに片目を閉じて見せた。
「ミニョssiが、テギョンssiを信頼してるから出る答えよね」
「そっ、んーもう!ヒョンはどこに行ったのさー、俺、会うの怖いんだけど・・・」
きょろきょろ辺りを見回したジェルミは、寒そうに身体を擦り、やがて傾けた首で座っているユナを見下ろして、振られた手にきょとんとしている。
「今頃ミニョが、機嫌を直しているさ」
「それ、ミニョが怒られてるってことじゃん」
シヌとユナを交互に見比べたジェルミは、また頬に両手を当てくるんと背中を向けた。
「記者ならいないぞ・・・誰のパーティだと思ってる・・・あいつも心得てるさ」
「あ、そっか・・・けど・・・良いの!?」
クスリと笑ったシヌに思惑を読まれたジェルミは、大きく頷いて振り返っている。
「良いも悪いも周りを良く見ろ・・・知り合いが多くて、友達だと紹介しても、一笑しそうな奴らばかりだ」
「それはヒョンの悪事が有名だからでしょー」
リンを床に降ろして、会場を見渡しているジェルミを下から見上げたシヌは、肩にかけているカバンから携帯を取り出したリンの手元を覗き込んだ。
「アッパは、お部屋に居るからもう来るってー」
「テギョンの携帯か!?」
「うん!今日はここに泊まるんだよー」
「あいつ、携帯持ってないの!?」
背後から膝を曲げて覗き込んだユンギの低い声に肩を震わせたシヌは、ゆっくり振り返っている。
「あ、ユンギヒョン!お話終わったのー!?」
「終わったというか・・・終われないというか・・・」
頬がくっつきそうなユンギにわずかに表情を変えたシヌは、肩を払いながら立ち上がった。
「主役が、雲隠れは、出来ないよな」
「まぁね、それなりに挨拶もしたから、そろそろ解放してほしいけど、ソンベが来ないからなぁ」
「ヒジュンソンベですか!?」
棘のあるシヌの声音に笑ったユンギは、ジェルミを見ている。
「そう!ソンベのプレゼントが、好いものなんだ!それがあると話題は俺から逸れる」
「プレゼントの中身を知っているのか!?」
「ああ、サプライズな物はいらないって言ったら中身を教えてくれた!でも、サプライズさ!」
「サプライズじゃないのにサプライズ!?」
「うん!皆にもね!きっとサプライズだよ!楽しみにしててよ」
「なーユンギ!もー食っても良いかぁー」
立ち話をしている大人の間に割り込んだジュンシンが、ユンギのスラックスを掴んで見上げた。
「あ、ああ、良いよ!ミアネ、食事を待つ必要はないんだけど、こいつ、好き勝手に走り回って邪魔だから、暫く端にいろと言ったんだ」
不満そうな顔のジュンシンの頭をぐりぐり撫でたユンギは、まだソファに座っているユソンに手招いている。
「ユソンもソンベが、来るのを待ってる事はないから、おいで」
振り返ったリンがユソンに手を伸ばし、ジュンシンもリンに腕を伸ばして、子供たちは一目散に食事の置いてあるテーブルに向かっていった。
「俺も腹減った・・・」
ジェルミが、お腹を押さえて、笑ったユンギとテーブルに向かい、シヌはユナの隣に座っている。
「俺達も行く!?」
「ええ、知らんぷりは、できそうもないわね・・・」
「覚悟は出来てる!?」
ローテーブルに置かれたグラスを空にしたシヌは、通りかかったウェイターに新しいグラスを二つ貰い、一つをユナに渡した。
「覚悟!?」
「俺とそういう関係だってバレる覚悟」
「発表しても良いわよ・・・事務所にも聞かれたし・・・」
顔を覗き込み鼻がぶつかる程近づいたシヌにユナは涼しい顔で胸を押している。
「えっ!?」
「社長に挨拶に来てくれたでしょう」
「ん・・・あ、ああ・・・」
立ち上がったユナに腕を引かれたシヌは、ネクタイに軽く手をかけたユナに肘を持ち上げられ、歪みを直して、腕を組み歩き出した。
「社長はね、むしろ喜んでくれたわ!結婚しても良いって言われたけど・・・それはまだね」
「したくないの!?」
「したいの!?」
すれ違う友人に軽い会釈と挨拶を交わすふたりは、小声で話を続けている。
「ふふ、もう少しだけ自分を高めてからでも良いでしょう!丁度、良い役を貰えそうなのよ」
「俺は、いつでも待ってるよ」
「私も待っているわ」
「お互いに待っていたら、いつまでも平行線じゃないか」
「交わらない線ね・・・でも、だから面白いじゃない!交わる時は、曲げる時よ!今はまだ・・・曲げたくないわ」
ビュッフェテーブルの前でシヌに渡されたお皿にサラダを乗せたユナは、肉ばかりを乗せているシヌを軽く睨み、スティック状の野菜の入ったグラスを持ち上げて見せ笑った。
「まぁ、良いよ・・・ヌナの方が待ってた時間は長いんだし・・・」
「嫌な子ね・・・」
「また、年下扱いしたね」
「年下でしょう!」
「はいはい、ヌナが正しいです」
ユナの持ち上げたグラスを受け取り、野菜ばかり取っているユナの皿に肉と魚を乗せたシヌは、見開いた目で抗議をしているユナを笑いながら、子供たちがいるテーブルに向かったのだった。
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